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【goodな仲間 #9】マナビファクトリー

今回のgoodな仲間は、マナビファクトリーさんです!
経済的に苦しい家庭で生活する子どもたちを対象に、渋谷と品川で学習支援・居場所支援・食糧支援などの活動を行うマナビファクトリーさんについてご紹介します。
団体の活動や設立に至った経緯、渋谷に対するご意見を、同団体の理事長を務める石井光生さんに伺いました!


マナビファクトリーさんについて

石井さん:活動内容は学習支援と居場所支援、食糧支援です。生活困窮世帯の子どもたちを対象に行っています。中学生が中心ですが小学生も在籍しています。学習支援としては、進学塾のような成績を伸ばすことが目的ではなく、学校でカバーしきれなかった部分を学びなおすことや、学校で出された宿題のサポートをすることがメインです。

学習支援の様子

設立までの経緯

石井さん:一番遡ると、私が中学時代は勉強が苦手だったということがあります。高校では学びなおすところからスタートし、勉強のサポート体制がしっかりとありました。「僕と勉強は全く関係ない」と中学の時はずっと思っていたのですが、サポートやきっかけなどの外的要因があることによって人間は変われるんだなということを感じた時期でした。

大学時代は、塾講師のアルバイトをする中で”教える”ということの楽しさを知り、高校教員の道に進みました。6年間の教員時代は、大変でありつつも非常にやりがいがありました。

一方で、そこは私立の高校だったのでお金がかかる学校でした。入学当初は家計に問題がなくても、例えば親御さんの失業や離婚、死別などが原因で本人の能力と関係なく辞めてしまう子や、本当は進学したかったのにそれを断念して就職の道を選ぶような子たちを見ていたときに、もっと人のために役に立てることってないんだろうかと思いました。教員という仕事が全然物足りなくなってしまったんです。しかも教員を6年やっていると”先生の顔”になってきちゃうんです。「先生」といわれる仕事で、少し傲慢さが出てきたことを感じて、その自分がとても嫌でした。自分が思い描いていた自分像とかけ離れたところにいると気づいたときに、この仕事も今すぐ辞めたいし、もう嫌だなと思いました。でもそれを誰にも相談できませんでした。

つらい時に頼れる存在があることの大切さ

そんな時に唯一相談できた高校時代の親友がいました。その彼も僕も元々家柄はクリスチャンなんです。ただどちらも教会も行かないし神様も信じていないしいわゆる放蕩息子でした。でもその彼も少し前に、人生でつまずいたことがあって、教会に行きだしていたんです。「お前も行こうぜ」と誘われて行ってみたら、僕の思い描いていたような感じとは違って、そこにいて助けられた感覚がありました。大人になっても助けてくれる存在を求めて良いのだということに気づきました。それはその友人であったり教会の牧師であったり、僕的に言うと神様であったり…この出来事が私のターニングポイントだったと思います。

子どもたちの立場に寄り添う

「隣人愛」というのは僕もずっと知っていた言葉ではあるんですけど、隣人を愛するって、人に優しくするってことでしょ?くらいに思っていました。本当にその人の立場に寄り添って愛するということをその友人に初めてしてもらったんだなって思った時に、これを求めている人ってきっと世の中にたくさんいるだろうな、今度は僕がいろんな人の隣人になれたら良いなと思いました。

僕の中ですごく困っているだろう、孤独を感じているだろうって思った対象として、高校時代や塾講師時代に関わってきた子供たちがすぐ頭に浮かびました。学習支援などをしてみようと思い、この業界に飛び込みました。

最初は都内の NPO 法人に正社員という形で就職しました。教師しかしてこなかったので、いきなり自分で立ち上げるとなるとなんの足がかりもなく、NPO ってどう作るのかも知らなかったので、とりあえず修業がてらそこで働いてみようと思いました。教員経験があったので主任という立場を与えてもらい、そこで6年間働きました。塾長やエリアの統括などを経験する中で、やはり学習支援という仕事が僕はすごく好きで、とても価値のあることだと思いました。そこでたくさん仲間を作ったり、NPOの運営方法を6年間学ばせていただきました。その後自分が当初思い描いていた独立を果たし、このマナビファクトリーという団体を一昨年の 11 月に発足しました。

完全無料への挑戦

元々完全に無料でやるということはあまり頭にはなかったんです。多少は月謝をもらおうって正直思っていました。前に勤めていたところもちゃんと月謝をもらっていたので、そういうものだと思っていたんです。実はそういうところはよく「実質無料」って謳うことが多いんです。どういうことかと言うと、生活保護だったら塾代助成や、 生活保護じゃなくても一定の収入未満の家庭であれば東京都の受験生チャレンジ支援貸付事業というのがあって、それを使えば無料になる範疇なので「実質無料」だと謳っているところを何個か知っています。

でも僕はそれが嫌いなんです。なぜかというと、僕はまだまだNPO のやっている塾のレベルは決して高くないと思っています。それはもともと僕が塾で働いていたのでよく感じることなのですが、塾講師ってとても鍛えられているし、みっちり準備してそれを子供達に提供しているプロフェッショナルなんです。でも僕は無償のボランティアの方達にそこまでは依頼できません。つまり、うちに限らずいろいろな NPO法人の学習支援は教育のレベルとしては決して高くないんです。うちが無料であれば、そこで使わなかった助成金の分で、塾の夏期講習や冬期講習を受けることができるかもしれません。その方が子供達にとっての選択肢が広がると思っています。うちはあくまでもサポートだと思っているので、仮に併用して一般の進学塾にも通っている方がいるのなら、そこの宿題もうちでサポートしたって良いと思っています。だから有料の形でやるというのはすごく違和感がありました。

いろいろ調べてみると、無料でやっている NPOが実は少しありました。例えば、八王子につばめ塾というNPO法人さんがあります。そこがおそらく完全無料塾の先駆けです。実際にそこの代表の方に、僕と副代表の細田の 2 人で会いに行ってお話を聞き、教室の様子などを見学して、クオリティの高さにすごく衝撃を受けました。つばめ塾は完全無料がポリシーであり、全て寄付で運営されていて、代表の方はアルバイトを何個も掛け持ちされているとのことでした。「この人すごいなあ」と思った時に「でもこの人ができるなら僕もできるはず」と思って完全無料の形にすることを決めました。

食糧支援の始まり

最初は正直、子ども食堂的なことは全然考えていませんでした。僕の得意分野は学習の部分だけだと思っているし、食事の支援は大変だと思っていました。実際、品川と渋谷で活動をしていて、品川の方はお菓子とかを提供するぐらいに止まってます。でも渋谷の教室では、毎回みんなで一緒に晩ごはんを食べるということをやっています。なぜ始まったかというと、食糧支援の活動をしていた青学OGのボランティアさんがきっかけです。彼女が「学習中に子どもたちはお腹を空かせているし、せっかくなんで私カレーとか作っても良いですか」と言ってくれて、やってくれるならぜひと。一回やっちゃったら「今日はないの?」ってなるよねという気持ちもありましたが、 実際好評でした。晩ごはんを出すということは本人も喜びますし、親御さんも夜まで働いていたりするので、ここで食べてきてくれることがすごく助かったみたいでした。だから続けていけるなら続けていこうということで、しばらくは彼女や私、妻が教室でカレーやシチューなどの簡単な料理を作って提供するということをやっていました。

そういう話を聞きつけてくださった、他の企業さんが「うちで作ったもの提供しますよ」みたいな事が始まり、1年ほど前に継続できる運営方法が確立されました。やってみると子供達の関係にも変化がありました。というのは、品川の教室はまだまだ子供達同士の横のつながりはほぼないんです。黙々と勉強していたり、スタッフとはちょっとおしゃべりしますがそこにとどまる少しおとなしい教室です。でも渋谷の教室は食事をとることで、みんな違う中学なのに友達になったり、ある意味無駄話も増えましたが、すごく賑やかな状況になって居場所感が出てきました。お盆休みにも「もし来ないなら教室を閉じちゃうけどどうする」と聞いても、「行くんで」みたいな感じの子が結構居ます。塾なんて普通はサボりたい。でも来るというのは、その子たちにとっての「居場所」になりつつあるのかなと感じてます。そこは途中で大きく変わってきたところかと思いますし、いい変化だったなと思っています。

品川でもこのような活動をしたいですが、場所がありません。渋谷は僕が通っている教会が運営しているフードバンク渋谷というNPOがあり、僕も教会員なので好意で場所を使わせてもらっているんです。本当は借りたら家賃が12 万ぐらいかかるんです。それを立ち上げ2年目のうちみたいな団体が払っていくのは難しいです。品川ではまだまだそういう繋がりはできてなくて、助けてくださる団体さんや企業さんもたくさんありますが、そこまでには至ってないのが課題です。

▶︎【goodな仲間 #7】フードバンク渋谷さんの記事

これからの活動のために

石井さん:子どもたちにいろいろな体験をさせてあげたいという思いがあり、今も食事を提供するだけではなく、月に一回はみんなで作る日を設けています。
また、今年は遠足に行こうということで大々的には難しいですが、みんな小中学生なので近場の大学に行ってみようとなり、青学の学祭に行きました。大学と自分たちのイメージがかけ離れていて、自分たちってどうせ勉強できないから関係ないとか、大学ってすごく勉強が好きな人が行くような場所なんじゃないかとか、みんな思い込みがあったので、イメージを打ち破ってほしいということもあって、この機会を作りました。

夏休みには、みんなでホットドッグやポップコーンを作り、プロジェクターで大きく投影して映画鑑賞会をしました。他にも英語を推進している学生団体さんが来てくださって 2 回ほど英語のアクティビティもやったりしました。

これからも体験をどんどん増やしてあげたいと思っています。でも僕もそのアイデアがまだまだたくさんあるわけじゃないですし、実際どこまでできるんだろうと模索中で、いろいろな層の助けが欲しいです。アイデアも欲しいですし、実際にそれを助けてくれる支援も欲しいと思っています。

誕生日会の様子

石井さんが考える”goodな渋谷”

渋谷の良いところ

石井さん:渋谷と品川、2つの自治体に共通しているのはフットワークが軽いことだと感じています。区役所の方はすごくフットワークが軽くて、どんどんいろいろなところと繋ごうとしてくれます。現在は、とんかつのまい泉さんや新宿の高島屋さんも支援してくださっています。まい泉さんは、食品廃棄を何とかしたいという思いと SDGsや困っている人たちに何かしたいという思いがあり、でもどう取り組めば良いのかすごく悩まれているらしかったんです。それを渋谷区の方がつないでくださいました。今日(※取材は2023年12月)はクリスマス会をやるのですが、まい泉のオードブルが届けられる予定です。つながるのが早いのは渋谷の良いところだと思います。新宿の高島屋さんもスッと繋がりました。そこはフードドライブを従業員の方々がされていて、集まった食品をうちにくださっています。そういう大きい企業や組織が小さい団体とちゃんと繋がるってすごいなって思います。

渋谷がもっとよくなるには…

うちのキャパもありますが、もっと情報が行き届いてほしいなと思います。困ってる人たちは絶対もっとたくさんいるはずなので…でもまだまだ渋谷の教室の生徒が少ないのは、情報が行き届いてなかったり、親御さんまで響いてなかったりするのかなと思うので、何か上手いツールがあれば良いなと思っています。これは渋谷に限らずですが、本当にそれが届くべき人のところに届く仕組みがもっと出来ていくべきだと思います。届けなきゃいけない人が情報弱者なんです。いろんな情報に繋がるための時間の余裕が無ければ心の余裕も無い人たちがすごく多いので、もっとそこがライトに繋がれるようになると良いと思います。

理事長の石井光生さん

マナビファクトリーさんからのお知らせ

石井さん:うちみたいなところに支援できる方や何かアイデアのある方はぜひご連絡ください。場所を提供できますよっていう方もぜひ!!
また、もし困っている人たちが身近にいたら、ぜひつないでいただきたいと思います。


マナビ無料塾 大井スペース
東大井区民集会所1階 (東京都品川区東大井2-16-12)
JR大井町駅より徒歩15分 or 京急線立会川駅より徒歩5分
毎週土曜日 17:00~19:00

マナビ無料塾 代々木スペース
東京都渋谷区代々木(場所の詳細についてはお問い合わせください)
JR代々木駅より徒歩5分 or 北参道駅より徒歩5分
毎週火曜日 18:30~20:30
毎週土曜日 17:30~19:30

▶︎マナビファクトリーさんの公式サイトはこちら



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