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Montagne Sainte-Geneviève

「モンターニュ・サント=ジュヌヴィエール Montagne Sainte-Geneviève」はジャンゴ・ラインハルト Django Reinhardtが作曲したジャズ・ワルツ。また「ジャンゴ・ワルツ Django Waltz」とも呼ばれる。

ジャンゴがダンスホールで演奏していたワルツ

ジャンゴは1922年から1928年の間にダンスホールで演奏をしていた。その頃に少なくとも4つのワルツを作曲しており、これはその一つ。ジャンゴ自身はこの曲を録音をすることがなかった。が、ジャズ・ワルツの名手でギタリストのジャン・マテロ・フェレ Jean “Matelo” Ferret がこの曲の譜面を発見し、録音したことで、マヌーシュ・ジャズのスタンダードとなる(Dregni, 2004, p. 34)。

曲のタイトルはパリにある丘「モンターニュ・サント=ジュヌヴィエール」から取られている。「モンターニュ Montagne」は山を意味するので差し当たり日本語では「聖ジュヌヴィエール丘」といった感じだろうか。レストランやバーなどがあるパリの下町通りの「ムフタール通り Rue Mouffetard」が脇道にあり、そういった通りでジャンゴも演奏していたのかと想像すると面白い。

ムフタール通り。私は行ったことがないが、いつか行ってみたい通りだ。

録音

Matelo Ferret (Paris, 1960)
Jean Matelo Ferret (Guitar); Sarane Ferré (Guitar)
記念すべき初録音。マテロの発掘がその後の録音/演奏のきっかけになった。スウィープなどテクニック面ももちろんだが、一つ一つのメロディが美しい。

The Paris Musette (Paris, 3, 5, 15 & 16, March, 1993)
Michel Macias (Accordion); Didier Roussin (Guitar); Pierre "Ti' Boum" Guignon (Drums);
ミシェル・マシアスがアコーディオンを弾き、ディディエ・ルサンがギターを弾いたミュゼットの録音。どうしてもギターが目立つ録音が多いが、こうしたアコーディオンのリードもとても素敵。

Angelo Debarre Quartet (Hereford, May 7 to 9, 2002)
Angelo Debarre (Guitar); Dave Kelbie (Guitar); Pete Kubryk-Townsend (Bass);
アンジェロ・ドュバールの録音。デイブ・ケルビーのポンプも非常にかっこよい。

Rhapsodija Trio (Milano, 17–18, April, 2003)
Gian Pietro Marazza (Accordion); Luigi Maione (Guitar); Maurizio Dehò (Violin)
イタリアで活動しているギター、アコーディオン、ヴァイオリンで構成されるミュゼット・トリオのラプソディジャ・トリオの録音。素敵!

Marcel Loeffler (Paris, April 15 & 16, 2009)
Marcel Loeffler (Accordion)
盲目のマヌーシュ・アコーディオン奏者のマルセル・ロフラの録音。とんでもない音圧と迫力。アコーディオン一つで多層的な音楽を作っている。

Sébastien Giniaux, Ducato Piotrowski & Pete Kubryk-Townsend (London, January 17, 2010)
Sébastien Giniaux (Guitar); Ducato Piotrowski (Guitar); Pete Kubryk-Townsend (Bass)
ロンドンの老舗キューカンバーでのライブ実況録音。全編にわたって美しいギターを聴くことができる。

Gustav Lundgren (Bertheleville, France, July 8–9, 2014)
Gustav Lundgren (Guitar); Martin Widlund (Guitar); Andreas Unge (Bass)
スウェーデンで活動しているグスタフ・ラングレンの録音。堅実な録音で楽しい。

Remi Harris (NOT GIVEN, Released in 2014)
Remi Harris (Guitar); Ben Salmon (Guitar); Mike Green (Bass);
イギリスのマヌーシュ・ジャズ界の雄、レミ・ハリスの録音。後半のギター・ソロなんて野心的でそれはそれは美しい。またテンポが変わるところも素敵。

The Jimmy Grant Ensemble (NOT GIVEN, Released in 2015)
Jimmy Grant (Guitar); Javi Jiménez (guitar); Hanna Mignano (violin); Jamie Mather (Bass)
ジミー・グラントのカルテットの録音。ジミー・グラントがリードを取っている。

The Black Market Trust (Apple Valley, Released in 2017)
Jeffrey Scott Radaich (Guitar); Nick Coventry (Violin); Brian Netzley (Bass); Brandon Laws (Drums); Chris Irwin (Guitar)
ジェフリー・スコット・ラダイチ率いるブラック・マーケット・トラストの録音。流石といえる堅実な演奏。

Edouard Pennes (Paris, Released in 2023)
Edouard Pennes (Bass); Romain Vuillemin (Guitar); Julien Cattiaux (Guitar); Fanou Torracinta (Guitar); Jules Dussap (1st violin); Issey Nadaud (violin); Charlotte Chahuneau (viola); Apolline Lafait (cello);
エドゥアール・ペンヌによるプロジェクトの「ジェネレーション・ジャンゴ」の録音。ストリングス・カルテットも入った美しい録音。

参考文献

Dregni, Michael. (2004). Django: The Life and Music of a Gypsy Legend. Oxford: Oxford University Press.


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