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The Best Things in Life are Free

「ベスト・シングス・イン・ライフ・アー・フリー The Best Things in Life are Free」は、1927年にバディ・デシルヴァ(Buddy DeSylva)とルー・ブラウン(Lew Brown)が作詞し、レイ・ヘンダーソン (Ray Henderson)が作曲したポピュラーソング。いわゆるデシルヴァ=ブラウン=ヘンダーソンのソングライティング・チームの作品。ミュージカルの『グッド・ニュース Good News」のために書かれた曲でジャズ・スタンダードになっている。

この曲も「フラッパー・ソング」と言える (Furia & Lasser 2006, p. 54)。劇中で労働者階級の女性コニー・レインは悪役フラッパーのベイブ・オデイたちにいじめられる。そこでフットボール選手のトミー・マーロウが彼女を元気づけるためにこの曲を歌う。歌詞を読んでみるとここで言われている”free”とは「自由」ではなく、むしろ「無料」あるいは「みんなに平等に与えられる(べき)もの」という意味。

「世の中にはたくさんお金持ちがいるけど金(ゴールド)が唯一の価値をもっている。富を得たいって思うかもしれないけど、本当に大切なものは売れないし、買えないんだ」というちょっとルサンチマンなヴァースからはじまる。「月や星はみんなのもの。そういったもっとも価値があるものはみんなに平等に与えられているんだ。春の花、コマドリのさえずり、降り注ぐ太陽とかそういったもんは、あなたのものだし、わたしのものでもある。そして愛はみんなのところにやってくる。大切なものはお金で買えないのさ」という素敵な歌詞。英語もとても簡単でメロディもかわいく歌いやすい。まさにスタンダードになるべくしてなったような曲だ。

録音

Jimmie Lunceford and His Orchestra (NYC December 23 1935)
Jimmie Lunceford (leader, director); Dan Grissom (vocalist, alto saxophone, clarinet); Earl Carruthers (alto saxophone, clarinet, baritone saxophone); LaForest Dent (alto saxophone); Willie Smith (clarinet, alto saxophone, baritone saxophone); Joe Thomas (clarinet, tenor saxophone); Sy Oliver (trumpet); Eddie Tompkins (trumpet); Paul Webster (trumpet); Russell Bowles (trombone); Elmer Crumbley (trombone); Eddie Durham (trombone); James "Jimmy" Crawford (vibraphone); Edwin Wilcox (piano); Al Norris (guitar); Jimmy Crawford (drums); Moses Allen (string bass);
ジミー・ランスフォード楽団の録音。アレンジは、エドウィン・ウィルコックス。ビッグバンド形式。リードのアレンジとブレイクのアレンジがかっこいい。アップの四分音符のリフはおそらくジェイムズ・ブラウンも真似したんじゃないかと思う。ソロではなくアンサンブルのかっこよさが際立っている。

Kay Starr (Hollywood 1947)
Kay Starr (Vocal)
クレジットには参加ミュージシャンが載っていないので誰が参加しているかわからないけど、この録音はすごくいい。ケイ・スターのブルージーの声がとにかくいい。ちなみに国内盤のタイトルは「この世でベストなものは無料!」となっている。名訳。

Cynthia Sayer (NYC 1997)
Cynthia Sayer (banjo, arrangements); Peter Ecklund (cornet); Randy Reinhart or Tom Artin (trombone); Greg Cohen (bass); Arnie Kinsella (Drums)
ニューヨークで活動しているバンジョー奏者のシンシア・セイヤーの録音。インスト。シカゴ・スタイルのメンバーが集まっている。グレッグ・コーヘンのベースがヒップでかっこいい!

Martina DaSilva and Dan Chmielinski (NYC 2020)
Martina DaSilva (Vocal); Dan Chmielinski (Bass)
ベースとボーカルだけの構成。こんなシンプルな構成なのにまったく飽きない。2人のリズム感どうなってるんだ…という録音。マルティナ・ダシルヴァはポストモダン・ジュークボックスでも活躍していて、ほかにも自分のバンドも含めさまざまなバンドで大活躍している。シミーことダン・シュミリンスキーはリンカーンセンターのバンドのメンバーにも抜擢されるほどの腕前。

Thimo Niesterok, Tijn Trommelen & Stefan Rey (Köln[?] 2022)
Thimo Niesterok (trumpet); Tijn Trommelen (guitar & vocals); Stefan Rey (bass)
ティモ・ニステロクのリーダー録音。サッチモ・スタイルの枯れたトランペットが美しい。トリオであることを活かしたメロディアスなフレーズも繰り出している。ジャズ・ミュージシャンの一家で育ったティン・トロメレンのギターはジョージ・ヴァン・エプスやマーティ・グロスのようなシカゴ・スタイルを継承している。ボーカルのスタイルは声がシナトラに似ている。それとこの録音がそのままYouTubeで視聴できるのだが、かれが演奏中にメンバーに笑いかけるところもかっこいい。

Chris Hopkins meets the Young Lions (Kempen, Released in 2024)
Thimo Niesterok (Trumpet); Tijn Trommelen (Guitar, Vocal); Caris Hermes (Bass)
クリス・ホプキンスのバンドでの演奏。ホプキンスは不参加。2022年の録音とアレンジは変わらないが、こちらの方がややドライブ感がある。ベースが変わるとここまで変わるのかという見本としても。

参考文献

Furia, Phillip & Lasser, Michael. (2006). America’s songs: The stories behind the songs of Broadway, Hollywood, and Tin Pan Alley. London: Taylor and Francis.


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