見出し画像

得ることが出来なくなってから本当に必要だったものを知る。

 思い至ることができれば大抵のことは実現できてしまいそうな現代社会において、当たり前とさえ思っていたことが当たり前ではなくなってから半年経とうとしている。

 長い時間をかけて何かを成し遂げた後の飲み会や、お世話になった人の記念日を祝う会が消えた。臨場感を求めて全国のライブ会場を訪れていた人は、リモートで配信されるコンテンツを観たときに、嬉しさは感じるが、従来の満足を得られないことなどわかり切っているだろう。目の前で動いている人間を観たかったんだということに、嫌でも気づかされるのだ。

 自分の意思とは別に、楽しみにしていたことが叶えられなかった人は必ずいたと思う。それが持病の悪化であったり、不慮の事故であったり、自然災害であったりする。今回はそれが世界中に住む全人類共通の出来事となっている。

 視聴覚という人間が持つ五感のうちの2つからしか得られないということが、どれだけ人間の体験に与える影響が大きかということが、よく分かったのではないだろうか。残り3つの味覚、嗅覚、触覚は、その場所に赴き、直接触れて、感じて、味わうことでその体験に深みを与えていた。

 人が生きている以上、その体験を享受したいという気持ちは尽きない。だからこそ、エンターテインメントを止めてはいけないのだ。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?