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From Monday On

「フロム・マンデー・オン From Monday On」は1928年に ビング・クロスビー Bing Crosby とハリー・バリス Harry Barris が作詞作曲したポピュラーソング。とくにシカゴ・スタイルに志向したミュージシャンがしばしば演奏/録音しており、トラッドジャズ・スタンダードとして認められる。

結婚の言葉

「フロム・マンデー・オン」は、結婚する前のカップルの心境を歌った曲。なんで月曜日から幸せなのか?この歌詞で描かれるカップルはまさに月曜日に結婚式を挙げるからにほかならない。歌詞にある「愛し、敬い、従う Love, honor and obey」とはまさに結婚の誓いにおいて新郎あるいは新婦が言う言葉。ではあるが、近年では「従う obey」の箇所は時代にそぐわないとして削除されることの方が多い。だが、いずれにせよ結婚式という幸せの絶頂の一つを起点として歌詞において描かれる主人公は「クローバーに囲まれて幸せ」になるのである。もちろんこのクローバーとは幸せの象徴である。

また「フロム・マンデー・オン From Monday On」というタイトル。もしかしたらここで使用されているonが気になる人もいるかもしれない。実際にわたしはそうだったんだけど、文法的には副詞と考えてよいだろうなあ、という感じ。前置詞onは「〜に接近して」「〜に面して」「〜に支えられて」という意味で、副詞onでもさらにそういった接触のイメージがあり、さらに「そこから進む」という前進の意味もある。そんな感じで、ちょっとおもしろいタイトルのこの曲は「月曜日を起点として」という意味でよいだろう。これを踏まえれば「結婚式という日を境に幸せな日々がはじまり、それがずっと続く」という感じ捉えてよい。

録音

Red McKenzie and His Music Box (NYC, May 29, 1928)
Red McKenzie (Vocals, Kazoo [Comb]); Joe Venuti (Violin); Eddie Lang (Guitar); Eddie Condon (Banjo);
レッド・マッケンジーのバンドでの録音。カズーがおもしろくて、コンドン、ラング、ヴェヌーティが職人的な演奏を展開している。ノヴェルティ的な録音。

Ella Logan and Spirits of Rhythm (NYC, September 4, 1941)
Ella Logan (Vocal); Douglas Daniels (Vocal, Tipple); Wilbur Daniels (Vocal, Tipple); Wellman Braud (Bass); Leo Watson (Vocal, Drums);
エラ・ローガンとスピリッツ・オブ・リズムのタッグ。レオ・ワトソンのドラムがとてもかっこいい。ジャイヴ!

Joe Mooney Quartet (NYC, December 5, 1947)
Joe Mooney (Accordion, Piano, Vocal); Andy Fitzgerald (Clarinet); Gaetan Frega (Bass); Jack Hotop (Guitar);
盲目のアコーディオン奏者のジョー・ムーニーの録音。ジョー・ムーニーのアコーディオンとヴォーカルはもちろんだけど、アンディ・フィッツジェラルドのクラリネットも聴きどころ。ゲーテン(ガエテン)・フレイガの血を這うようなベースもかっこいい!

Dick Sudhalter And His Friends "With Pleasure" (NYC or Hollywood 1981)
Dick Sudhalter (Trumpet); Joe Muranyi (Clarinet); Dan Levinson (Clarinet, Tenor Saxophone); Dan Barrett (Trombone); James Chirillo (Guitar); Dave Frishberg (PIano); Bill Crow (Bass); Eddie Locke (Drums);
ディック・サドハルターの録音。シカゴ・スタイルのジャズの到達点の1つかもしれない。アンサンブルとソロがどちらも美しい。

Ed Polcer’s All Stars (Smyma, GA 1991)
Allan Vache (Clarinet); Ed Polcer (Cornet); Bob Havens (Trombone); Marty Grosz (Guitar); Johnny Varro (Piano); Bob Haggart (Bass); Hal Smith (Drums);
エド・ポルサーの録音。こちらの録音もシカゴ・スタイル。とにかくダイナミクスが素晴らしい。アンサンブルとソロのどちらも素晴らしい。おそらくヘッドアレンジのみ。リズムが最高に気持ちよい。

John Pizzarelli (New York City, June 15-17, 1999)
John Pizzarelli (Guitar, Vocal); Ray Kennedy (Piano); Martin Pizzarelli (Bass);
ジョン・ピザレリのトリオでの録音。ピザレリのトリオはこの時期が1番好きで、レイ・ケネディのピアノにジョン・ピザレリとマーティン・ピザレリが絡みつくようなスウィングを楽しめる。もちろんジョン・ピザレリのギターソロも最高にかっこよくて単音でもコードソロでもひとつの到達点にいるように思う。めちゃくちゃかっこいい。歌物では一番好きかもしれない。それとこれが収録されたアルバムはジョン・ピザレリの最高傑作の一つかもしれない。最高!

Marty Grosz and Andy Stein (Ascona, Switzerland, July 4, 2002)
Marty Grosz (Guitar, Vocal); Andy Stein (Violin)
マーティ・グロスとアンディ・スタインの珍しいデュオ。ラング=ベヌーティを意識した演奏で、ここではグロスの歌も冴え渡っている。スタイルはただベヌーティを模しているだけではなく、後半は得意技のダブルをこれでもかと披露している。

Marty Grosz (NYC, February 14–15, 2005)
Jon-Erik Kellso (Trumpet); Scott Robinson (C Melody Saxophone); Ken Peplowski (Clarinet, Tenor Saxophone); Marty Grosz (Guitar, Vocals); Greg Cohen (Bass); Arnie Kinsella (Drums);
マーティ・グロスの録音。この録音も大変素晴らしい。とくにグロスのボーカル・ワークが優しく雄弁。またアレンジはギター中心に組み立てられている。これもまたレイドバックした素敵な録音。


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