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『放送禁止3:ストーカー地獄編』は「裏の裏の、そのまた裏」くらいまで思わず深読みしてしまう沼地だった【フェイクドキュメンタリーを止めるな!】

「昨今、はやりの、フェイクドキュメンタリーなるものについて、考えたきことがこれ多々あり、古今の名作をあれもこれもと鑑賞してみれば、深まる秋の夜はどこか恐ろし」

・・・などということをふと思いついて以来、フェイクドキュメンタリーの沼地をさまよっている私ですが、

今回は長江俊和監督の『放送禁止』シリーズの第三作を紹介させてくださいませ。

今回は「放送禁止3:ストーカー地獄編」の感想記事となります

実は、既に『放送禁止』シリーズの全作品をコンプリート視聴してしまった私、

必然、第三作の評価も、シリーズ全体の中での位置づけ、という感想から始めたいと思います。

ヒトコトで申し上げれば、その特徴は、

シリーズの基本スタイルが確立された作品となりましょうか

すなわち、この第三作を境目に、この後の放送禁止は、

一種の叙述トリック

すなわち、

善人だと思っていた筈の人物が、実は悪人であり、

悪人だと思っていた筈の人物が、実は被害者だった、

というのような、「見かけの映像での役割の裏に、正反対の真実がある」ことを最後に突き付けてくるスタイルとなります。

そしてそれがしばしば、「カメラで撮影している人物が、実は・・・」という、撮影者自身の肩書にすらどんでん返しを加えてくるので、ますます「放送禁止」シリーズは「叙述トリックだらけで油断できない」コンテンツとなっていくのでした。

その方針ゆえ、物語も、

これまでは導入されていたオカルト要素が完全に放棄され、

犯罪やらカルト宗教やらが登場する、「ヒトコワ」を基調にしていくこととなります。

【ネタバレあり!】「放送禁止3」のドンデン返しを考察する

しかし本作について考えるにあたり、最後のドンデン返しに触れないわけにはいかないですね。

そこで、以下、ラストのネタバレをしちゃいます。

ネタバレが嫌な方は、ここで離脱してくださいね。

それでは、ネタバレ5秒前!

4

3

2

1

、、、

では、語ってしまいましょう!

この「3」のポイントは、

ストーカーの被害者と思われていた女性は、実は加害者(というか、過去に殺人をして恋人を殺している)で、

ストーカーの加害者と思われていた男性は、おそらく、この女性への復讐のために雇われた人物

というドンデン返しなのですが、

「そんな複雑な復讐劇を仕組んだのは誰だ?」ということへの答えが、

どうやら、黒幕は、この取材を行っていた筒井令子というジャーナリスト本人だった

ということになります。

この唐突な展開を許容できるかできないかで、「3」への評価は変わってきちゃいますね。

まとめますと、以前に提示した以下の図で説明すれば、

「ストーカーに悩まされている一人暮らしの女性を取材にきたジャーナリストの撮影映像」という見かけの物語の裏に、
「取材のフリをして復讐に来たジャーナリスト(というか、ジャーナリストの肩書を利用して、復讐のターゲットにまんまと接近成功した復讐鬼の女)」の物語が出現する、というわけでした。

未解決の謎が残っている

しかし、いささか気になることもあります。

いくつか、私なりの考察を述べておきましょう。

・ストーカーが送り付けてきた写真の裏にあった「思い出してください!!」とかいった一連の落書きは、誰が書いたの?

私の考察では、筒井令子が自分で書いていた・・・となります。いやそもそも、初見の時から、「ストーカーの男は、なんだかまるっこいカワイイ文字を書くヤツなんだな・・・喋り方は『このやろー』とか『でてこいよ!』とか乱暴なのに?」と違和感がありました。まぁ、筒井令子が自分で書いたとしても、「思い出してください!!」みたいな、最後に「!!」マークをつけるオチャメさがなんか起きている事態にそぐわないんですけどね。。。

・筒井令子のプロフィールに「埼玉県で起きた殺人事件を取材」とあるのは?

これはちょっと意味深だが、けっきょくナゾ。Aさんの事件のことを調べていたのかと思ったが、Aさんは地下鉄の駅で自殺した、が公式な見解になっているので、「埼玉県の殺人事件」というのとは合わない。同「放送禁止」シリーズの他作品で起きた事件を示していたらめっちゃ面白いと思ったのですが、他の作品で起きた事件も、けっきょくは「真犯人は不明のまま」パターンで終わるものばかりだからなぁ。。。そう考えると、『放送禁止』シリーズの他作品とは特に関係がない、特に深い意味もないところだったのかもしれない。油断できないけど。

・死んだAさんの家族は、筒井令子のことも知っていたし、殺人犯が希美であることも知っていた?

知っていた筈。そうでないとすると、男の子が「新幹線がお父さんを殺した」と思い込んでいる理由がわからない。男の子は「希美がAさんを殺した」という話を「新完全ののぞみが殺した」と聞き違えて覚えているのでしょう。となると、Aさんの奥さんと、筒井令子は希美が殺人犯だと断定する話を以前からしていたことになる。ちなみに、Aさんの奥さんと筒井令子に面識があるのは、ラストで映る家族写真を見れば明白。しかしそうだとすると、筒井令子がAさんの家を訪問したときのやりとりはすべて演技だったことになり、いくらなんてもシラジラしさがあるが・・・

・ラストに筒井令子がストーカー男の手を取って走って行くシーンが挿入されるがあの意味は?

私にもさっぱりわかりませんw。本作、最大の謎となっているのではないでしょうか?

ただし、あえて「ありそうな」ことを考えると、

筒井令子のやっていたこと(人を雇ってストーカーのふりをさせて一人の女性を精神的に追い詰める)もまた、復讐のためとはいえ犯罪なので、筒井令子は最初から、カメラが回っている前で希美に犯罪の告白をさせ復讐の成就を確認したあと、世間から行方をくらます気だった。あのストーカー男は、実は筒井令子の恋人か何かで、「復習が成功したら一緒にどこかへ逃げよう」と約束していたのかもしれない。そう考えると、エンドクレジットでずっとパトカーのサイレンの音が鳴っている理由もわかりますね。

というわけで・・・

結論を言ってしまうと、ドンデン返しの効果はあったものの、

「もしそうだとすると、あのシーンは?あれ、あのシーンは?」と、

いささか、矛盾するような登場人物の言動が気になってしまう点が、本作には残り、ちょっとモヤモヤする。

ただし、『放送禁止』シリーズは、真実が明確になってスッキリする番組ではなく、「考察しても考察しても、なんとなくモヤモヤが残る」こと自体を売りにしているので、これでよいのかもしれません。

というのも・・・上記のような「残された謎」が多々あると、もうひとつの可能性も、視聴者としては、考えちゃいますよね?

「実は、さらに隠された真実があって・・・つまり筒井令子こそが『希美が殺人犯だ』と勝手に思い込んで希美を執拗に追いかけていたストーカーであって、けっきょく希美は無罪」という可能性も!

番組を作った側が、いったいどこまでの「可能性」を考慮していたのかは不明ですが、「裏の裏の、そのまた裏」まで視聴者に深読みをさせてしまうための本作の構成なのだとしたら、

こうやってネット上でえんえんと「考察記事」が生まれている事態そのものが、『放送禁止』の成功、ということなのかもしれません!


子供の時の私を夜な夜な悩ませてくれた、、、しかし、今は大事な「自分の精神世界の仲間達」となった、夢日記の登場キャラクター達と一緒に、日々、文章の腕、イラストの腕を磨いていきます!ちょっと特異な気質を持ってるらしい私の人生経験が、誰かの人生の励みや参考になれば嬉しいです!