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ドイツ予防接種事情

成人してから予防接種を受けたことがありますか。

私は大学入学以降予防接種を受けたことが一回もありません。もしかしたら、インフルエンザの予防接種に至るまで、義務教育終了後から一切受けていないかもしれません。そもそもいつ最後に予防接種を受けたか記憶にないのです。それでも中学以来インフルエンザに罹患することは一度もなく、いつも「だいたい、インフルエンザの予防接種なんて、宝くじみたいなもんでしょ。たまたま当たれば効くけれど、外れれば注射打たれ損」と大口を叩いていました。ですから、ドイツに移住して初めての秋、最初に家庭医の元で健康診断を受けた時、「日本でどんな予防接種を受けましたか?ジフテリアは?百日咳は?」と聞かれ、絶句しました。ええと、幼児の頃「3種混合ワクチン」とかいうものを受けた記憶があるのですが、その3種類が何なのか思い出せません...。

即座に「ああ、それじゃ、いずれにしてもダメダメ。どんな接種を受けていようと、効果なんてとっくに消えてるよ。じゃ、全部受けてください」と医師に言われました。もちろん、ドイツはこれらの病気の汚染地域ではありませんが、何しろ大陸の真ん中に位置しているので、世界各国から様々な人々がやってきます。伝染病に罹患した人もやってくる可能性も少なからずあるわけで、重篤化する可能性が高い伝染病に関しては、大人でも定期的に予防接種を受けておいたほうが良いとのことでした。

...そしてとどめの一発。
「時期的にちょうどいいから、インフルエンザもついでに接種しておきますか」

夫は職業柄不特定多数の人と接する仕事をしているので、毎年インフルエンザ予防接種を受けていますが、人混みの中に入るのは買い物に行く時くらいというインドア派主婦の私が、何故またインフルエンザなんて。私が医師の質問に対し「インフルエンザ予防接種なんて、もう何十年も受けていませんから結構です」と自信満々で言ったその時、医師と私の横に座っていた夫が「えっ!」と息をのむ音を聞いたような気がしました。そこで私は持論を展開します。「だって、インフルエンザ予防接種なんて宝くじみたいなものですよね」

「まあ、そうだけど」と医師は言葉を濁したものの、その後も「本当にそれでいいのか」と言わんばかりの視線を投げかけてきます。私の横顔に夫の視線が刺さっているのも感じました。2人に凝視された私は、ついに根負けして弱々しく「じゃあ、全部お願いします...」と答えたのでした。血液検査以外で注射針を刺されるのは、実に何十年ぶりのことだったのか。

予防接種を受けた後はWHO(World Health Organization)発行の黄色い予防接種手帳にそれを記録していきます。その後、私の予防接種内容は広がり、インフルエンザは問答無用で毎年。去年、風疹が流行っている時期に日本へ行く際は、風疹と麻疹の混合ワクチンを接種しました。その後、年明けにドイツでは麻疹が猛威をふるったので、これに関しては、本当に接種しておいて良かったと思っています。今年は先日インフルエンザに加え、ダニ媒介性脳炎ワクチン(第1回)を接種。その都度、予防接種手帳には接種歴が記載され、可愛らしいワクチンの小さなシールが貼られます。こうなってくると、このシール、集めたくなっちゃうよなあ...、なんて。

とりあえず、12月には第2回の脳炎ワクチン接種予定です。
所変われば、予防接種の必要性も変わる、ということで。

追記

今日転載するこの記事は、2019年秋に書いたものです。この時から間をおかずしてコロナウィルスの感染拡大が始まるのだなあと思うと、何とも言えない気分になります。実は昨日までスイスに滞在していたのですが、利用したルフトハンザ機ではフライトアテンダントの何人かが既にマスクを着用している姿を見ました。今年ルフトハンザを利用するのは4回目になりますが、春先から今までマスク着用のフライトアテンダントは見かけなかったので、その姿を見て「ああ、もうそんな時期なんだ」と、冬の到来がジワジワ近づいていることを実感しました。今年の冬には再びコロナウィルス感染者が増加する(少なくとも夏よりは増加すると思います)のでしょうけれど、おおごとにならないことを心から願うばかりです。
なお、ダニ媒介性脳炎ですが、ここ何年か春先になるとオンライン定期購読しているSüddeutsche Zeitung(南ドイツ新聞)がこの脳炎への注意を促す記事を掲載します。私がドイツへ移住した当初、中部ドイツはダニ媒介性脳炎汚染地域ではなかったのですが、ここ何年かの間にジワジワ汚染地域の北限が上昇し、今やすぐ南にまで迫ってきているため、森の傍に住み毎日のように森の中を歩き回っている私は、念のため早めにワクチン接種することにしました。

(この記事は、2019年10月17日にブログに投稿した記事に後記を書き加えた上で、転載したものです。)