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君たちの魔法

夏休みも残りわずか。休みに退屈しだした娘を見て「お買い物行くけどついてく?」と聞くと笑顔で「いく!!」と返してきた。
大きな台風が四国に上陸した頃、まだギリギリ京都はお出かけできそうな天気。二人してちゃっちゃと着替えて地下鉄に乗る。

横断歩道で自然と手を繋いでくる娘が、「パパとお買い物いくの久々!」とニコニコの笑顔で見上げてくる。じいじとばあばからもらったお小遣い握りしめて街におでかけ。

地下鉄を出ると急に夕立。あまりの雨量に娘と笑う。
どうするか、これ〜と相談しながら「突っ込んじゃおうか」と戦場に向かう真剣さで雨空を睨みつける娘。よし、いくか!と二人で突っ走る。

きゃーと言いながら、傘をさす観光客を交わして走り抜ける。
手をぎゅっと握って、よけてよけてーと人混みをモーゼのようにかきわける。振り返る日本人や外人が笑顔で僕らを見送る。

途中娘が足を滑らせて、ぎゃーーとすっ転びそうなのをまだまだ軽い娘を片手にぶら下げて走る走る。娘も楽しくてずっときゃっきゃ騒いでる。
走った意味ある?ってくらいずぶ濡れで商店街に入った頃に雨がスッと止んで娘が地球に突っ込む。なんでやねん!

大変だけど、楽しかったね。楽しかったねーまた雨降らないかな?虹出るかな?と急なかんかん照りの空を見上げる。
これ、すぐ乾くかもねといってぶらぶら歩いてるうちにカラッカラに乾ききった僕と娘。

これはアイスだな。サーティーワンだな。っていうと、目を輝かせてしーっと人差し指を口の前に。秘密の合図。妻と息子には内緒でアイスを一緒にほうばる。

キンキンに冷えたアイスを食べながら、これが一人だったら「雨めんどうくせぇなぁ」と悪態をついていたのだろう。ついてない1日だと嘆いていたかもしれない。なんだか子供達といると、大変なことも苦しいことも全部が新しく感じる。

これは君たちの魔法なのだな。
何才まで、その魔法の杖を僕らに振ってくれるのかわからないけど。
僕らがいうファンタジーみたいな世界が君たちの日常なんだな。
すべてが新しくて。すべてが美しい世界なんだろう。
その世界をおすそ分けしてもらった夏のとある日。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。