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町全体で教育の変化をつくる

こんにちは。cokowillの寒川です。1週間はあっという間ですね。先週は1泊2日で長野県にお邪魔していました。目的は2つ。1つは長野県池田町で教育長をされている竹内延彦さんにお話を伺うため。もう1つは長野県の佐久穂町にできた日本初のイエナプランスクールである大日向小学校の見学のためです。

今日は池田町の教育長である竹内さんとお話をさせていただいた内容について書きたいと思います。池田町の教育長である竹内さんのご経歴は下記を参照ください。

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1967年長野県東御市生まれ。
大学及び大学院にて臨床心理学を学んだ後、フリースクール、企業、NPO、行政と立場は変われど一貫して子ども若者支援に取り組み、子育て支援や保育・幼児教育の充実から、発達障がい・不登校・高校中退・ニートひきこもり等の支援まで幅広く携わる。
2011年4月からの約8年間は、阿部知事の下で長野県の子ども若者支援や「信州型自然保育(信州やまほいく)認定制度の創設と普及推進に携わる。
2018年末に県庁を退職し、2019年1月より北安曇郡池田町の教育長に就任。30年間の学校教育の外側での様々な経験を活かして「子どもがまんなか」の学校づくりに挑戦中。共著「学校を変えれば社会が変わる」(東京書籍)ほか、執筆や講演等多数。

実は、冒頭に書いたイエナプランスクールである大日向小学校が長野でできることになったのも、竹内さんがいらしゃったからこそ。(中川綾さんが書かれた「あたらしい しょうがっこうの つくりかた」という本を読むと竹内さんが登場されます)

そんな竹内さんと出会わせていただいたのは、11月の頭に富士見町で実施されたMost Likely To Succeedの上映会でした。(この映画は大好きなのでcokowillでも上映会を来年から行う予定です)モデレーターとして竹内さんとお話をさせていただき、竹内さんが取り組まれようとしていることをもっと知りたいと思い、訪問させていただきました。

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https://www.facebook.com/108214293922526/videos/774546379675459/

教育に様々な立場から関わられて、現在は池田町の教育長をされている竹内さんが考える町全体で生み出す教育の変化とはどのようなものなのでしょうか?

池田町の教育の新しい教育大綱(方針)

長野県は以前から「教育県」と言われてきた教育に対する意識の高い県です。現在の知事は、教えてもらうという意味合いの強い「教育」という言葉から、「学び(学習)」という言葉をつかって、子どもたちが主体となり学ぶことができる環境づくりを進めています。そのような中、竹内さんが池田町の教育長に就任されたのは2019年1月。町として教育の変化をつくっていくために、着任してすぐに、これからの15年を見据えた教育大綱の作成に着手されました。(大綱とは、教育の目標や施策の根本的な方針)

池田町の教育大綱で大事にしているのは

・保小中(保育園・小学校・中学校)一体で一人ひとりをサポートする教育
・子どもがまんなか

そして、教育大綱をつくるにあたり大事にされたことは

子どもや教職員はもちろん、町全体を巻き込み共に作成し、推進すること

でした。それぞれの内容や取り組みについて書いていきたいと思います。

写真はあづみ野池田クラフトパーク内の北アルプス展望美術館周辺にある杉山巣雲像⬇︎詳細はこちらhttp://www.ikedamachi.net/0000000224.html画像5

保小中保育園・小学校・中学校)一体で一人ひとりをサポートする教育

池田町では、保育園では当たり前におこなわれているような“一人ひとりに合った成長のサポートをする”という関わり方を、小学校入学以降もそのまま受け継いで続けていくことを方針として掲げています。
一般的な子どもの教育といえば、小学校からスタートし、1年生になると急に学校のルールや先生の指示のもとに指導が始まります。(教育を何と捉えるのかということも関係するし、管轄する省庁が異なるという影響もありますが)
しかし、子どもは“誕生した瞬間から成長し続ける存在”であるという見方をすると、小学校入学を機に教育が急にスタートするのではなく、保小中一体となって、“共有する理念”を一貫して持ち続けながら子どもと関わっていくことは本来は自然な発想です。


保小中一体というと物理的に同じ場所に施設をつくったり、集めたりということをイメージされるかもしれませんが、そうではありません。
保小中一体とは、保育園や学校などにおいて、様々な年齢の子どもと多くの大人たちが接する中で、関わる大人たちが一貫して“共有する理念”を大切にしながら子どもと関わることを継続していくことを指します。
池田町では、この“共有する理念“である“一人ひとりに合った成長のサポートをする”ことについて理解を深めるために、定期的に保育園、小学校、中学校の先生同士の学び合いを進めているそうです。
たとえば、定期的に小中学校の先生方は保育園に通う機会があり、一人ひとりに合わせる関わりを実際に目にしながら、先生方が交流し、対話することで意識も含めた変化をサポートしているとのこと。今後は、小学校の先生が中学校に行って教えたり、その逆をしたりと複数の学校間の交流を行うことで互いに影響を受けあいながら良い変化をつくりだしていけるような取り組みも検討されているということでした。

写真は図書館の児童書のエリア。靴を脱いで入るゾーンなので、寝っ転がって本を読むことも可能です⬇︎
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子どもがまんなか

言葉だけを聞くと、とても当たり前のように聞こえるかもしれません。しかし、本当に実現しようとすると様々な困難が起こります。概念としては同意できても、実際の学校で、教室でそれを実現するのは先生方です。教科ごとに決められた授業時間、限られた教員数、あらたに加わる科目・・・子どもをまんなかにしたくてもできない環境があるとも言えます。

竹内さんが小学校6年生の授業にお邪魔して児童のみなさんと対話をされた時に、新たな教育大綱に掲げる「子どもがまんなか」という方針についてどう思うかを尋ねたところ、

「いいと思うけど、実際は難しいよね」

と言われたそうです。

回答を聞いて竹内さんは、子どもは周りの大人をよく見ているし、何が起きているのかもよくわかっている。大人が聴く姿勢を持って問いかければ答えてくれると実感したとお話くださいました。

このエピソードからも子どもたちは感じる力も、観察する力も、俯瞰する力もあることがわかります。だからこそ、その力を摘んでしまう学びではなく、学びが子どもたち自身のものである環境をつくり、子どもたちが学びたいことを自分で考え、選択し、決定できることを保障してあげる学びの場が学校である必要があるということなのです。

とても素敵な内容が掲げられていますが、新たな教育大綱をつくるにあたり、竹内さんが大事にしたことがあるとおっしゃいました。それは・・・

自分でつくらないこと
子どもや教職員はもちろん、町全体を巻き込み共に作成し、推進すること

竹内さんという教育長一人でつくってしまったら、それは池田町の教育大綱ではなく、竹内さんの教育大綱になってしまうということ。そして、教育長という立場は任期がある仕事でもあり、竹内さんだけがつくったものであれば、竹内さんがいなくなったら途絶えてしまう可能性が高い。もし、そうなってしまった場合、振り回されるのは現場の先生方であり、大きな影響を受けるのは子どもたちなのです。

教育における本質的な変化や環境づくりは教育大綱をつくれば終わりでもなければ、短期間で終わるものでもありません。見直しを続け、変化をし続けながらずっと続いていくものだからこそ、そこで教育を担う先生方やサポートをしてくださる地域の方が関わりつくることが重要。さらに、一人ひとりに合わせた教育をするということは、教員だけでは手が足りないため、地域の方々や保護者の皆さんにも関わってもらう場面が必ずあり、当事者となるみなさん自身が関わりつくることが大事だと竹内さんは考えていらっしゃいました。

そのため、教職員や地域の方に向けて、町民説明会を実施したり、学校の職員会議に参加したり、児童・生徒とも対話を重ね内容をつくり、町にいる一人ひとりが関わって作成するプロセスを歩まれつくられた大綱案には「子どもを取り巻く大人が、対話を通して互いの理解と信頼を深めながら子どもをサポートしていくこと」と書かれています。

今後は学区をなくして学校を選択できたり、一度選択した学校すらも変更ができたり、図書館やコミュニティセンター、自宅での学びを学校に来て学んでいることと同じように扱えるような仕組みをつくっていくなど町全体が学びの場となる環境をつくることを検討したいそうです。方針を実現する具体的な取り組みや環境づくりに向けてますます町全体での対話が重要になっていきます。

自治体全体で方針を決めていく重要性は他にもあります。校長先生や先生自身が異動になった時でも池田町の教育の基本となる部分が後任の先生や新任の先生に引き継がれ、属人的なものではなくなるということです。もし、池田町の先生が長野県の他のエリアに異動になった時に、池田町の取り組みを共有し、展開してくれることで、長野県全体の教育が変化していく種となっていく可能性も生まれるのです。

ちなみに、訪問をさせていただいた日は、地域にあるコミュニティセンターをご案内いただいたりと地域の方がいらっしゃる場所へ出向いたのですが、その時にご挨拶を互いにされる姿を見て、きっと竹内さんは関連する方々との関係性を普段から丁寧につくりながら、教育大綱を本当に町全体でつくり、進めていくことをされようとしているのだと肌で感じることができました。

今回のnoteでは、どのようなことを大事にされながら、町としての教育の変化をつくっていくかについて書きましたが、触れられていない部分もたくさんあります。合わせて、ぜひ、下記のリンクもお読みください。https://base-campus.com/2019/03/ikedamachi/

今回は池田町の取り組みを紹介させていただくことで、みなさんに教育の変化をつくりだそうとしている具体的な事例をお届けしました。他の自治体で取り組もうとした時にも参考にしていただける要素がたくさん詰まっています。

そして、きっとこのnoteを読んでくださる中には、このような変化をつくりだしたいと思っていらっしゃる自治体の方や学校があられるのではないかと思います。取り組みのポイントについては池田町のものも含め今後、noteに少しずつまとめていく予定です。

最後にお知らせです!今回のように自治体や学校単位での変化がまだ起きていないけれど、より良い教育を届けるために学校や授業に変化を生み出したいと思っている先生もいらっしゃるのではないでしょうか。先生方が現場から変化をつくりだすのに必要なスキルを身につけ、実際に現場でチャレンジすることをサポートするプログラムをご用意しています。下記のリンクからぜひご確認ください。ご一緒できるのを楽しみにしています。

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プログラム内容はこちらからhttp://www.cokowill.com/teachersprogram

プログラムのお申し込みはこちらからhttps://forms.gle/D6RAgqwGWR87obtX6

プログラムのオンライン説明会はこちらからhttps://forms.gle/3fq9wmP8DpWdZA7r5

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