人生で初めて救急車を呼んだ



と思う。
弟が小さかった時に一緒に遊んでいたら、弟が上顎を怪我してしまって母親が呼んだことはあったけど、多分自分で呼ぶのは初めて。


8月のとある日、かかりつけの歯医者へ向かって歩いている時だった。
いつもならバス通りを歩いて行くんだけど、そういう時に限って一方通行の裏道を通ろうと思ったのが分岐点だったと思う。


数メートル先をおじいさんらしき人がよろよろしながら歩いていた。マスクしてなくてなんだか危なっかしかったから、少し距離を取りながら追い抜かそうとした。あーあ、荷物落としちゃってるよ。


と、思ったその時だった。
おじいさんが後ろ向きにドーンと倒れた。
だいたい後ろ向きに倒れるときって尻餅をついたり腰を打ったりすると思うけど、そのまま真っ直ぐ。


えっ?倒れた…
でも起き上がれてないし、車道めいっぱい倒れちゃってるし、後頭部から血がポタポタ垂れてる… 歯医者行くんだけど、え、でもこの人放っておいていいのか?こんなご時世だから触るのもためらうし……

とこの時点でいくつもの思考が頭を駆け巡った。でも気がついたら身体が動いていて、「大丈夫ですか?血が出てますよ!」と声をかける。おじいさんまだ起き上がれず。
たまたま居合わせた周りの誰かが「救急車!」と言った気がする。車来ちゃってるけど、一通だったのが不幸中の幸いか…
私とほぼ同時に倒れるところを目撃していた別のおじいさんは、携帯を持っていないらしいので私が電話することに。
警察は110番だから救急は119、と電話する時はやけに冷静だった。


「○○(事件だっけな)ですか?救急ですか?」
「救急です!」


まで答えたのはいいものの、近所とは言え住宅街で住所がわからん。自販機に住所があれば目印になると聞いたことがあったけど、書いてない!もう!全自販機に書いておいてくれ!
通りがかったお姉さんが「この裏に○○交番ありますよ」と教えてくれたけど、そんな名前の交番はないと言われる。電柱に住所もない。
少し先の通りに出れば交差点名はわかるけど、慌ててしまっていたので、近くの商店で住所を聞いた。


通りかがりの見ず知らずの人が手分けして交通整理とかおじいさんへの声かけをしてくれていたので、「救急車呼びました!」と辺りに向かって叫んだ。
救急車は10分くらいで来たと思う。待ってる間も「こんなご時世だから(来るの遅いよ)ねぇ」と世間話をしたり、騒ぎを聞きつけたおばあさんとかに事情を説明したりした。
幸いおじいさんの知人も通りがかったらしく、「動いちゃだめだよ!」とか話しかけていた。この場にいた人全員知らない人だったけど、なんか世の中捨てたもんじゃないなと思った。


たまたま出くわした非番のお巡りさんも応援を呼んだりしてて、これは本当にツイてた。
そうこうしていると救急車が来たので、案内する。運転手の隊員の方に「電話した者です」と伝えると、すぐにおじいさんの対応にあたってくれた。
余談だけど、祖父と親戚がレスキュー隊員だったので、こんな感じで働いているのかなと思った。


目撃者である私とおじいさんが呼ばれて、応援で来たお巡りさんに名前とか職場とかいろいろと聞かれた。
「通報のご協力感謝します」と言われて、そっか、協力したのかと変な実感。
でも、その場を離れてからもしばらくドキドキしていた。非日常的だけど、こういうことは何回もない方がいいんだよな。

という備忘録。


ちなみに、歯医者は予定の時間を数分過ぎてたけどキャンセルの電話をして、別日に予約し直したのでご安心を。

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