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One Is Never Too Old To Swing

「ワン・イズ・ネヴァー・トゥー・オールド・トゥー・スウィング One Is Never Too Old To Swing」はタイニー・グライムス Tiny Grimesが作詞作曲したジャイヴ・ナンバー。タイニー・グライムスがキャッツ・アンド・ザ・フィドル Cats and the Fiddle在籍時に書かれたもの。そんなに有名な曲でもないのだけれど、ポジティブな楽しい曲。

スウィングするのに遅すぎることはない

さて、”one is never too old to swing”というフレーズだが、元々は英語のことわざである “one is never too old to learn”をもじったもの。意味は「いくつになっても学ぶに遅すぎることはない」ということ。つまりチャレンジするのに年齢なんて関係ないよ!年齢を言い訳にしたらダメだよ。ということ。これを踏まえると「スウィングするのに年齢なんて関係ないぜ」と言った意味になるだろう。

残念ながら手元の資料にも、インターネット上にも歌詞がなかったのでキャッツ・アンド・ザ・フィドルのものを聞き取った。小さな間違いはあると思う。

Don’t you be afraid to swing in two
二人でスウィングするのを怖がったらダメだ
When you get rhythm what you gonna do?
リズムが聴こえたら、お前ならどうする?
You’ll be king of everything
すべてのものごとの王様にだってなれるんだ
Because one is never too old to swing
だってスウィングするのに年齢なんて関係ないんだから

Don’t you be shy like a baby cat
子猫ちゃんみたいに恥ずかしがったらダメだ
If you’re over thirty that’s a killer jack *1
30過ぎてるんなら狙い目だぜ
You’ll be king of everything
なんの王様になってなれるんだ
Because one is never too old to swing
だってスウィングするのに年齢なんて関係ないんだから

Let me tell you about my mama and papa
おれの両親について教えてやる
They do the boogie woogie by the clock
時計の下でブギウギをしてるんだぜ
They turn the radio real low down
ラジオの音を絞ってるから
So the neighbors won’t hear them going to town
近所の人たちは、俺の両親が街に行ってるって知らないんだ

Get ready in a group and send yourself
バンドに入ればいいし、自分をバンドに送り込めばいい
If you gotta worry, put it on the shelf
心配事は棚に隠しちゃえ
You’ll be king of everything
なんの王様になってなれるんだ
Because one is never too old to swing
だってスウィングするのに年齢なんて関係ないんだから
*1 If you’re dirtyにも聴こえる。それとkiller jackはつぎのkingに鑑みるとトランプを踏まえているのか(?)

わたしは音楽を演奏することをやめてしまったのだが、いつも音楽を再開したらこの曲のギターとヴォーカルをやりたいなあと思う。メロディも明るいし歌詞もポジティブ。勇気づけられる。最高のスウィング・ナンバーだと思う。

タイニー・グライムスという男

テナー・ギターという4弦のギターを操るこのタイニー・グライムスという男は、1916年にアメリカ・ヴァージニア州に生まれ、1989年にニューヨークで息を引き取った。チャーリー・クリスチャンと同い年だけれど、ビバップ史観のジャズ史にはほとんど現れることはない。タイニー・グライムスは1938年にはじめてギターを触って2年後の1940年にキャッツ・アンド・ザ・フィドルに参加する。1941年にこの曲を録音している。わずかギター歴3年程度。

色物のように見えるかもしれないが、1943年からアート・テイタムのトリオに参加しているのだから実力は当時のニューヨークで認められていたと推察される。スウィングしまくりのソリッドな短音のソロが特徴的で、Tボーン・ウォーカーにも通じるブルージーなギターが特徴的。もう一つの彼の功績はスウィングとビバップの橋渡しをしたミュージシャンの一人であること。チャーリー・シェイヴァースやコールマン・ホーキンスといったスウィングのミュージシャンとチャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーを一緒に録音させたり、若いミュージシャンを積極的に自分の録音に起用した。現在のビバップ史観ではほとんど忘れ去られているが、一時代を築いたミュージシャンであることには変わりがない。

録音

Cats and the Fiddle (Chicago, January 20, 1941)
Austin Powell (Guitar); Ernest Price (Tiple); Tiny Grimes (Guitar, Piano); Chuck Barksdale (Bass)
キャッツ・アンド・ザ・フィドルの録音。最高の録音の一つと言ってようだろう。キャッツ・アンド・ザ・フィドルの録音の中でもだいぶ好きな録音。ハーモニー、演奏とどれもが一級品のジャイヴ。

さて、タイニー・グライムスは「サウンディーズ」というミュージックビデオの先駆けとなるような番組に出演し、その映像が残っている。残念ながらキャッツ・アンド・ザ・フィドルでの出演ではないがだいぶ素敵。

Tiny Grimes and Roy Eldridge (New York, April 7 and 9, 1977)
Tiny Grimes (Guitar, Vocal); Roy Eldridge (Trumpet, Vocal); Frank Wess (Tenor Saxophone); Lloyd Glen (Piano); Percy Heath (Bass); Eddie Locke (Drums)
タイニー・グライムスとロイ・エルドリッジの連名での録音。ジャズとブルースの鉄人的ミュージシャンに支えられた録音。さすがに40年代の輝きはなくなったと言われるが、この録音でも見事に返り咲いている。

Booger Hole Revival (Not Documented, Released in 1979)
Joe Mirenna (Banjo, Dobro, dulcimer); Pat Epstein (Bass, Vocal); Paul Epstein (Fiddle, Bass, Guitar, Vocal); Jan Kazor (Guitar, Piano, Vocal); John Longwell (Mandolin, Penny Whistle, Guitar, Banjo, Vocal)
ウェストヴァージニア出身のブーガー・ホール・リヴァイヴァルの録音。中古はもう最近は探しても出てこないので買わなかったことが悔やまれる…。サブスクで聴けるのでそこはよしとしよう。サウンドとしてはブルーグラスのスウィング。素晴らしいの一言に尽きる。

Gangbusters (Monster, the Netherlands September 26 and 27, 1987)
Frenk Van Meeteren (Vocals, Guitar); Ton Van Bergeijk (Vocals, Tipple); Gert-Jan Blom (Vocals, Bass); Boris Vanderlek (Tenor Saxophone); Peter Kuit, Jr. (Tap Dance, Percussion)
オランダのネオ・スウィング/アコースティック・スウィング・バンド。80年代のネオロカの流れなのか80年代にこの録音はちょっと珍しい。バンドのサウンドもスラップのベースが効いていてかっこいい!

Girls from Mars (Springhouse 1999)
Annie Patterson (Vocals); Lauren Bono (Vocals, Snare Drum); Wendi Bourne (Vocals, Guitar); Ralph Gordon (Double Bass)
いまではベテランのジャイヴ・スイング・バンドであるガールズ・フロム・マーズの録音。ハーモニーもアンサンブルもかっこいい。カバーと呼んでいいようなかなりキャッツ・アンド・ザ・フィドルを意識した録音。長めのギターソロもかっこいい。


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