苦蓬――1945

死の雲
黒い窓に濡れる黒い雨
忘れられた遺骨
赤い人
焼付いた影
一瞬の出来事
悲鳴を立てて落ちゆく
蒸発した
膚の、

熱線は
眼球にふりかかり
逃場無く
街が焼け崩れ
過去と今
繰返されない繰返しの繰返されない繰返し
空襲の街
地下鉄線への階段に
倒れた時計

死を摸倣する毎に
膨張した
ガシュリンと人の脂浮ぶ
河を傾れて
爛れた櫻の樹の青々として
骨を塗り込めた
更地

死の礎に拠り
築かれた
美しい平和として疫病は、
港湾に滔滔と
正統防衛の正統さえも疑うこともなく
虐殺の正義に溺酔し
加虐こそを慈善の種として撒く
実験
恐怖統治を
今も金切声を
追う、

暴動の死骸を美術に施していた その時

 

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