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Blue Moon

「ブルームーン Blue Moon」は1934年にリチャード・ロジャース Richard Rodgers とロレンツ・ハート Lorenz Hart によって書かれたポピュラー・ソング。ジャズだけではなくR&B、ポップスやロックンロールでも歌われるアメリカ大衆音楽のスタンダード。

たくさん書き直した末にできた曲

この曲はいまのかたちになるまで3回歌詞が書き直されている (Furia & Lasser 2006)。

最初は、もともとは「プレイヤー Prayer」というタイトルでMGM映画『ハリウッド・パーティー Hollywood Party』で使用されるはずだったが、スタジオはこの曲を却下にした。このときの歌詞は「ああ、神様!もしお忙しくなければ、私は助けを求めます。」といったもの。

2回目はMGM映画『マンハッタン・メロドラマ/男の世界 Manhattan Melodrama』の主題歌として歌詞を書き直したもの。「君はコーヒーを飲み干し、走り出す。 息をするな、それは許されない」といった歌詞だった。が、公開前にこの曲はお蔵入りになった。タイトルは「ただそんな感じの遊び It's Just That Kind of Play」だった。

3回目は、また同じ『マンハッタン・メロドラマ』用に書かれたもの。ロジャーズ=ハートは曲を気に入っていたため、今度は「どんな男にも悪はある The Bad in Every Man」というタイトルで同じ曲を提出した。するとMGMスタジオはオッケーを出し曲は映画で使用された。が、映画はヒットしても曲が注目を集めることはなかった。

4回目。さて、せっかくいい曲を書いて映画で使用されたのにまったくヒットしなかったのでロジャースは失望し、ティン・パン・アレイの出版社に自分の曲を持って行った。出版社は、ラリー・ハートがシンプルで地に足のついた歌詞を書けばヒットすると告げる。するとハートは気分を害し「月とか 6月 とか、そんなくだらないことを言うのか?」と怒るが、彼は座って4つ目の歌詞を書いた。こうしてできたのがこの「ブルームーン」というわけである。

録音

Art Tatum (NYC April 22, 1954)
Art Tatum (Piano)
50年代のアート・テイタムのソロ・ピアノ。1:34あたりとかすごい。

The Marcels (NYC, 1961)
Cornelius 'Nini' Harp (Lead Tenor); Ronald 'Bingo' Mundy (First Tenor); Gene Bricker (Second Tenor); Richard Knauss (Baritone); Fred Johnson (Bass); Stu Phillips (Produced); 
マーセルズの大ヒット録音。ドゥーワップの金字塔の一つ。レコーディングに参加したミュージシャンが誰なのかはわからないが、ドラムはハル・ブレインかもしれないと言われている。が、ニューヨーク録音なので、さしあたりハル・ブレインの可能性は低いだろう。

Tuts Washington (New Orleans, March 1983)
Tuts Washington (Piano)
1907年生まれのニューオーリンズのピアニスト、タッツ・ワシントンの録音。おそらくこれが唯一のアルバム。

Stephane Grappelli (NY October 9 1995)
Stéphane Grappelli (Violin); Bucky Pizzarelli (Guitar); Jon Burr (Bass)
グラッペリとピザレリズの録音。美しいイントロはグラッペリが考えたものでほかの録音でもこのイントロが使用されている。

桑田佳祐 (夷撫悶汰) (横浜 1996年12月1日)
桑田佳祐 (Vocals); 山本拓夫 (Tenor Saxophone); 小倉博和 (Guitar); 樋沢達彦 (Bass); 島健 (Piano); 村上ポンタ秀一 (Drums)
AAAの桑田佳祐のライブから。夷撫悶汰としてジャズ・スタンダードを歌う企画。こういった曲は桑田佳祐も得意としているようで、芝居も含め楽しい演奏になっている。VHSもしくはDVDのみで鑑賞することができる。

Rod Stewart (NYC, London, Hollywood 2004)
Rod Stewart (Vocal); Bob Cranshaw (Bass); Allan Schwartzberg (Drums); Bob Mann (Guitar); Eric Clapton (Guitar); Joe Sample (Piano)
私がはじめて買ったジャズのCD。当時オーストラリアに住んでいたとき、スクール・バンドにギタリストとして所属していたしゅみお少年。日本からギターを持っていったけど、ジャズなんかまったく弾けなかった。先生に「あなたジャズを聴いて!歌が入ってるやつ!」と言われ、ブルースが大好きな勘違い野郎だったしゅみお少年はすごく落ち込んだ。ネットで調べるとなんと当時しゅみお少年が大好きだったクラプトンがロッド・スチュワートのジャズCDに参加しているとの情報を得て買ったCD。父親が聴いていたジャズと違っていい曲だなーと思いクラプトンのソロを一生懸命練習して先生にドヤ顔で聞かせたんだけど、先生が思ったのとは違ったようだ。「あなた!アンサンブルが大切って言ったのよ!どうやって伴奏するかを聴いてちょうだい!」こんな感じに言われた記憶がまだ残っている。

Baron & Jordan (Tokyo[?] 2011)
Baron (Vocal, Ukulele); Jordan Cheung (Whistle, Trumpet, Vocal); Saya (Bass)
しばしば日本語で歌われるブルー・ムーン。Baron & Jordanも歌っている。素敵な録音。それとジャケットと中のフォントもかっこいい。

参考文献

Furia, Phillip & Lasser, Michael. (2006). America’s songs: The stories behind the songs of Broadway, Hollywood, and Tin Pan Alley. London: Taylor and Francis.


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