生きている、多分。重い瞼を持ち上げると真っ白な空が広がっていた。いや、違う。よく見るとでこぼこしている。壁紙だ。きっと天井を空だと見間違えた。何時間眠っていたのだろう。自分が今部屋にいるのか、外にいるのか、分からないほどだから、かなりの長時間眠っていたに違いない。そんな考え事をしていると、ふと記憶が戻ってくる。思い出す。あの頭の痛みを。脳が新しく心臓の機能を備えたかのような、傷口から血液が溢れて止まらない時のようなあの痛みだ。もちろん、頭から出血している訳ではないし、脳から出血した訳でもない。2ヶ月か3ヶ月に1度は決まって、この痛みと再会する。いわゆる偏頭痛というやつである。

子供の頃は、この痛みで死んでしまうような感じがしていた。幼い子供には、この痛みは痛すぎた。痛みを感じても、薬を飲むか目を閉じるかしかできることが無かった。今では、予防するための術をいくつか身につけて大分楽になった。頻度は減ったが、今でもこの頭痛に悩まされることがある。それが、昨日である。

自分の考えすぎかもしれない。目を閉じて、考えることをやめてしまえば、もしかすると痛みは無くなるのかもしれない。何度死ぬと思ったことか。何度脳から出血したと思ったことか。結局、本当に死んだことはないし、脳から出血したことなど一度もない。

そんなことを考えていると、「ただいま」という声と共に誰かが家の中に入ってきた。誰なのかスッと思い出せなかったが、とりあえず「おかえり」と返した。すると、バタバタと足音を立てながら、その人物は私の布団の近くまで駆け寄ってきた。

「僕のことが視えるのかい?」

そいつは、アニメや漫画にありそうなこのセリフを、まぁまぁ感情のこもった声で呟いた。「こいつサムイやつだな」と思ったと同時に、驚いて、腹筋に力を入れ、見上げてみるとそこには緑色の物体が立っていた。


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