スクールロイヤーは先生のハートに火をつけられるか

スクールロイヤー自身も自己研鑽し続けなければならないって話。

「イイネ!」をもらってきた研修会

メインの仕事は実際のトラブル対応なのだけど、大きなトラブルについて学校での対応が一息つくと、管理職から「この前打ち合わせで話してくれたあの話をみんなにもしてほしい」といったオファーをしばしばもらう。

講演にあたっては、ニーズを聞いて準備を重ね,講演前に一通り内容確認してもらってから話しているので、それなりにウケのいいものを作ってきたつもりだ。

実際、耳に聞こえてきたり、アンケートでわかる範囲ではあるけれど、基本的には「イイネ!」をもらってきたし、第2回、第3回と依頼をもらえる学校もあるし、それを一応の自分の研修の評価にして自信にしてきた。

そんななか、年末だしなーと、今年をじっくり振り返り始めた頃、ちょっとした転換期に入った。

スクールロイヤー、PDCAサイクルと出会う

知ってる人からすれば今更かよ、という話だろうけれども。法律的な個人プレイヤーとしてではなく、教育委員会の一管理職としての勉強をしているうちに、PDCAサイクルやOODAループといったノウハウに出会った。

個人的にこの二つは自分の肌にあう内容だったので、早速取り入れてみることに。そんなタイミングで丁度、法律上のいじめの定義や捉え方について講演した学校から、「またぜひ続きをやって欲しい!」というオファーがやってきた。そんなわけで早速、こういった新しい知識を踏まえて自分の前回の研修を改めて振り返り、今度の研修内容を検討することにした。

「イイネ!」だけだった研修会

PDCAサイクルで、特に勉強になったのはC(評価)のフェーズで、

①期限を決めて確実に行う

②目標に即した具体的な項目で評価する

③評価項目は数値化して達成度を測る

辺りがポイント。そして、前回の研修について当てはめると

①→意識して設定していなかったので、ひとまず今すぐ評価する

②→いじめの理解度をあげる内容→認知精度を上げるのが目的→学校のいじめ認知件数が上がるどうかで評価

③→月例で出してもらっている、学校のいじめ認知件数が研修の前後で増加しているかを確認する

というわけで、先の研修をした学校の全体の認知件数、さらには個別の先生の認知件数も見させてもらった。

そして結論としては、いじめの認知件数は特段増えていなかったのだ。教職員個人のレベルで見ても、誰一人として明確に結果を伴っていなかった。これはちょっと衝撃だった。

聞き手ではなく話し手の問題

ここで、こっちは聞き手から評価をもらえる授業やっているんだから、それを活かせない学校が悪いんだ!と怒るのは簡単だけど、リスク管理という立場では、そんなこと言ったところでリスクが顕在化したら、やはり教育委員会のリスク管理を任されている自分の責任だと思う。尽くせる手段は尽くすべきだし、まだまだやれることはたくさんある。

まず、これまでの研修内容に対する意見として内容や説明がわかりづらかった、という意見はもらったことがなく、むしろハッキリ言ってくれてスッキリしたという意見の方がほとんどだった。

その評価は素直に受け止めるとして、そこから、「内容のわかりやすさ」ではなく、「伝えるべき内容かどうか」のレベルで選択を間違えているのではと思い至り、ここで相談と研修の大きな違いに気づいた。

相談は聞き手が既に転んでいるか、転ぶ直前に来るので聞いたことを自分に置き換え、すぐに実践する。しかし研修は転ばぬ先の杖のような意味合いが強く、「わかったけどまぁそのうち使うんだろう」くらいにしか思えない。相談にはない研修の工夫として、「自分のことだな」と思わせる内容じゃないといけないし、そう思わせる働きがけをしないといけない。そうでないと、「モチベーションのある先生だけが動ける」内容になってしまう。(そう思って振り返ってみると、実際、自分の研修が特定の先生に刺さり大きく動いた学校もある。)

話し手は、聞き手のなるべく多くの人(できれば全員)が「自分のことだな」と思えるところを着火地点として導火線で論理を繋げ、目標達成というモチベーションに火をつけないといけない。

そこまでできて、はじめて研修も一流と名乗れるのだと個人的には思うし、そこまで自分もまだまだ足りてなかったなと大いに反省した。

ハートに火をつけて。(つけたい)

そんな振り返りを経て、研修の作り方を少し変えてみた。具体的には、これまで以上に、現場との打ち合わせに大きく時間をかけることにしたのだ。

全員参加は無理だけど、管理職以外の指導チームにも打ち合わせに同席してもらう形にし、それぞれの立場から見える状況を話してもらい、課題点の洗い出し、そのためにどういう内容だと〝刺さる〟か意見を出してもらいった。PDCAサイクルで言えば、 Pの部分をこれまで以上にかなり分厚くしてみた。

細かい内容は省くけど、結果として、管理職からきたオファーとは内容が変わったし、私が今回の打ち合わせ時に持ち込んだ案はほとんど全て消し飛んだ。ただ、結果的にガッチリと、「この講演の先にあるもの」や、「みんながそこに進む意義」のようなものが伝わる内容になったと手応えを感じている。

今度の研修会を通じて,何か新しいものを自身も得られれば、と思う。自分の成長という意味で、講演自体の手応えも、その後の効果測定もとても楽しみだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?