一列の撞球

撞球臺へと乗り上げる上半身へ、華燭の蝋燭が白い焔をゆらめかせているときに、
おりしも時同じくして分銅の円錘型へと吹き寄せる綿埃は、花菱模様の壁紙より一臺のトルソの脚へ到るまでを斑の影に照らしながら、
光芒の一束を稲妻の様に擲つ記念像の挙手から足許を正中線に分節しながらも、
左右対称の鏡へとディオスクロイの宮廷図を消失点より瞠っている
――尤もそれは肖像画家が自画像を睨め付けるときの、彼等の一種の審美眼にほかならないのであったが――、
血は血を憎み、そして躊躇わない、
三叉路に奴隷の出自を咎めているのは、佇つ青年そのものであるのだとしても、かの迂遠な言回しにもうちひらく口蓋、そして舌の分別は、
彼自身を自身への復讐の憂目から率い、その路傍の石榑から曳きそめゆく満月の闇から救済を果たす道標には到底なり得ようもないであろう、
青年のその盲目の包帯より抉出されてゆく撞球が、
水晶体と硝子体よりなる天球儀が吊り下げている、
それらの空洞――或は息吹の由縁――はまごうことなき軌道を周りながらも、
その重力の中心、つまりは天体の死へ引かれ斥かれながらも、木星宮の十字格子、その経緯度線を公転しながら自転しているのであった、

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