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いちじく、無花果、映日果、、

ジャム屋のイチジク日記です。
実りの秋、りんごや洋梨も見かけるようになってきましたが、今はなんといってもイチジクですね。イチジクを使ったコンフィチュール、大人気。

と書いていますが、じつは私、イチジク苦手なんです。生もドライ甘露煮も苦手、じつはジャムもそんなに好きではない。ジャム屋なのに!毎日のようにイチジク煮てるのに!!でも、だからこそ、自分で作りました。イチジク嫌いも好きになるコンフィチュール。

もともと、好きな果物といえば柑橘類。それ以外では、桃の仲間(さくらんぼとかプラムとか)イチゴも、甘すぎない昔ながらの品種のほうが好きだったりします。でも、メロンはうーんと甘いのが好きだったりするので、はっきりした味わいが好きなのかも。食感も、シャキシャキとかトローリとか両極端なものが好き。となると、これといった強い風味も食感もなくやさしい味わいのイチジクや柿は苦手、ということになってしまうんですね。

食感は変化させられるとしても、すっぱいイチジクなんておいしそうではないし、そもそもイチジクらしさがなくなってしまう。生のイチジクは苦手と書いたけれど、生ハムをのせたりチーズを合わせたりするのは好きなんです。そうか、果物と思わなければイチジク好きなんだ、と気づきました。アボカドも、そうですよね。

ジャムというよりも、料理に添えるソースとかペーストをイメージして作ることにしました。フランス料理やイタリア料理では、肉やチーズにフルーツの甘酸っぱい組み合わせ、ふつうにありますよね。鴨にオレンジとか、桃とモツァレラとか。和食だって、柿なますがあるし。イチジクもそんなふうに使えたら、おいしさの幅が広がるんじゃないかと。そこで考えたのが、スパイスや洋酒との組み合わせ。生ハムやソーセージ、豚肉料理に添えてもおいしいコンフィチュールができました。

もうひとつは、イチジクの甘い香りにベリーを合わせて、さらに甘く華やかな香りに、実もザクザク入ったお菓子のようなコンフィチュールを作ること。どちらも、お店で食べたものやレシピ本からヒントをもらっているので、私のオリジナルというわけではないのですが、私にとって苦手だったイチジクの甘さや食感を逆手にとって活かし、そのままスプーンですくって食べたくなるようなコンフィチュールです。

イチジクも、桃と同じくらい古くからある果物で、こちらは神話ではなく聖書に登場します。そう、エデンの園で禁断の果実を食べたアダムとイブが、裸であることに気づいて腰を覆うのに使ったのが、イチジクの葉っぱ。このことから、英語圏では「イチジクの葉」は「恥ずかしいことや都合の悪いことを覆い隠す」という喩えとして使われる言葉になっています。

花が咲かずに実がなることから、漢字で「無花果」と書きますが、ちゃんと花は咲くんだそうです。花びらはなく、しかも実の内側に咲くので外から見えないだけだそう。私たちが食べている、あのブツブツした部分が花ということらしいです。

イチジクにはもうひとつ「映日果」という漢字もあります。ペルシアからインドを経て中国に伝わったときの漢字表記だそうで、それが日本に伝わり、エイジツカと音読みしたのが訛ってイチジクになったとも言われています。形態からつけられた「無花果」という漢字に対し「映日果」は元のヨミをあらわした漢字といえますが、あまり見かけることはないかと思います。

果物のイチジクではありませんが、「九」と書いて「いちじく」さんと読む苗字があるそうです。イチジ(一字)でク(九)をあらわすから「九」とは駄洒落のようですが、じつは漢数字一文字の苗字は「一」から「九」まですべてあって、どれもおもしろいヨミなんです。果物の話から逸れましたので、その話はまた別の機会に!

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