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退屈な今を変えるのは、いつだって自分だ。

年末年始の休みは31日時点でやることが付き、1日にはいつも通り8時には目を覚ましてしまう。改めて自分の仕事は好きなことを仕事にしているのだと思う。依頼されていた日本酒のネーミングやコンセプトをこねくり出す。こういう時間はノビノビとできる。

何故今のような仕事に至ったのかを取材で聞かれることが多い。
アイデアを考える仕事は0から1を産むものだと思われているが僕の頭の中ではそういう解釈ではない。この仕事に至る出発点は高校生の頃にある。学園祭の出し物が決まらず、教室の一番後ろの席で早く帰りたいなぁと参加意欲が浅い生徒だった。

ゴスペルをするというチームと、楽器演奏をしたいというチームに分かれていた。僕はどちらかというと楽器演奏の方がいいかもなぁと思いながらも、ゴスペルは嫌だ!という人もそれなりにいて黒白つかないままの時間が過ぎていく。

早く帰りたい…面倒臭さが何周もしたときにすごい冷静にクラスを観察することができた。一番後ろの席だという物理的な条件もあったと思う。お互いの言い分は平行線でこれを着地させれば帰れる。たったそれだけの理由で手を上げる。「和洋折衷って言葉あるじゃないですか、二つともやればいいんじゃないですか?」って発言したら、なんだか想像以上に受け入れられてゴスペルとバンドをすることになった。ゴスペルは西洋のものなので楽器演奏は沖縄の島唄になった。

さっきまで右や左と意見が分かれていた三十人近くの意見が、ふとした思いつきの提案で一つになった。この感触が今でも忘れられないでいる。そして、今そのような仕事をしている。

不思議なもので今の僕の仕事を決定づけた体験がその頃にあった。
その数ヶ月後に広告という世界を知って、そこには高度に作り込まれた表現の世界があると知る。これがアイデアか。誰にだってできて、誰にもできないと思われている不思議な世界にのめり込んでいく。

大学時代は月6本ものライブを4年間続けた。
楽曲はオリジナルで、よくもまぁお金が持ったなというか飽きずにやったなと思う。歌詞を書き、歌い、ステージに立ち続ける4年間。音楽センスは全然ないなと痛感する周りたちの猛者。今やみんなが知っているような有名バンドたちと対バンなんかしてたもので、もうリハの時点で白旗を上げるレベル。

ここでは言葉は心に届くことを体験した。
軽い言葉は届かない。想いが乗ればしっかり50人とか100人とかに届く。
不思議な体験だった。人に想いを伝えること、それで何かが変わることを実感した。1000人とか学祭のトリとかの大ステージであれだけの人を暴れさせることができたとき、僕ではなく表現の強さを知った。

それは同時に表現しなければ、伝えようとしなければ永遠に届かない想いでもある。

もうこの辺りで僕の原型は完成されいたと思う。
そのあと、卒業間際に1ヶ月東京の屋上で0円で暮らしを構築していく作品作りが僕の人生観というか、スタイルを確立していった。小屋を立てたり、鳥の数を数えたり、知らない子供達と仲良くなったり、そのお母さんたちに夕食のお裾分けをもらったり。金はなくても言葉と時間を重ねてくとたくさんの素敵な人に出会えると気づいた。

そして、時間は膨大にあるし、誰も僕のことなんか見てない。自由に生きたらいいのだ、その先々で出会った人と笑って飯でも食えたら、それだけで人生なんて薔薇色じゃないかと。そう気づかせてくれる体験だった。

でも、どこかで完成された未来の自分みたいなおじさんを想像していた。
驚くべきは人って全然完成されないってことだ。17年くらい前の自分に教えたい。次から次へと新しい世界が来る。ドキドキが来る。ずっとアップデートされ続けていくぞって。

一番大切なのは、そういった日々の細やかな気付きや学びを昔のように何歳になっても大事に大事に向き合っていけるかだ。いろんなことが上手になる。上手になった分、失敗したくなりから同じことを繰り返す。昔のようなドキドキもハラハラも減っていく。それってつまり、昔の自分が一番嫌っていた未来だなと思う。

不思議なもので、一番地味に日々とじっくり向き合うことが、もっとも想像を超えた未来に運んでくれる唯一の方法なんだってことに今気づいてる。37歳にもなって。この年末年始のお休みは恐ろしく退屈でタイムラインも秒で飽きてしまったし、Youtubeなんてみんな同じことを喋ってる。

僕は元旦をアイデアにつかった。こんなことできたらいいな、こういう言葉がいいかもな。こういうデザインがあっているかもしれない。ワクワクした。ドキドキした。これをこれだけを繰り返していこうと思った。

退屈なスマホの画面を眺めてるときに、ふと冒頭の高校の教室最後尾から眺めた風景がフラッシュバックしたんだ。あぁ、この退屈を変えるのはいつだって自分だったって。それは僕やこれを読んでるあなたの意思なんだって。

どうせ何を選んでも命だけは取られない。
今、ここにいる自分も過去の僕が選んできたことの結果だ。
たくさんの選択をしてきたからね。これからもハラハラする一手を選んでいこう。自分が嫌いになってしまうような選択だけはしたくない。

変えるのはいつだって自分だ。

いただいたお金は子どもに本でも買おうかと思ってます。