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Diga Diga Doo

「ディガ・ディガ・ドゥー Diga Diga Doo」は1928年位 ジミー・マクヒュー Jimmy McHugh が作曲し ドロシー・フィールズ Dorothy Fields が作詞したフォックス・トロットのポピュラーソング。

ズールー人と呪文

ニューオーリンズ/ディキシーランド・ジャズから影響を受けた曲で、1928年初演のオールブラック(出演者のすべてが黒人)のミュージカル『1928年のブラックバーズ Blackbirds of 1928』のために書かれた。アデレード・ホールが歌った。このとき、赤いスパンコールを着たズールー族風の衣装を着たダンサーを引き連れていた (Furia, 1990, p. 214)。こうした演出はパリのムーラン・ルージュの公演でも行われた。

アデレード・ホールの衣装。アニマルダンスが踊られたのでおそらく鳥のポーズ。

一人称のズールー人が歌っており、この「ディガ・ディガ・ドゥー Diga Diga Doo」という不思議な表現は、ズールー人が愛と欲望を伝える言葉として歌の中で使用されている。もうちょっとストレートな、性行為を行うための言葉という解釈も成立する。そしてこうした表現を誰かに言わなければ恋人が去ってしまう。そういった意味でディガ・ディガ・ドゥーは呪文なのだ。

重要なのはこうした表現がアメリカ人の異国人であるズールー族が使う表現であると歌われているところ。そしてこのズールー人あるいはズールーはアメリカ黒人のルーツの一つとして同一視されることだ。呪文やホールが着た衣装は、こうした非白人の特徴である。たとえば、「ディガ・ディガ・ドゥー 」とは白人以外であること、このことを際立たせている。だから、「おれは生まれつきディガ・ディガ・ドゥーなんだ I'm so very Diga Diga Doo by nature」と歌われるとき、そういったディガ・ディガ・ドゥーさ、あるいは非白人性はズールー人を指しているのと同時にアメリカ黒人にも帰属される。そうした意味で、当時のアメリカの人種感を指し示した歌であると言えるだろう。

録音

Jabbo Smith (NYC, June 3, 1961)
Jabbo Smith (Trumpet); Frank Chace (Clarinet); Marty Grosz (Guitar); John Dengler or White Mitchell [?] (Bass)
ジャボ・スミスの録音。マーティ・グロスがコードを示しながら演奏をしているジャムっぽい録音。

Cynthia Sayer (NYC, December 12, 1986)
Cynthia Sayer (Banjo); Milt Hinton (Bass); Dick Wellstood (Piano); Fred Stoll (Drums)
シンシア・セイヤーのとてもセッション性の高い録音。すごいパワーで圧倒的。

Marty Grosz & His Hot Puppies (Hemer, Germany, November 19, 2001)
Marty Grosz (Guitar); Randy Reinhart (Trumpet); Frank Roberscheuten (Clarinet); Nico Gastreich (Bass); Moritz Gastreich (Drums);
マーティ・グロスの録音。トランペットとドラムのヴァースからはじまる。グロスのギターが非常にかっこいい!

Hot Club of Cowtown (Austin Texas, May 10, 11, 12, 2003)
Elana James (Violin, Vocal); Jake Erwin (Bass); Whit Smith (Guitar)
HCCTの録音。高速で演奏!ベースが全編スラップで最高かっこいい!

Jonathan Stout and his Campus Five (Los Angeles, 2003)
Jonathan Stout (Guitar); Albert Alva (Tenor Saxophone); Jim Ziegler (Trumpet, Vocal); Christopher Dawson (Piano); Jim Garafalo (Bass); Josh Collazo (Drums)
ジョナサン・スウタウトのバンドの録音。ヴォーカルはジム・ジーグラーが担当している。ジャンゴ風のフレーズも飛び出す楽しい録音。

Little Fats and Swingin’ Hot Shot Party (Tokyo, 2006)
Atsushi Little Fats (Tenor Banjo and Cornet); Charlie Yokoyama (Washboard); Dr Koitti One Two Three (Violin); Red Fox Maruyama (Tenor Saxophone); Yamaguchi Beat Takashi (Guitar); Doggie Maggie Oguma (Bass);
日本が誇るパーティ・バンドのリトル・ファッツの録音。最高に上がる!こういうマイナーキーのときのコイッチさんのヴァイオリンがとくに好き。

Aaron Weinstein and John Pizzarelli (NYC, April 23-24, 2007)
Aaron Weinstein (Violin); John Pizzarelli (Guitar)
アーロン・ワインスタインとジョン・ピザレリのデュオの録音。シンプルな構成で非常にかっこいい。ピザレリの7弦ギターが非常に効いている。

Marty Grosz and Fat Babies (Chicago, September 24–25, 2013)
Marty Grosz (Guitar); Andy Schumm (Cornet); Dave Bock (Trombone); John Otto (Clarinet, Baritone Saxophone, Tenor Saxophone); Beau Sample (Bass); Alex Hall (Drums)
マーティ・グロスとファット・ベイビーズの録音。シカゴ・スタイル!アレックス・ホールのドラムがまじでかっこいい!アレンジは2001年のものと基本は同じ。

Annie and the Fur Trappers (St Louis 2016)
Annie Linders (trumpet); Nathan Rivera (banjo); Matthew Berlin (Tuba); Taylor Maslin (clarinet); Ed Goroza (trombone); Rob Rudin (drum)
アニーアンドファートラッパーズの録音。ニューオーリンズ・スタイルを踏襲したアレンジ。ブルージーでよきよき。

Gypsy Swing Revue (Denver, Colorado 2016)
Elliot Reed (lead guitar); Kristi Stice (vocals); Stephen Hill (rhythm guitar); Anthony Salvo (violin); Jean-Luc Davis (upright bass)
コロラドはデンヴァーで活動しているマヌーシュジャズ・バンドのジプシー・スウィング・レヴューの録音。女性ヴォーカルでこの曲はわりと珍しいかもしれない。スラップがかっこいい!

LeleSwing (Florianopolis 2019)
Soledad Casanova (Guitar); Fabien Ducept (Accordion); Mauro Albert (Guitar); Hernán Fridman (Bass);
ブラジルで活動しているフランス-アルゼンチン・デュオのルル・スイング。アコーディオンの重厚さが非常にかっこいい!

参考文献

Furia, Philip. (1990). The poets of Tin Pan Alley: A History of America's Great Lyricists. Oxford: Oxford University Press.


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