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趣味で音楽をつくるのは難しい。

こんにちは、スキャット後藤です。フリーランスの作曲家です。今回は全文無料で読めます。

先日、配信がはじまったドラマ『イタイケに恋して』のサントラの中に、オープニングというか、タイトルバックの時に使われてる「Clash with Fate」っていう英詩のボーカル曲がありまして、まぁこれがカッコいい感じなのに、可愛くて面白いみたいな不思議な曲ですごく気に入ってます。

作詞を相馬絵梨子さん、歌はユリカリパブリックさんにお願いしたのですが、あまりに制作が楽しかったので、仕事ではなく自主制作でもう一曲つくっちゃえ!ってことでお二人に声をかけてみたらOKしてくれて、仕事の合間に新曲を作ることになりました。

この「Clash with Fate」と並べて聞ける曲を作ろうと思いました。普段仕事以外で曲をつくることをしないのですが、仕事でつくる音楽と、趣味でつくる音楽ってこんなに違うんだ...といろいろ感じたので、その違いについて今日は書きたいと思います。

ちなみにドラマ『イタイケに恋して』は渡辺大知・菊池風磨・アイクぬわら・石井杏奈出演で読売テレビ・日テレ系で毎週木曜放送してます。


▷仕事以外で作曲するのは難しい

最初に結論を書くと、僕にとって趣味で音楽つくるのは難しいということです。作曲する時に迷うポイントがいっぱいありすぎるってことです。仕事で曲をつくる場合、その曲をつくる目的がハッキリしてるので「好き・嫌い」以前に「機能してる」かどうかがとても重要で、そこを意識しながら作曲します。どの時間帯でどういう人たちをターゲットにするか、その作品にとっての音楽の位置づけは?などかなり細かく気にして作曲します。メロディーの譜割り、コード、リズムパターンなどに大きく影響します。

例えば、上にリンクを貼った曲「Clash with Fate」を聞いてもらうと、サビ頭瞬間で突然ドーーンって盛り上がる、インパクトあるのは「機能」として必要だったから。このサビ頭きっかけでタイトルバックが出るという重要な役割があったからです。

その前までのベースのリフもそうです。歌の歌い方もそうです。途中でたまに入ってくるファニーな金属音もそうです。全部、ドラマの演出に必要だから、その楽器を選んだり、そういう構成になってたりします。台本からの逆算で曲を作ります。(気になる人はTVerかHuluで見てみてください)


これが自主制作になった途端に見失います。


そもそもなんのために曲を作ればいいのか、がよくわかりません。僕は音楽で世の中に言いたいことがあるわけでもないし、恋について語りたいわけでもないですし、、、アマチュアの頃は小室哲哉になりたいだとか、槇原敬之みたくなりたいと思って毎日新曲作ってましたけども、そんな勢いも全然なく、、、毎日曲をつくるのは変わらないですけども、作る目的や意味がガラっと変わりました。自主制作難しい、、、

オーダーを受けて曲をつくるのが難しいって人もいます。僕は27年もそれをやってきたので、いろんな人に依頼されて自分なりに良いと思う回答を形にするのが面白いです。そもそも僕は職業作曲家に憧れてました。趣味で音楽を作るってことより商業的にいろんな作曲することに憧れてたし、今もそれは変わりません。

仕事で曲を作っていると、コンセプトがしっかりしてるものでないと曲の強度が弱く脆い感じします。コンセプトがブレない、芯食ってるみたいなのが大事で、深さも重要だと思ったりします。たまに何も考えずに作る曲もありますけども、、、自主制作は制限がないので、無計画のものでもいいわけじゃないですか。なんでもいいって僕にとってはハードルが高いんです...自由って難しい。

自分で自由にコンセプトが作れる分、何をしていいかわからなくて困ってしまいます。作曲は0→1ってよく言われますけども、仕事で作る場合、ドラマの内容が決まってたり、CMだとコンテがあったり、すでに0→1の部分が用意されてるんです。だからそこまで作る時に困りません。困るとしたら、そのオーダーをどう形にするか、良いものにするかの試行錯誤の部分ですね。でもこういう場合の「良いもの」って明確にあるので進めやすいのです。

自主制作だと「そもそもこの曲はなんで作るの?」ってことになります。ただ単に自分が作りたいから作る、で良いとは思うのですけども、それだけだと作ってる時に迷子になりまくります...(僕の場合)

僕にとって自主制作はそんな感じで、、、そんな僕ですが、2,3年前に自主制作でリリースした「妄想音楽図鑑」というシリーズががキッカケで仕事につながったりもしてるので、"これから僕が仕事にしたいことをカタログにする"をコンセプトに、また仕事以外の作品作りしようかなと思います。こういう縛りを自分で決めていくと楽なんですよね。やりたい仕事からの逆算でアルバムを作る。仕事だとオーダーがあるのでそれに沿ったものしか作れないですけども、自主制作だと仕事で作りにくい音楽も形に出来るわけで。それに仕事だと原盤権だ著作権だで、好きに映像つけたり、動画のBGMにしたりできないですし。自分で音源つくると自分に権利があるし、自由に使えるし。

ユリカリパブリックさんと、相馬絵梨子さんに再び声をかけたのに、この権利の部分が大きいかもしれません。仕事でつくった曲はどうしても自分の手から離れていってしまうので、三人で作った自分たちの楽曲が欲しかったのです。ドラマ用に作った「Clash with Fate」って曲があったことで、新曲も英詩にしようとか、この曲と並べた時にいい感じになる曲にしようとか。世界観は近いんだけども、違うテイストにしたいとか。こういう魅力が前の曲では伝えられなかったから、今回はその部分を全面に出そうとか。相対的にコンセプトを決めていきました。どんどん制限を増やしていったのです。するとスラスラと曲が浮かんで形になりました。すでにTDも終わらせたので、あとは配信の準備だけです。MVどうしよう...みたいな悩みはありますけども。

こんな感じで、、、自主制作は僕にとって難しいので、自分でどんどんと制限を設けて作ることにしましたって話でした。新たな仕事のキッカケになった「妄想音楽図鑑」シリーズ全3作をぜひ聞いてみてください!!!ということで、今日はこのへんで。


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スキャット後藤
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https://note.com/scatgoto/n/n72622adcd482

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