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モヤモヤ創作話


創作が好きだ。特に小説を書くのが。
創作は自由だ。仮に稚拙さを残そうとも。


なんて言いながら始まるのはアラン校長のモヤモヤ創作話。校長はここ半年くらい、謎解きを作る傍らでマーダーミステリーのシナリオを書いている。否、傍らとは言えないかもしれない。マダミス作りが楽しすぎて若干そっちに寄っている節もある。あ、そういえばマーダーミステリーとは何かの説明をしていない。謎解きだって、「ふーん、×丸くんみたいな?」くらいの認識の方が多いわけで、◯◯表は全部友達、インクも仲良し、26と来たらアルファベットで、118と来たら元素で、全体戦とかLINE謎とか――なんて言っても伝わらないわけで。

何の話だ。そう、マダミスの説明を。マーダーミステリーとはマーダー(殺人事件)のミステリー(謎)を解くことを楽しむゲーム。必ずしも人が死ななくてもいいが、何らかの事件が起こり、その事件に関わっている人物やその現場に居合わせた人物をプレイヤーそれぞれがキャラクターとして演じる形式だ。プレイヤーは自分が選択したキャラクター目線の時間軸行動シートを元に物語の中の一人になりきるのだ。推理小説の一部分が各登場人物の視点ごとに書かれているようなイメージだと校長は思っている。

「10:00にボク見ちゃったんですけど、あなた――」
「いやいや、何言ってるんですか。君こそ12:00ごろに――」
「へぇ、なるほど。他に見た人いる?」

といった感じで互いの情報を出し合い、疑い合いながら話し合いをする。犯人は逃げ切ることを目指し、犯人以外は真相を突き止めることを目指す、このあたりは人狼ゲームっぽさがある。と、ここまでは主に遊ぶ側のおはなし。

作る側は何をするのかというと、オープニング(事件が起こるまで)、キャラクターシート(それぞれの行動や情報)、エンディング(事件の終わり)を書くのである。あとはキャラデザ、ファイルのレイアウト調整、進行説明文などなどこのあたりも地味に大変だけれど。

校長的には

オープニング:三人称視点な小説。文庫本イメージ
キャラクターシート:一人称視点な小説。ケータイ小説イメージ
エンディング:セリフ重視。舞台脚本イメージ

であると思っている。そう、要するにほぼ小説を書くつもりで作ればいいわけだ。前述のように校長は小説を書くのが好きである。したがって、書き始めるまでにモヤモヤはない。書き始めたことを後悔してのモヤモヤもない。ではどこから起こるのか。端的に言うと校長の手法と性格からだが、詳しい話はこの先で見て欲しい。


そのいち

あまり伝わらないかもしれないが、校長は音で文を書く。音といってもドレミファソラシドのような具体的な音階ではない。音楽でもない。脳内に浮かんでくるのは言葉の音、フレーズの音。これらは恐らく今までに校長が触れてきたさまざまな文章、文学、映画、漫画などによりひとりでに生み出されるものなのであろう。キャラクターの声や時計の音、窓の外の音などももちろん聞こえる。それらが聞こえてこない日、聞こえにくいときはうまく書けないし、脳内に溢れるように出てくるときはスラスラ書ける。書かないとずっとうるさくて困るときもある。でも、案外音は曖昧で、というと少し語弊があるが、潜在的に知っている言葉の音を脳がふわっと提示してくることがある。そう例えば、サ行であるとか、母音はiauであるとか、そのくらいは分かるが、具体的な単語までは分からないというような。どこかで聞いたことがあって意味も知っていて、でもそれを引っ張ってこれるのは脳側の特殊機能で、生身の校長側は普通に「え、何だっけ?」となっているわけである。毎回、絞り出したり探し出したりするのに一苦労。それに音はけっこう速く流れてくるので、タイピングが追いつかなかったり、指が攣りそうになったりする。逃した音を拾い直すのも一苦労。さっき脳はどんな音を教えてくれていたのだろうか、書いてみたが何だか違う気がする。なんて呟きながらモヤモヤもやもや。

それに、いつか音がパタリと聞こえなくなるのでは、という不安もある。もう少しの間、仲良くしていようね。


そのに

気になりすぎて進まない。人間は思いの外、正確な定義に弱いのだ。

今宵の薬屋は――
と書こうとして「今宵」に引っかかる。今宵って何時から何時だろう。設定にあっているのかな。趣味の書き散らしではそんなこと気にも留めないが、マダミスとなると少し意識も変わる。ちなみに今宵は日没から1時間くらいを指すそうだ。

頭から血を流して――
また止まる。そういえば血はどのタイミングで固まるのだろう、と。血を流してという表現は適切か。流れているのか、流した跡があるのか、流れた血がが固まり始めていてもなお出血しているのか。納得するまでネットの旅人になっていた。

地主の――
さあ来たぞ。地主ってどのくらい偉いんだろうな、と。地主_階級で検索開始。

帽子をとって――
ここはさすがに、いやそんなことはない。帽子といっても色々あるではないか。この状況ならこのキャラはどんな帽子をかぶっているのだろう。帽子_TPO、検索。

などなど、いちいち何をしているのだと自分でも思うが、気になるとスルーできない。調べた内容で文章が変わるわけではない場合も多いが、自分自身の納得のために解決しておきたくなるのだ。他にもシソーラス辞典を見ながら細かい表現を調整したくなったり、文としては書かないようなキャラ背景を詰めたくなったり、とにかく地味なことをたくさんしている。全然進まない。モヤモヤもやもや。


そのさん

脳内リンクを自分で誤タップしまくる。「そのいち」で述べたような機能を発動させるためなのか何なのか知らないが、創作中は様々な情報が脳内を飛び交っている。ネット上のリンクをタップすると指定のページに飛ぶのと同じように、脳内を飛び交うリンクをタップするとその該当箇所に飛ぶ。それが有益な遷移先なら問題ないが、まあ誤タップの多いこと。例えば

今宵の薬屋は――
と書いた際に「今宵」のリンクに飛んでしまう。今宵は私と一緒に踊りましょう〜♪ 既知の歌が脳内でかかり始める。この『負けないで』は子どもの頃、マラソン大会でかかっていた曲だ。いつの間にか薬屋から運動場の風景に移り変わっている。

ああダメダメ、ちゃんと戻って。さあ薬屋に戻ってきた。カランカラン、表のドアを開ける音。今の感じ、『ハウルの動く城』に似ているな。扉を開けるとそこはヘンテコな家の中。また飛んでしまった。はい戻って戻って。

制作中は時折このような状態になる。何とかしたいものだ。モヤモヤもやもや。


以上、モヤモヤ創作話、おわり。

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