見出し画像

He May be Your Man (but He Comes to See Me Sometimes)

「ヒー・メイ・ビー・ユア・マン・バット・ヒー・カムズ・トゥー・シー・ミー・サムタイムス He May be Your Man (but He Comes to See Me Sometimes)」は1922年にレム・ファウラー Lem Fowlerが書いたノヴェルティ・ブルース。もともとヴォードヴィルで歌われた曲でブルースに志向した録音が多いが、マウンテン・ミュージックやロカビリーでの録音もある。

略奪愛を歌った曲

この曲は、一人称で歌われ相手の恋人が自分と恋に落ちていることを歌っている。「あの人はあなたの恋人かもしれないけど、私にちょくちょく会いに来る」。ここで重要なのは「かもしれない may」と言い切っていること。おそらく相手の恋人であることは事実なのであるが、ここで「かもしれない」ということで事実であることに疑義を挟んでいる。それだけではなく「あなたといるとき、彼はいつも私のことを考えている」「あなたの男を奪うことはできる」と歌われ、さらには「あなたの男を愛してる。わたしはそんな彼を自分のものにする」と宣言され、「そんなに大胆になるつもりはないんだけど、あなたに言っておきたい」と宣戦布告される。泥沼の恋愛にあること必須だ。

録音

Edith Wilson (New York, June 9, 1922)
Edith Wilson (Vocal); Johnny Dunn (Cornet); Herb Flemming (Trombone); Garvin Bushell (Clarinet); Dan Wilson or Leroy Tibbs (Piano); John Mitchell (Banjo)
おそらくこれが初録音。かなり雄弁なエディス・ウィルソンの声と攻撃的なバンジョーが特徴の録音。めちゃくちゃかっこいい!それと「ブラックボトム」で検索すると出てくる画像で踊っているのがこのエディス・ウィルソン。この記事の画像もその写真。

Trixie Smith (New York City, 26 May 1938)
Trixie Smith (Vocal); Sidney Bechet (Clarinet, Soprano Saxophone); Charlie Shavers (Trumpet); Sammy Price (Piano); Teddy Bunn (Guitar); Richard Fullbright (Bass); O'Neil Spencer (Drums)
おそらくこの曲ではもっともよい録音かもしれない。20年代のヴォードヴィル・ソングを鉄壁のミュージシャンたちが支えたトリクシー・スミスの録音。素晴らしい。

Edith Wilson With Little Brother Montgomery & The State Street Ramblers (Chicago, IL April 16, 1975)
Edith Wilson (Vocal); Oliver Alcorn (Clarinet); Leon Scott (Trumpet); Preston Jackson (Trombone); Ikey Robinson (Guitar); Little Brother Montgomery (Piano); Ed Wilkinson (Bass); Red Saunders (Drums)
70年代に録音されたエディス・ウィルソンの録音。レイドバックしたどっしりとした録音。とくにエディス・ウィルソンのふくよかな歌声が刺激的。

The Discoveries (Derby, Released in 2017)
Donna Meszar (Bass, Vocal); Paul Willmott (Guitar); Andy Carruthers (Drums)
イギリスのダービーで結成されたロカビリーバンドのディスカヴァリーズの録音。ストレイキャッツ的な演奏。

Veronica Sbergia (Rome, November 2021, March 2022; San Paolo BG, Feburary 2023)
Veronica Sbergia (Vocal); Simone Scifoni (Piano)
イタリアのシンガー、ヴェロニカ・スベルジャの録音。ピアノをバックに歌いまくっていてこれも雄弁でかっこいい。この曲をやっているわけではないんだけどライブの映像がすごくブルージー。これも素敵。


投げ銭箱。頂いたサポートは活動費に使用させていただきます。