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Ella Speed

「エラ・スピード Ella Speed」は作曲年・作詞作曲者不詳のブルース。レッド・ベリー Lead Bellyの録音が有名で、1960年代後半のジャグバンドのリヴァイヴァルにおいてしばしば録音/演奏された。

娼婦エラ・スピード

「エラ・スピード」とは当時28歳だったニューオーリンズのベイジン・ストリートで働いていた娼婦を指す (SecondHandSongs)。歌詞においては、1894年9月3日にエラ・スピードが、同じく28歳で地元の不良バーテンダーだったイタリア系白人のルイ・ブル・マーティンに殺された事件を歌っている。

調べていると結構記録が残っている (WinnieCampbell.com)。もともとマーティンはスピードの客であった。スピードは娼婦なので当然いろいろな男性と関係を持つ。スピードは娼婦ではあるが、子どもがいた。だから稼がなくてはならない。だが、マーティンはスピードがほかの男性と関係を持つことに我慢がならなくなってしまい、頻繁にスピードを脅していた。いわゆるガチ恋勢のクソ客って感じ。その結果、彼女は仕事場を変えたり、マーティンに「今日は会えない」という手紙を書いたりと対策をしていた。そんなわけでマーティンはスピードにあえなかったのわけだが、マーティンはどうにかスピードに会う約束を取り付けた。マーティンは9月2日に大酒を飲んだ夜にスピードに会いに行くそこで事件が起こった。マーティンは、前述したようなほかの客との関係に激高しスピードを射殺。その結果、懲役20年の判決を受けることになったのだった。

さて、こうした曲はアメリカ民族音楽の研究者であったジョン・ロマックスとその息子アラン・ロマックス(John and Alan Lomax)のフィールドワークによって集められた。こうしたアメリカで歌われるさまざまな民謡の収集についてはまた別項にて改めるが、少なくともこうした収集の結果としてさまざまな曲がアメリカ民族音楽あるいはアメリカ民謡として成立していった。そしてこの「エラ・スピード」もその一つにほかならない。

録音

Leadbelly (Angola, Louisiana, 1934. July 1)
Leadbelly (Guitar, Vocal)
レッドベリーの刑務所での録音。いくつか録音をしているが、この録音がもっとも迫力がある。

Jim Kweskin and His Jug Band (NYC, 1967)
Jim Kweskin (Guitar, Vocals); Maria Muldaur (Kazoo); Bill Keith (Banjo); Fritz Richmond (Washboard Bass); Geoff Muldaur (Washboard);
ジム・クウェスキンのバンドの録音。イントロからだいぶかっこいい。


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