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大学生は自分の先生を探すべき

以前、大学の先生をしていたとき、「先生の学生時代と、私たちとで違いはありますか?」という質問があった。
その時、たしか「しこたま酒を飲んでました」なんてことしか回答できてなかった…間違ってないんだけど、もっと違うことがあったことに気付いた。

僕が学生の頃は「自分の先生を探しに行っていた」というのが一番大きい違いじゃないかと今更でごめんだけど気付いたのです。先生探しに行くってどういうこと?って思うかもしれませんが、高校受験も、大学受験も勉強から逃げて推薦でスムーズに大学まで行けるルートしか選択肢ないという決断をなぜか中学の時に下し、わたくし人生で受験経験ゼロなんです。

大学の附属校に入学し、そのまま大学の学部を選ぶ。高校の僕といえば、とりあえず北海道を出れたらいいやってくらいだったので選んだ学部も比較的人数も多く学ぶことも幅広いところでした。

大学に通って1ヶ月くらいは楽しいんですが、ふとキャンパスのベンチに座って周りを眺めていると、本当に楽しいだけ、お酒飲んで、女の子と遊んで、麻雀でもして、女の子のケツおいかけてる間に4年間終わってしまうなって天啓のように思ったのです。急に与えられたそれなりの自由とお金のない困窮で考える時間だけは無尽蔵にあった時期でもある。

その頃、京都で出会った小菅という芸大のおしゃれで色々アートやデザイン、ファッションを知った男と出会う。彼は京都造形芸術大学に通っている一年生でお茶をシバいていると「一回、うちの大学遊びにおいでよ」という一声でついていくことに。

京都には単位互換制度という異なる大学間での講義受講が可能なプログラムがあり、まずは自分がいた大学の面白そうな講義を色々覗いたりしていたが、あまりしっくりこず、他大学を探そうとしていた。その流れで芸大の選択肢は当時の僕にはなかった。

当時できたばかりのアートプロデュース学科(たしか1、2年目)に遊びに行く。ついでに講義も潜りで聴講して帰ろうと思って入ったのが後藤さんこと後藤繁雄先生の講義だった。もうなんか1分1秒全部知らないこと新しいことかっこいいこと、僕は心の中で「この人だ!」と叫んでいた。

結局僕は大学生時代、金閣寺あたりの大学から、銀閣寺あたりの大学までチャリを激走させ通学しつづける。大きい声じゃないえないけど、芸大の学費払うお金ないから、こっそり聴講させてもらうスタイルの最前列で聞いていた。(このお返しになるかわからないけど非常勤で6年間働いて返したつもり)

サバイブすること、それには生きる術を企てること、次に武器がいる、編集を学び、言葉がクソだって気付いて、毎日文章を書き出して、デザインもしないとだとイラレ、フォトショを独学で学んで、展示の設営をしたりなんだり、本当色々おもしろいことだらけ。新しいことを始めるとすげーやつらにたくさん会える。年齢全然変わってないのに何段も上の階段を歩いてる。

ちくしょう目と思いながらちょいちょい上を見ると、もう太陽の光に影が消えそうなところに先生がいる。そんとき、せめて声が届くところ、できれば肩を叩けるところ、願わくばその先の風景を僕はみたいと思った。学生の分際で。笑

子供が初めてパンクを聴いた衝撃というか、そういうものをもたらしたのがこの先生。出会いも運としかいいようがない。けど、出会えてしまった。間違いなく僕の人生を明確に動かした人である。先生わかってないと思うけど。先生のおかげです。

今から15年ほど前の話です。ずっと焦って周りのことなんて考えずに突っ走ってこれたのは、お前らここまでこれるのか?っていう背中だけをみてこれたから。これに尽きます。

僕と学生のみんなと違うのはそこだと思います。お酒はおまけくらい。
自分に何が足りないか、わからなくても、なんかが足りてないってことがわかっていれば次にやることは、行動すること。その有無だと思います。僕は僕の先生を探しに行きました。出来るだけ大きのことを盗んで、自分でしかできないハイブリッドな未来を夢想して、常に何が足りないのかを問い続け過ごした4年間だったと記憶している。

学生はまだ空っぽな器。そこに何を注ぐのかはあなた次第。
別に単位にもならない講義に時間を注ぐ意味は何かを考える。
与えられた選択肢の中で注いだ先にどんな自分がいるか考える。
僕はそれが所属する大学じゃダメだと気付いて外に目を向けただけ。

初めて先生の講義を受けた時、嬉しくて実家に電話したのを思い出した。
母親にすごい人に出会った!この人のところで学ぶわ!って伝えて、あまりに嬉しそうな連絡だったのか「その先生、スバルの人生を変えたのかもね」って笑っていた。たぶん、あの瞬間から舗装された道から藪の中に笑顔で進み出した瞬間なのかもしれないなぁ。

あの出会いがなかったら、今僕はどこで何をしているのだろう。
15年前の俺、いい選択だったな!ありがとう!

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。