見出し画像

カンボジアでの子どもの健康診断

自分が子どものころ、学校の保健室で定期的に行われていた健康診断がとても苦手だった思い出があります。
わたしは昭和の子どもだったから、低学年のころは、上半身裸、パンツだけで身長体重座高などの計測と、視力聴力、おなかと背中に聴診器で検査したことなんかを覚えています。すごく恥ずかしかったんです。
座高は、2016年からはもうなくなりましたね。座高が高いと内臓の発達がいいと言われていたらしいですけど、とくに意味がなかったとか?
身長に対して座高が高い子は、「足が短い! 」ってからかいの対象になっていました。小学生って無垢で残酷。

カンボジアの公立学校ではまだほぼ健康診断がない

カンボジアの教育省はいま、学校保健に力をいれています。モデル校を作ってそこからまず、健康診断を取り入れて行こうと考えているようです。
じつは、カンボジアの公立学校では、まだ、健康診断が行われていません。

前回ご紹介した国立小児病院の看護師さんも、予防をすれば病院に来なくて済む子どもがたくさんいるとおっしゃっていましたが、健康診断で病気や健康面での異変を早期に発見することは、学齢期の子どもにとってとても大事なことのようです。

健康診断プロジェクトに参加

昨年、日本の某医療系の財団と国立大学のプロジェクトで、カンボジアの小学生を対象とした健康診断が行われました。都市部と地方の子どもを比較するため、プノンペン都とカンダール州の学校から選ばれた各1校で開催する小規模なものでしたが、わたしもスタッフとして参加しました。

歯科検診と一般健診、2回にわけて。
歯科検診は、くちの中全体を、一般健診は、身長・体重・血圧・尿・背骨・ベッドの上での聴診器による診断、が行われました。

健康診断なんてはじめての子どもたち。身長や体重は測ってもらったことはあっても、血圧計に腕を入れたり、聴診器をあてられたりするときは、とても緊張して、笑顔が消えてしまう子も大勢いました。カンボジアの子どもたちが白衣を見るのは病院に行くときだけ。痛かったり辛かったりの記憶がよみがえるのかもしれません。
子どもたちの顔を見ていて、学校での健康診断に白衣は不要だと個人的には思いました。

教師と地域の理解が重要

健康診断を行う際、校長先生をはじめ学校の教師たち、そして地域のヘルスセンターが尽力していた姿が印象的です。
血圧や尿検査、聴診器での検診は医師や看護師が行いましたが、身長や体重の測定、子どもたちの誘導、結果の記録など、教師たちが積極的に参加し、スムーズに行えていました。

開催するにあたって、まずは教師を集めて、健康診断の目的等をきちんと説明するところからはじめたからということもあります。加えて、ふだん子どもたちに教育をしている教師たちも、学校保健の必要性と子どもの健康を守ることの重要性をきちんと認識しているからだと感じました。

日本をはじめ海外の支援で健康診断が開催されることは、カンボジアの学校保健にとってはありがたいことでしょう。しかし、今後、国として取り組んでいくには、学校と地域が理解をした上で協力して、子どもの健康を守る活動を行っていく体制づくりが何より重要になると思います。

保健教師の育成にも健康診断を導入

わたしたち東京学芸大学の学校保健プロジェクトでは、保健教師を育成していくことをまずは目指します。教員養成の課程で、これから教師になっていく学生にも健康診断を受けてもらいながら、その重要性と価値を実感し、理解していってもらう計画です。

他の教科でもそうですが、教師になる人が経験したことのないことを子どもに教えるのは難しいことです。たとえば、理科の教師は、自分が小中学生のころ実験をした経験がなくても、教科書に書いてあれば、実験内容を教えなければなりません。それは想像の世界。実験を経験したことがある教師とない教師から教わる授業は、同じ教科書を使ってもリアリティに差が出ると言われています。

学校保健も同じです。これから先の将来、子どもたちの健康を守っていくために活躍する保健教師は、まずは、自らの健康について学び考えてほしいと思っています。


(プロジェクトコーディネーター YM)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?