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東野圭吾の世界vol.2 北京五輪に寄せて

みなさん、こんにちは!
今晩、北京オリンピックの開会式があり、すでに競技も始まっていますね。
応援している競技や選手はいますか?

夏はバスケやリレー、ラグビーを楽しみにしていたし、何よりも去年は東京開催だったし。 きっと冬も雪を解かすほどの熱量のある競技ばかりなんだと思うのですが、なかなか馴染みのない競技が多いなぁという印象です。そこで、ちょっとでも北京オリンピックが楽しめる作品をご紹介したいと思います。

最近映画をあまり見ていなくて、東野圭吾さんシリーズとして紹介します。

なんとなく親近感の湧かない冬のオリンピックを楽しむために

冬季オリンピックって、夏季オリンピックと比べるとやったことのない競技ばかりでちょっと親近感が湧かないことないですか?夏は水泳とかサッカーとか卓球とか、それが冬になるとスキーモーグル、ボブスレーにカーリング…。私に経験があるのは遊びのスキーとかフィギュアスケートくらいですね。

リュージュに至っては、私の知識不足のせいでどこらへんがスポーツなのか未だに掴みきれてない感があります。あのスケボーみたいなのに背中を乗せて雪のコースを滑るやつですね。スポーツとして成り立っているのであれば、きっと重力を超えて筋力やスキルでスピードが変わるんだろうな…

共感してくれる方がいるかどうか自信がないんですが、冬のオリンピックは華やかなフィギュアくらいしか見ない!って方は多いんじゃないかと思います。そこで冬のスポーツの世界が垣間見れるのでオススメなのが、東野圭吾さんの『鳥人計画』です。

学生の頃に読んだことがあるのですが、今回北京オリンピックが始まる前にもう一度読み直してみて、やっぱりおもしろいなと思ったのでご紹介します。

『鳥人計画』

[あらすじ] 日本ジャンプ界期待のホープが殺された。ほどなく犯人は彼のコーチであることが判明。一体、彼がどうして? 一見単純に見えた殺人事件の背後に隠された、驚くべき「計画」 とは!?

この小説は冬の北海道が舞台で、スキージャンプがテーマ。1994年に発行されました。天才的ジャンパーが殺されたところから物語がスタートします。

ミステリーとしてめちゃめちゃおもしろいのは、前半で早々に読者には犯人が分かるんですね。なぜならその人物の犯行だと分かっている関係者から、犯人に「自白しろ」という手紙が届くから。犯人は綿密な計画のもと、絶対にバレないトリックで殺害した、はずなのにバレてしまった。そしてその人物は警察にも匿名で密告をし、そのせいで警察に目をつけられてしまい証拠が見つかり拘留されます。
拘留されているなかで密告者が誰なのか、なぜ完璧なトリックが見破られてしまったのかを探っていく、という目線が斬新でおもしろい。そして肝心の動機は最後の最後まで語られないので、どんどん読み進めてしまう作品です。

東野圭吾さんらしいなぁと思うのは、スキージャンプという特殊な世界が事細かに描かれているところです。前回のvol.1でも書いたように、どれほどの取材をしたらこんなに書けるんだろうと思ってしまいます。スキージャンプってテレビで放送されるような、ジャンパーが飛ぶ姿を前や横から見ているだけだとそれだけの情報ですが、この小説を読むとジャンパーの恐怖心やサッツ(踏み切って空中に飛び立つ瞬間)の感覚がリアルに描写されています。
そりゃ怖い競技だろうな、とは思っていましたが、活字ではあってもいざジャンパーの目線で世界に入るとよりその恐怖感を味わうことができました。

あと興味深かったのは、ジャンプ台の頂上付近で出番を待つ選手同士の駆け引きです。選手同士にはもちろん先輩後輩関係があり、お互いの戦績や前のジャンプの飛距離なんかを気にしながら、声をかけたりするんですね。時には聞こえるような独り言で相手にプレッシャーを与えたり。
テレビでオリンピックを見る時にも、あんなやりとりがあるのかなぁなんて思いながら見ることになるかもしれません。ちょっと目線が変わって面白いですよね。

そしてそして、本作は理系出身の東野さんらしく、スポーツ×科学×社会問題が裏テーマです。選手のフォームを科学的に分析する場面が多く登場します。正直、角度のなんとかがどうとか用語はよくわからないですし、小説にこんな挿絵が入ってるの見たことない!ていうような図が何度か出て、それを理解しようと思うと物理を学びなおさないといけないと思うんですが、その必要はもちろんありません。
重要なのは、スポーツをどこまで科学として扱い、競技の結果をどこまで人工的に操作するのかを考えることです。行くところまで行ってしまえば、それはドーピングと同じことなのでは?バレなければいいの?テクノロジーによって好成績を出せたとしてじゃあその選手の個性とは?


近年は、スポーツ用品メーカーがこぞってウェアやシューズなどの開発に莫大な労力を注いで、新記録の更新に選手や監督以外の多くの人が関わっていると聞きます。それがいいとか悪いとか、というよりもオリンピックが始まったローマ時代とはスポーツの存在意義が変わっているということだと思います。本作はその事実に翻弄された人々が描かれた作品なのだと、2回目に読んで感じました。

さいごに

じつは最後まで読み切らずにこのnoteを書きました。残りは週末に近所の温泉に行くので、旅館でゆっくりフィニッシュしたいな~と楽しみにしています♪

『鳥人計画』を読みつつ、オリンピックも楽しんでみてはいかがでしょうか。

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