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Autumn Leaves/Les feuilles mortes[枯葉]

「枯葉 Les feuilles mortes」は、1945年にジョセフ・コズマ(Joseph Kosma)が作曲し、ジャック・プレヴェール(Jacques Prévert)が作詞したシャンソン・ナンバー。英語の歌詞はジョニー・マーサー(Johnny Mecer)によるもの。

青々と茂っていた草木が枯れる

フランス語でも同じかわからないが、少なくとも英語の「夏 summer」という語は人生や長い物語のなかの最盛期を意味する。まさに木々の葉っぱが青々とし、暖かさが人々を活気づけるからにほかならない。たとえばシェイクスピアの『夏の夜の夢 A Midsummer Night’s Dream』は、夏至祭のできごとの話という説もあるが、少なくとも恋に浮かれた狂乱を扱っている。いずれにせよ、夏とは若さや恋の最高潮を意味する。だが同時に夏はいずれ終わってしまう。熱気が冷めてしまって、もの悲しい秋や冬がはじまる。そういった季節においては青々と茂っていた草木も枯れてしまう。だからこそ「枯葉」なのである。

この「枯葉」はそういった一つの恋が終わった悲しさを歌っているように聴こえる。実際にヴァースでは、「あの頃の人生はもっと美しかった/太陽は今日よりも暑かった En ce temps-là la vie était plus belle,/Et le soleil plus brûlant qu’aujourd’hui.」と振り返られ、そのあと「いまは枯れ葉が集められる Les feuilles mortes se ramassent à la pelle」と対比される。このとき太陽が夏を表象することで、恋人との思い出として意味される。そして、枯葉はもうそういった夏に過ごした思い出として見出すことができる。恋の終わり、あるいは人生の儚さなさが歌われている(であるならば「秋の葉 Autumn Leaves」というよりも、日本語の「枯葉」というタイトルの方がフランス語に近いのではないかと思う。なぜなら枯葉は必ずしも秋や冬などの特定の季節を指定しないからだ)。

録音

エディット・ピアフの録音を聴くとやはり抜群によい。戦後の録音というものはありえないが、そうしたものに志向した素敵な録音は結構ある。歌物もインストもどちらも素晴らしい録音が残っている。いずれにせよ私はヴァースから入るものが好き。マヌーシュ・ジャズを中心に見ていく。

Jill Barber (Toronto 2013)
Drew Jurecka (Accordion, Violin, Viola); Joe Phillips (Bass); Nathan Hiltz (Guitar); Richard Whiteman (Piano)
トロントのシンガー、ジル・バーバーの録音。透き通っていて非常に好き。もちろんヴァースからフランス語で歌っていてとってもかっこいい!とても好きなアレンジ。

Duo Gadjo And Their Hot Friends (Los Angeles[?] 2019)
Isabelle Fontaine (Vocal, Guitar); Jeff Magidson (Guitar, Vocal); Evan Price (Violin); Sam Rocha (Bass); Paul Mehling (Guitar)
西海岸のマヌーシュ・ジャズの雄Duo Gadjoの録音。ちなみに「ガジョ Gadjo」とは非ロマ民族のこと。ゆっくりのテンポのバラードというよるはスローテンポのスイングになっている。ちなみにイザベラ・フォンティーンはフランス人。ヴァースからフランス語で歌っている。エヴァン・プライスのバイオリンとポール・メーリングの演奏も非常にかっこいい。

Hot Club of Cowtown (Minneapolis October 19 & 20, 2019)
Elena James (Violin, Vocals); Whit Smith (Guitar); Jake Erwin (Bass); Zack Lazier (Trumpet)
ジャンゴスタイルのウェスタン・スイングのバンド、Hot Club of Cowtownの2019年のツアーのライブの模様。ちょっとバイオリンの音がエレキっぽい。トランペットが入って抜群にかっこいい!アメリカっぽくヴァースはカットされている。

Hot Club of Cowtown (Austin June 26 2023)
Elena James (Violin, Vocals); Whit Smith (Guitar); Zack Sapunor(Bass);
「ラリーのカントリー・ダイナー Larry's Country Diner」というテレビバングの収録から。トリオ編成。ベースは新しく入ったザック・サパナー。この人もスラップがかっこいい(ただ現在はバンドを抜けている)。この録音もだいぶ好き!

Pyrenesia (Lambertville 2019)
Daniella Fischetti (Violin); Patrick Knapp (Bass);  Tony Kovatch (Accordion); 
Alan Rigoletto (Guitar, Vocals)
ニュージャージーのクレズマー/マヌーシュ・ジャズ・バンド。ヴァースはなし。わりとさらっとしている。

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