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会いにいくよ

一人で東京をぶらぶら歩いてたときに、ふとなんか大事なことに気づきそうな感じだって思っていた。しばらくぶらぶらを続けると、うーんわかんない。ってなって、そのうちポンと出てくるだろうと四畳半の脳みその片隅にそっと置いていた。

お家に帰る夜の車窓の真っ暗な風景を見て、そっと片隅においた何かを部屋の真ん中へ置いて、正座して、考えるでもなく、じーっと待っていた。気づいたら京都についていて、外は雨が降っていた。

お家に帰ると子供達が「おかえり〜」とジャレついてくる。明日の学校の準備を手伝う妻も振り返って「おかえり」。なんかいつも笑顔でおかえりって言ってくれるなぁと思いながら、洗濯カゴに服をつっこむ。

お風呂を沸かして、子供達あんなことがあって、こんなことがあって、パパも東京でこんなことがあってさーって、お話をする。暑くなってきた!といってジャバーっと子供達が先に出ていく。ぶくぶくぶくと顔半分しずまって、なんだかもう少しでわからなかったことがパカっと開きそうだと感じた。

風呂上がりに猫たちがスリスリしてきて、おかえりといってるようだ。
ただいま、とよしよしx3びき。パジャマに着替えてスッと寝た。

翌朝子供達を見送って、いってらしゃい、いってきます。
パタンと家の玄関が閉じたときに、僕の中のわからなかったものの扉ががちゃりと開いた。

あぁ〜そうか、僕は会いに行きたいんだ。

仕事とか、お金とか、暮らしとか、いろんなことがそれぞれ、生きてる人の数だけあって、それは全部ないまぜで。満杯の電車とか、足早に過ぎてくサラリーマンとか、お店に誘うお姉さんとか、ランドセルを背負う子供とか。

そういう風景を東京でぼうっと見ていて、みんなどこにいくんだろうって考えてた。そのうち僕はどこへいくんだろうって考え出して、何かわからないものに出会った。

友達も、お仕事一緒にする人たちも、家族も、猫たちも
僕はみんなに会いたいんだって、気づいた。それだけだって。
ただいまも、おかえりも、久しぶり!も頑張ってね!もまた会おうね!も。
こんなことがあってさ、すごい大変でさ、でもすごい幸せでさって。

会えなかった時間の、みんなにあったことを聞いて
今、自分がここにいることを確かめてるんだなって思ったのです。
だからひとりぼっちだと自分がどこにいるんだろう、どこにいくんだろうってわからなくなるんだけど、誰か大切な人たちに会ってるときに、自分ってばここにいるんだなって自覚する。

だから僕はいろんなところに会いにいく。
むしろ、会いにいくことが僕が生きていることなのかもしれない。
あの街も、この街も、あの人も、この人も。
やー!と手を振って、わいわい話して、またね!ってぶんぶん手を振って。

そうだ。打ち合わせの終わりに、松倉さんって別れ際、手をぶんぶん振りますよね、ふふふって笑われた。え、変ですか?って答えたら、みなさんお辞儀をしていくんだけど、松倉さんだけ手を振って笑顔だから、仕事の打ち合わせなのに会えてよかったなぁみたいな気持ちになるので素敵ですって。

言われるまで全然気づかなかったけど、たしかにいつも手をぶんぶん振っているなとおもった。じゃあ、またね!って仕事なのに旅先で出会ったみたいな感じがいつもあって、多分ビジネスマナーがなってないだけなんだけど、どんだけ偉い人でもそれをしちゃう。

いいのかなぁ、わるいのかなぁ。でもこれで良いやと思った。
だから今日も明日も明後日も、会いにいく。みんなの話を聴きながら、僕の今を確かめにいく。みんな、元気かな。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。