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なぜ原爆が悪ではないのか アメリカの核意識 (読書)

宮本ゆき 著

著者はアメリカの大学で核倫理を
教えている。
自身は広島出身の被爆二世という立場であるので
他の人よりも 原爆について近い存在である。

戦争が長引けば 
アメリカ兵のダメージが大きくなるので
早めに終わらせたいという話は聞いていたし
敗戦国と戦勝国との 考え方の違いはあるし
日本人は 原爆は投下されたと思っているけど
実際はアタックされているんですよね。

この辺りの感じ方の違いなどを読んでみたいと思いました。

やはり 学生さんたちの考えは全然違っていた。
被ばく者が 生きて 語らう姿をみて
日本人なら つらかったねとか 共に寄り添う思いが出てくるけど
彼らは 生きて悲惨な状況だった話を語り継いでくれてなんと強い人なのでしょうという反応だったそうです。

アメリカ人らにとって 原爆、原子力には
生活の為に必要なものであって コントロールできるものである。
という イメージなのです。
戦後は 核を持ってる事が すなわち 平和に必要なものだという
考えである。

彼らにとって 持っていない事が危険な事であり
核兵器を「クリーンな爆弾」と呼び
正義であるという印象をつけていました。
「死の兵器」ではなく 「新しい生命」のメタファーとして。
だから 「リトルボーイ」というような 愛称で呼ばれていたのも納得です。

アメリカも日本の戦時中同じように
女性が家庭を守る事が 勝利につながるという事を宣伝していた。
家事をきちんとこなすことによって (家の中がきれいになって逃げ道などが確保されるので) 生存率を上げると 説明していたようです。

日本の被爆者の女性たちを アメリカに呼んで
手術などしたりして アメリカという国は 大きくて強くて優しいという
イメージを作っていったそうです。

しかし 一方でマーシャル諸島(ビキニ環礁)では 
継続的な核実験を行い続けていった。
そして 地元の人々の生活そして身体を蝕んでいった。

が裁判で訴えても 棄却されてしまった。

そういう状況でも 放射線の恐ろしさを調べている科学者もいた。
アメリカ本土での実験のあと
近隣の牧草地の牛の牛乳からセシウムが そして住民の乳歯などからヨウ素が
見つけられた。
驚くのは 放射性物質についての情報が入手されていた時期に
「牛乳推進キャンペーン」を やっていたそうです。

恐ろしい事に
放射能人体実験も行っていたそうです。
ニューメキシコ州のジャーナリスト、アイリーン・ウエルサムが 1993年に
「プルトニウム実験」という記事を書いて 隠されてきた人体実験の実態を暴きました。
その後「プルトニウム・ファイルズ」という本にまとめている。
(渡辺正訳 翔泳社 2000年)
妊婦に放射性鉄分を含んだ飲料を 飲ませたりした そうです。

日本でもそうですが
施設関係で働いていたりすると 被ばくが原因の被害を言えないという事があります。
政治がこういう事を隠して 自衛には 核が必要と 声をあげています。

原爆だけではなく 放射性物質による健康被害が古くからあったそうです。
ラジウムを使った工場で働いていた女性たちが多く亡くなっていったので
原因を追究して訴えて 勝訴したけど残念ですね。
さらに 驚くことに このラジウムを使った製品が沢山あったそうです。
健康飲料にも使われていたとは。そして それらを飲んだ人達は残念な結果になったそうです。
その方の遺体からは強い放射線が出ていたので鉛の棺桶を使用したそうです。
そして死後33年に 残留放射能を測ったところ まだ大量ラジウムが残っていたそうです。
内部被ばくの方が 外部被ばくよりも 常に中から被ばくし続けるという事です。

1950年台には ラスベガスで核実験場のキノコ雲を観光資源にしていたそうです。
多くの人がこれで被爆したかどうかは調べようがなかったみたいです。
他にも 原子炉などでも 見学ツアーがあって 安全だから 観光客を入れるのですという。

被ばくという 負の部分を完全に覆い隠して
核がある事が 平和で快適な生活になると 言い続ける人達。

被爆国である日本だけが 被ばくしていると思っていましたが
核をどんどん開発している アメリカも 凄い被爆国なのだと わかりました。

論文のようで ちょっと読みにくい本でしたが
勉強になりました。
こういう本は 多くの人に読んでもらいたいです。

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