スクールロイヤー、法律崇拝者とカレーレシピで戦う。

弁護士(法律)への周囲な過剰な期待と、それに陶酔した弁護士はろくでもないって話。あとカレーは私の好物。

法律という偶像

研修や相談を通じて時々、他の人から法律に対する過剰な期待というか、崇拝じみたものを感じることがある。

条文は、文字で表された公式のようなもので、必要な情報をしっかり正確に当てはめれば真理が導かれ、正しいことがわかり、間違ったことは是正される。そんなイメージを抱いているんじゃないかと感じる時がある。

某所で教育現場の方々に研修したときも、質疑応答の中でこんな感じの意見が出た。

「弁護士の先生が、法律の話の中で、当事者の気持ち、感情に寄り添うといった話をしていることに、すごく違和感というか、矛盾を感じてしまうのですが。。。」

言われた時は、私、研修中そんな冷酷な人に見えていたの?と軽くショックだったのだけど笑、今思うと、日々のトラブルの中で沸き起こる色んな感情や迷いを打ち払ってくれる強い何か、そんな救いのようなものをこの人は求めていたのかなと感じる。

風が吹けば桶屋は潰れるし、風が吹けば桶屋は儲かる。

はっきり言って、法律を当てはめたところで真理なんて導かれない。そもそも一義的に答えが出ることなんてほとんどない(それができたらどれだけこの仕事が楽か!笑)。

もともと自分はごりごりの理系だったのだけど、かくいう自分も法律の勉強を始める前、漫然と数学のようなイメージを持っていた。しかし、法律の勉強を始めた当初、1番ショックでストレスフルだったのはこの認識とのズレだった。同じ条文を使い、同じ事実を当て嵌めたのに他人と結論が変わる。なんてのは数式ならありえない。なんて根拠薄弱で漠然としていて抽象的で脆いんだ、こんなのどうやって自信を持ってみんな主張するんだ??

そして、試験では、自分が自信を持って出した正解について、平気で0点がつけられたりするのはわりかしショックだった。

そんな中で悩みながら、勉強を続けて、ふと自分の中で整理がついた。こいつは数式じゃない、あくまで地図であり指針、羅針盤の類だ。

羅針盤だけ見ても答えがわかるわけではない。進路の取り方、論理の組み立て方によっては、全く逆の結果になってしまうことがあるし、できてしまう。

裁判で法律専門家が対立するのは、同じレシピで戦う料理対決のようなもの

(そもそも法律で真理が導かれるのなら、裁判なんて必要ないわけだけど)同じ事件なのに、何が正しいのかについて弁護士同士、あるいは検察と弁護士で対立が起きるのは何故なのか。

都合の悪い事実を隠しているのだ、黒を白にしているのだといった意見もあるだろうし、戦略的にそういった側面はゼロではないかもしれない。だけど、個人的な経験ではそういうのはむしろ稀な気がする。どちらかというと、同じ事実を目の前にしても、そこから導く真理、正しいと思うゴールが違うのだ。

この現象は、個人的な感覚的には、同じレシピなのに味が違うカレーができるのに近い。

弁護士実務では、「事実の重み付け」とか言ったりするけれど、数ある事実、材料の中で、何を大事にするか、重要視するかが違う。例えばカレーで、全体のバランスを大事にするか、辛味や香りが大事なのか、ゴロゴロの肉がいいのか。うまいカレーとはなんぞや。というゴールが違うから、当然味が変わってくる。こだわりが違うから、材料の使い方も、分量も変わってくる。

法律というレシピをもとに、手持ちの材料でなるべく依頼者の美味しいと感じる(そして自分自身も美味しいと感じる)料理を裁判ではぶつけている。あとは裁判所の味覚に合うかが問題で、時々、あんな味覚オンチいるか?絶対こっちのカレーの方が美味かっただろ!?みたいな感じで依頼者と怒ったりする。

法律分野にあっても、弁護士は全知全能の救世主なんかではけしてない。

羅針盤やらカレーやら、よくわからない例を挙げたけど、もう一度まとめれば、その人にとって救いとなるゴールを掲げ、そこに向かって、事実や条文、判例を積み上げ、論理でそこを繋げ、土台を固めながら進んでいく。条文や判例はそんな材料の一つであって、答えそのものではない。そんなのが法律の実態だ。

そんなわけで、法律専門家の作業は泥臭い。細かいこと根掘り葉掘り聞き、資料の山に埋もれ,うんうん唸っている。そこには全知全能なんて言葉は似つかない、ただの人がいるだけだ。

救世主気取りの一部の弁護士たち

しかし、である。おそらく心ある弁護士は違う言葉や表現で、あるいは言語化しなくても、自分と同じようなことを解っているのだけど、そこに気づかないでいる弁護士も一定数いる。

そんな人が全知全能のようにちやほやされるのに陶酔して、自分の立場を見誤ったりしていると、他者に不遜だったり、セクハラやパワハラを平気でやる弁護士になっていたりするわけだ。悲しいことに、多分そんな人にここに書いた話は全く通じないと思う。それこそ私の出すカレーは、あちらにはひどく不快な臭いで、吐き気を催す味なんだろう。と思う。わたしがあちらの出すカレーに同じような感想を持つようにね。

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