パルナスのプリンカップ
40年以上前にお店で売られていたプリンは、今みたいに薄いプラスチック容器ではなく、ぽってりと厚い陶器に入っていたということを知ってる人は少ないだろう。
私の周りでは小さい頃プリンを食べた後、それを湯呑みとして使っている家庭がたくさんあった。代表的なのはモロゾフのプリンカップだったと思う。
それを聞いた時、私もモロゾフのプリンカップが欲しくてモロゾフでプリンを買おうと思ったが、時すでに遅し。時代の移り変わりは早い。
父と母が亡くなり、住人がいなくなった実家マンションを処分することになった。家は人が住んでこそ生きるものだと思ったので、できるだけ早めに誰か他の人に住んで欲しかったということもある。その際、必要なものがないか、人に譲ることのできるものがないかどうか探していると、昔ずっと使っていたこのプリンカップがあったので持って帰ってきた。兄と柄違いで私はこのなんだかよくわからない乗り物に乗っている人たちのものだった。
パルナス、っていっても調べたらもう20年ほど前に会社が清算されていたので知っている人は少ないとは思うが、私が小さい頃見ていたアニメのCMでよく流れていたので、40代後半以降の関西人なら誰でも知っているはず。「モスクワの味」というフレーズがいまでも耳に残っている。京都南インター近くにあるロシアっぽい建物がパルナスと並んで思い出される私のイメージで、大人になってからそこがラブホテルだということを知った。高速に乗る際、「あ、パルナスだ!」とそのラブホテルを指差して両親に同意を求めていたが、両親は一体どんな気持ちだったんだろう。ちょっと胸が痛む。
それにしてもこのプリンカップ、40年以上の年代物なのに、未だプリントが消えずにくっきりと残っているっていうことが素晴らしいと思いません?落としたりして粗雑に扱ってきたはずなのにヒビ一つ入ってない。ちょっと厚めだから普通の湯呑みよりも熱さが伝わりにくい。飲んだ時の口触りがいい。熱めの日本茶飲むのにちょうどいいサイズ。これがプリンのおまけだったなんて信じられない。
確かにちょっと重めのこのプリンカップ、プリンって1個だけ買うわけじゃないだろうから、買って帰る時重たかっただろうな。だからプラスチックに移行していった経緯もわからなくはない。だけど、昔は昔で色んなものを再利用するという意識がどこかしこにあって、そういうことも悪くないことだよなって思う。新しいもの欲しくなるけど、今のコレを別の何かに使えないかなっていう発想、一周回って(一周以上かな)イマドキの考えっぽくていいなって思う。
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