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About a Quarter to Nine

ハリー・ウォーレン (Harry Warren)作曲、アル・デュービン (Al Dubin)作詞のミュージカル・ナンバー。1935年『カジノ・ド・巴里  Go into Your Dance』のために書かれた曲。巴里と書いてパリと読む。はじめて知った。これも一応ジャズ・スタンダードと言われているけれど知名度はあまり高いとは言い難い。

ちょっと暗いヴァースでは「ああ、どうしよ…」と歌い、明るいコーラスにいくと「8時45分にあの娘に会える!恋が始まるんだ!ドキドキしちゃうよ!楽しみだなー!もう新しい人生のはじまりだよ!」と歌われる。わたしはBメロがとても好き。

アル・ジョルソンとブラックフェイス

『カジノ・ド・巴里  Go into Your Dance』ではアル・ジョルソンが歌っている。アル・ジョルソンについては、さんざん語られているけれどもいわゆる「ブラックフェイス」で人気を博した俳優の1人。ブラックフェイスは、もちろんアメリカで始まったものでもないし、ミンストレル・ショウに特有のものでもない。が、いずれにせよ「〈創造された〉黒人」を演じていて、それが当時の人種観はどうであれ、差別的思想にもとづいて行われ、その結果として差別を助長させたという事実は変わらない。そういった関係で、アメリカではかれの業績はあまり表立って賞賛されにくい状況になる。ただし、このミュージカル映画でブラックフェイスが登場したわけではない。こうしたブラックフェイスにかんする議論は大和田俊之の『アメリカ音楽史: ミンストレス・ショウ、ブルースからヒップホップまで』(2011年、講談社)が詳しく、示唆に富む。

録音

アル・ジョルソンの録音は少しクラシックっぽいとても美しいアレンジが施されている。やはり圧倒的に歌ものの録音が多い。
Wingy Manone and His orchestra (NY, April, 8 1935)
Harry Goodman (Bass); Matty Matlock (Clarinet); Eddie Miller (Tenor Saxophone); Ray Bauduc (Drums); Nappy Lamare (Guitar); Wingy Manone (Trumpet);Gil Bowers (Piano)
大好きウィンギー・マノンの録音。ルイ・プリマに繋がる楽しいトランペッターの元祖みたいな人。この人が演奏するとこの曲がウキウキしたように感じますな。ちなみにヴァースは省かれていて、かつインスト。めっちゃかっこいい!

Pasadena Roof Orchestra (London, 2011)
Duncan Galloway (Vocals, Bandleader); Mike "Magic" Henry (Trumpet); Malcolm Baxter (Trumpet); Andy Hiller (Trombone); Robert Fowler: (Baritone/Alto Sax and Clarinet); Oliver Wilby (Tenor Sax and Clarinet); David Pritchard (Alto Sax and Clarinet); John Watson (Drums); Graham Roberts (Guitar); Simon Townley (Piano); David Berry (Bass)
1969年からイギリスで活動しているパサデナ・ルーフ・オーケストラ。こちらの録音もヴァースは省かれている。ベテランらしい演奏が聴けて楽しい!

Susannah McCorkle (London, 1976)
Bruce Turner (Alto Clarinet); Len Skeat (Bass); Johnny Richardson (Drums); Susannah McCorkle (Vocals); Keith Ingham (Piano)
スザンナ・マッコークルの録音もすごく好き。初めてのリーダー作でこのこの曲を録音しているんだけど、透明感と風格が同居していてとても引き込まれる。ドリーミーなアレンジもかっこいい。

ほかにもJohn Sheridan (Piano)の録音もすごくいい。ベースがかっこいいなあと思ったらボブ・ハガートの録音だった。インスト。Sarah Partridgeの録音では、パートリッジの歌とコーラスになるときのテンポアップがとってもきもちよい。

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