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Dark Eyes

「黒い瞳/ダークアイズ Dark Eyes/Ochi Chornye/Ojos Negros/Les Yeux Noirs」は、ロシアのロマ・ポピュラー・ソング。資料によってはロシア民謡やロマ民謡と書かれる。この曲は詩に曲が当てはめられた。まず1843年にポルタヴァ(現ウクライナ)出身ののイェウヘーン・フレビーンカによって詩が書かれる。つぎに1884年にフローリアン・ヘルマンFlorian Hermannのワルツ「オマージュ Hommage」に触発されたメロディをこの詩が当てはめられる。いくつかメロディがあるようだけどこれがもっとも有名。

ヘルマンの「オマージュ」は民謡ではなく「キャバレーで演奏される曲」とも言われる。いずれにせよ「ダークアイズ」は、ツィガーヌ音楽やロマ民謡の影響が色濃い楽曲であることは間違いない。とくにジャズにおいてはマヌーシュ・ジャズのレパートリーという印象がある。が、ジャンゴの最初の録音(1940年)の先立って、アメリカにおいてマキシン・サリヴァンがすでに録音している。現在ではトラッド・ジャズだけではなくマヌーシュ・ジャズ、モダン・ジャズでもスタンダードになっている。

録音

Georges Boulanger et son orchestre (France [?] 1936)
Georges Boulanger (Violin); Others Unknown
音が悪いんだけどロマ民族のバイオリン奏者のジョルジュ・ブーランジェの録音。緩急すご。速くなるところにぞくっとする。

Quintette du Hot Club de France (Paris December 13 1940)
Hubert Rostaing (Clarinet); Alix Combelle (Clarinet, Tenor Saxophone, Chime); Django Reinhardt (Guitar); Joseph Reinhardt (Guitar); Tony Rovira (Bass); Pierre Fouad (Drums);
ジャンゴにとってのダークアイズの初録音。グラッペリはイギリスにいた時期なのでグラッペリは不参加。

Art Tatum (NYC, May 1, 1944)
Art Tatum (Piano); Tiny Grimes (Guitar); Slam Stewart (Bass)
最高のトリオの演奏。アート・テイタムはこのトリオが一番好き。タイニー・グライムスとスラム・スチュワートがアート・テイタムのフリーダムな感じを抑制しつつ別のレベルに持っていっているように思うのですよ。タメの効いた前半もかっこいい。

Jo Privat (Paris, 3 November 1960)
Jo Privat (Accordéon); Jean Matelo Ferret (Guitar); Unknown (Violin); Jacques Montagne (Guitar); Jo Privat Jr (Guitar); René Dubois (Bass);
André Mac-Kak Reilles or René Motta (Drums)
ミュゼットの王者の一人、ジョー・プリヴァの録音。このヴァイオリンがかっこいいんだけど、当時の資料がなく誰が引いているのかはわからないらしい。すげえいい!

The Balatonia Gypsy Orchestra (Unknown 1989[?])
バラトニア・ジプシー・オーケストラの録音。これも強烈。非常にかっこいい。ツィガーヌ/ロマのヴァイオリンのかっこよさを味わえるように思う。ただしメンバーがわからなかった。

Itzhak Perlman and Oscar Peterson (Astoria April 11-13 1994)
Itzhak Perlman (Violin); Oscar Peterson (Piano); Herb Ellis (Guitar); Ray Brown (Bass); Grady Tate (Drums)
パールマンのロマ民謡。なんとも感慨深い。もう少し違う編成でも聴いてみたいとも思ったし、なんというかパールマンがやりたい「黒い瞳」とオスピーたちができる「黒い瞳」にだいぶ齟齬があるんじゃないかと思った。が、これはこれで好き。2回目のソロがとくに好き!

Evan Christopher (San Antonio, Texas, March 1998)
Evan Christopher (Clarinet); Sebastian Campesi (Violin); Howard Elk (Guitar); John Sheridan (Piano); Don Mopsick (Bass); Ed Torres (Drums)
エヴァン・クリストファーの録音。いやまじ素晴らしい。アンサンブルもソロも最高だしとんでもなく美しい。セバスチャン・キャンペシはニューヨーク生まれでサン・アントニオで活動していたヴァイオリニスト。ベニー・グッドマンやジム・カラムとも一緒に演奏していた。2017年に逝去。

Jonathan Stout and his Campus Five (LA 2004)
Jonathan Stout (Guitar); Albert Alva (Clarinet); Jim Ziegler (Trumpet); Christopher Dawson (Piano); Jim Garafalo (Bass); Josh Collazo (Drums)
ジョナサン・スタウトの録音。インスト。シカゴ・スタイルをもとにジョン・カービー・スタイルのスウィングのスモール・コンボとして展開している。ギター・ソロではジャンゴを意識している。

古舘由佳子とジプシー楽団[Yuka & Gypsy Band] (Tokyo 2006)
古舘由佳子 (Violin); 品川秀世(Clarinet); 飯田俊明(Piano); 土山如之(Cello)
美しいカルテット。古舘さんの演奏が繊細かつダイナミック。

El Violín y el Viaje Mágico de Martín (Spain 2008)
Oriol Saña (Violin); Maria Reinón (Violin); Albert Bello (Guitar); Eladio Reinón (Clarinet); Unknown (Bass)
『ヴァイオリンとマルティンの不思議な旅』というスペインの絵本のサントラ。オリオル・サニャはバルセロナで活動しているマヌーシュ・ジャズのヴァイオリニスト。マリア・レイノンもスペインのヴァイオリニストらしいんだけど詳しいことがわからない。なんならどっちがどこを弾いているのかもわからない。明らかに異なった2つのヴァイオリンの音があるのでどちらかなんだけど微妙にどっちかわからない。

Roby Lakatos Ensemble (Sydney December 2010)
Roby Lakatos (Violin); László Boni (Violin); Jeno Lisztes (Cimbalom); Laszlo Lisztes (Bass); Laszlo Balogh (Guitar); Frantisek Janoska (Piano);
ラカトシュのやばい演奏。これ生で聴きたかったなあ!言葉を失いますね。豪華で感動的。素晴らしい!ちょうど2024年11月に来日するのでさっそくチケットを購入。どんな感じのライブなのか楽しみ。

Tchavolo Schmitt (Paris 2009)
Tchavolo Schmitt (Guitar); Costel Nitescu (Violin); Samy Daussat (Rhythm Guitar); Claudius Dupont (Double Bass );
チャボロ・シュミットの実況録音。コステル・ニテスクがいきいきしている。めちゃかっこいい!ギターの音圧がすごい!

Hot Club of Cowtown (Dipping Springs, Texas July 6 2012)
Elana James (Fiddle); Whit Smith (Guitar, Vocal); Jake Erwin (Bass)
HCCTの録音。ヴァイオリン…。このアルバムのベスト・トラックなんじゃないか。素人にはどうやって演奏しているのか検討もつかない。震える録音。

Gypsy Fire (2016[?])
Hot Club Recordsのジャンゴ・フェスのコンピに入っていたライブの実況録音。どんなバンドかわからないし、同名のバンドがいくつかある。まさに燃えるような名演。

Schwings Band (Vilnius, Lithuania, 2017)
Migloko (Vocal); Remigijus Rančys (Saxophone); Richardas Banys (Piano); Robertas Vilčinskas (Drums); Gediminas Svilas (Bass)
スキュウィングス・バンドにヴォーカルのミグロコが参加した録音。サラ・ヴォーンとベッシー・スミスから大きく影響を受けたような歌声が素敵。かの女の別のアルバムではこうした歌い方だけじゃなくて実に多様な歌い方も披露している。

Titoks (Tallinn, Estonia 2018)
Kristjan Rudanovski (Violin); Jaanis Kill (Lead guitar); Ainar Toit (Rhythm guitar); Robert Nõmmann (Double bass)
エストニアのマヌーシュ・ジャズのバンド。バイオリンがかっこよすぎ!ソロもかっこいいんだけど後半のベース・ソロのときとか萌える。

民族音楽ようそろ〜ず (東京, Feburary, 26–27, March 3 2022)
青木まさひろ (Accordion); 山田拓斗 (Violin, Mandolin); 宮脇淳 (B Clarinet); 舘野公一 (Guitar); 長谷川"Jackal"慧人 (Bass); 指宿克典 (Cajón, djembe, Hi Hat, and others)
青木まさひろさん率いるようそろ〜ずの録音。イントロから最高にかっこいい。山田拓斗さんのマンドリンとヴァイオリンを堪能できる。宮脇さんのクラリネットも色気たっぷり。コード・ヴォイシングのギターソロが好きなのでそれもとても好き。なによりアンサンブルが美しいしアレンジもかっこいい。ヴァイオリンのカデンツァで終わると思ったらまたはじまってそこもテンションあがる。それとジャケット見開きがド派手でかっこいい。

San Lyon (Los Angeles, CA 2021)
Paige Herschell (Kazoo); Jenna Colombet (Violin, Vocal); Dani Vargas (Guitar); Katie Cavera (Bass, Banjo);
LAで活動しているサン・リヨンの録音。とても好きなバンド。太いヴァイオリンの音が素敵。ライブでの演奏もめっちゃかっこいい!

Basilic Swing (Marseille 2022)
Frédéric Ladame (Violin); Beniamin Marciano (Guitar); Pierre Zeinstra (Guitar); David Bergeron (Bass)
マルセイユで活動しているマヌーシュ・ジャズ・バンドのバシリック・スウィング。とんでもなくかっこいい!というかうまいなー!


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