聞こえない声

泣いて、声を上げ
泣きたいのに
涙は胸の中に押し込まれて
上手く出てこない

テレビの四角い箱から
薄っぺらくて
妙にうるさい雑音が
絶え間無く流ている

意味が分かるような気もする
全く何も分からない気もする

画面に現れる姿も笑顔も
青白く、華奢で
その生死すら分からない

生霊のようだ

何もできないわたしは
知らない場所で
できる自分になるために
毎分毎秒を生きている

それ程に頼り甘えて
日々を暮らしてきた
我侭な自分は
ため息すら躊躇う

ひとりで居ると
少しずつ落ち着いてくる
同じ場所に居ても
別々の宇宙に居る
気にしなくて済む

震える手も
焦点が合わない目も
ふらつく足元も
誰もわたしを気にしない

うるさい
うるさい
うるさい

目を閉じて
時間が過ぎるのを待って
目覚めた時に
笑えたら
いいなと思う

けれど
アスファルトの上で
奪われた生命の声は
もう聞こえない

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