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【まえがき公開】『絵本専門士アナウンサーが教える 心をはぐくむ読み聞かせ』

「なにを読んだらいいの?」
「いつも同じ本ばかり読みたがる」
「絵本に興味を示さない」
……そんなお悩みに、日本テレビの杉上佐智枝アナウンサーがこたえます!

「絵本と言葉」のプロがおくる、絵本の読み方・選び方

杉上さん初の著書となる『絵本専門士アナウンサー が教える 心をはぐくむ読み聞かせ』(小学館クリエイティブ・発行)が発売となりました。

絵本専門士の資格をもつ杉上さんは、その絵本に関する知識とアナウンス技術を活かした読み聞かせ活動を行っています。

だれでもできる読み聞かせのコツはもちろん、ワンランクアップしたい人に向けた発声のポイントから、読む人や場面に合わせた本の選び方まで、ぎゅぎゅぎゅっと情報がつまった1冊となっています!

デジタルコンテンツがあふれる今だからこそ、紙の絵本の温もりを親子で感じてほしい……そんな杉上さんの思いがつまった「前文」を、今回はご紹介いたします。

*以下、『絵本専門士アナウンサーが教える 心をはぐくむ読み聞かせ』より前文の抜粋です。

気負わず楽しい親子時間を、絵本とともに

絵本を読む時間は、かならず子どもの温もりとともにあります。 

膝の上や、両脇にその体温を感じながら読む時間は、親にとっては「そのとき」しかないコミュニケーションであり、同じリアクションは二度とない宝物です。そして子どもにとっては、その濃密な時間に感じる物理的な温もりが、心の温もりにつながり、大人になって言葉の花をたくさん咲かせるための土台となるのだと思います。
そして絵本って、おしゃれなお店のパンケーキではなく、お母さんのつくるホットケーキのような存在だと思うのです。 
日常に寄り添っているもの。何度でも飽きなくて、大人にとっても子どもにとっても、懐かしく、愛おしく、心の真ん中がほっと温かくなるような。 

そんなことを思いながら、8歳と5歳の2人の子どもを育てています。そして「惑わず」の年代に入ったひとりの会社員として、新たなステージを模索していたとき、ふと気づいたのです。絵本の読み聞かせは、アナウンサーの仕事に通じるところが多いことに。
たとえば、ナレーションや朗読。「うまく読むより、下手でも伝わること」これは、読み聞かせとアナウンスメントに共通の精神です。
「そうだ、絵本の読み聞かせを、テレビ局の舞台とドッキングさせていったら、おもしろいのでは?」と思い立って勉強をはじめたのが、「絵本専門士」の資格でした。仕事に活かす以上、説得力のある資格を、と思っていたので、文部科学省所管団体が主宰する「絵本専門士」の資格に出会って、受講資格を得ることができたのは、本当に幸運でした。一時期、著名人が思い出の絵本を紹介するミニ番組のナレーターを務めていたことが、こんな形で活きるとは……。

「絵本専門士」は、簡単にいうと「絵本がある生活のナビゲーター」でしょうか。読み聞かせ会やワークショップの企画や運営をしたり、地域の読書推進活動をバックアップしたり……。絵本の魅力を、より多くの方に知ってもらうための活動の専門家といってもいいかもしれません。 

2018年の5月、私なりに「絵本専門士アナウンサー」としての活動をスタートさせました。
「世界一受けたい授業」で現役アナウンサー初の講師役といった、思いがけない日向の仕事から、絵本を取り入れた研修の運営という縁の下の力持ち的な仕事まで、予想をはるかに超えた広がりとつながりがありました。そのなかには、全国の絵本専門士ネットワークの情報に助けられて実現した企画も数知れず……。この本にも、その情報はふんだんに活かされています。 

私が大好きな絵本の一節に、「だって こどもが しあわせなときは みんなが しあわせなときだもの」(『サンタクロースってほんとにいるの?』より)という言葉があります。ひとりでも多くの子どもを幸せにすることで、周りの大人も幸せになってもらいたい……。活動をはじめた当初はそう思っていましたが、今は少し変わりました。子どもがしあわせでいるためには周りの大人自身がまず笑顔でいなければいけない、だから頑張りすぎなくていい、まずは自分が楽しむことこそ大事だな、と。

だからこの本も、立派な専門書ではなく、いちアナウンサーのアナウンス研修日誌であり、絵本遊びの記録でもあり、読み聞かせの手抜き指南書でもあります。
絵本を読むのがしんどいときがある……、子どもが聞いてくれない……、そんなときは、絵本で遊んでしまいましょう。我が家で行っている、絵本の世界 をリアルに体験する遊びも、恥ずかしながらお伝えしています。寝てほしいとき、下の子が産まれたとき、戦争について考えたいときなど、場面別のおすすめ絵本を挙げたら、巻末のブックリストは100冊を超えました。
もちろん、お子さんのいる方だけではなく、声を生業にする(したい)方には、ちょっと専門的な読む技術を。「読むこと」と「伝えること」はどう違うのか? アナウンサー生活約20年でたどり着いた、私なりの答えを出しています。
アナウンス研修に使う絵本リストや、読み聞かせ会でのトークのコツ、矯正歯科医の先生とタッグを組ませていただいた「発音・滑舌改善トレーニング」も一部掲載。
そうです、ちゃんとしたプロの寄稿やインタビュー、責任取材も入っていますので、ご安心くださいね。

今回の出版の話をいただいたときには驚きました。私個人は、本など出せるような立場でもないし、知名度もありません。「日本テレビアナウンサー」の名刺があればこそ、細々とやってこられただけです。一方で、絵本や読み聞かせについても、専門家がたくさんいらっしゃるなか、自分が語るのはおこがましい……、と悩みました。
ですが、「アナウンサー」×「読み聞かせ」という、それぞれの果実のいいとこどり、私が知ることができた「ミックスジュース」の味わいを、少しでもご紹介できたらと思っています。

親子が一緒に楽しめるメディア。時を超えて記憶と温もりをつなぐメディア。その思いを、また次の大切な誰かに手渡せるメディア。そんなメディアは絵本だけだな、と思いながら、いちテレビ屋が書いた本です。

肩の力を抜いて、片目をつぶって、読んでください。少しでも、どなたかに 「ふーん」と思っていただけるなら、これほどうれしいことはありません。

編集:市村

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