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保険法の整理①


1.保険制度概要

(1)保険の意義
私有財産制度(憲法第29条参照)の下では、火災・盗難や死亡・傷害疾病といった不測の事態に対する備えをするのは、各経済主体の責任であるため、その備え(付保)をしなければならない。

(2)保険制度を支える原則
①大数の法則
ある事態が起こる確率の平均値は、大量の観察をすれば求めることができるということ。

②給付反対給付均等の原則
リスクの高低に比例して保険料の大小を決めるという建前。
個々の加入者についての原則。

③収支均等の原則
(ア)保険事業者(保険者)が支払う保険金の額と(イ)保険契約者から受け取る保険料が等しくなるようにしなければならないという建前。
事業全体についての原則。

(3)保険の種類
①損害保険
「保険金の額」が保険事故によって生じた損害額に応じて決定する保険。
対立概念は、定額保険(保険金の額が当初定められた一定の金額となる保険)。
②生命保険
「保険事故」の客体が人の生死である保険。
対立概念は、物保険(保険事故の客体が物である保険)。
③定額保険形式の傷害疾病保険
損害保険形式の傷害疾病保険は「①損害保険」に含まれる。①と②では捕捉できなかった保険の種類を第三の類型として整理している。

2.保険法

(1)保険法上の「保険契約」の定義
「当事者の一方が一定の事由が生じたことを条件として財産上の給付……を行うことを約し、相手方がこれに対して当該一定の事由の発生の可能性に応じたものとして保険料…を支払うことを約する契約」(保険法第2条第1号)

(2)保険法の法的性質
①民法に対する特別法
②消費者保護法としての性格
保険約款において、保険法上の規定よりも保険契約者・被保険者・保険金受取人に不利になる特約を定めることは認められない(片面的強行規定)。

3.保険業法

(1)免許
「保険業は、内閣総理大臣の免許を受けた者でなければ、行うことができない」(保険業法第3条)。

(2)資本金の額
「保険会社の資本金の額……は、政令で定める額以上でなければなら」ず、「政令で定める額は、十億円を下回ってはならない」(保険業法第6条)。

(3)他業の制限
「保険会社は、…他の業務を行うことができない」(保険業法第100条)。

(4)兼営禁止
「生命保険業免許と損害保険業免許とは、同一の者が受けることはできない」(保険業法第3条第3項)。

4.基本概念

(1)登場人物(保険法第2条)
①保険契約者(保険法第2条第3号)
保険料支払義務を負う者。

②被保険者(保険法第2条第4号)
損害を受ける者(損害保険。保険法第2条第4号イ)。
その人の生死が保険事故とされている者(生命保険。保険法第2条第4号ロ)。

③保険金受取人(保険法第2条第5号)
保険給付を受ける者。

④損害保険代理店(保険業法第2条第21項)
「損害保険会社の委託を受け、又は当該委託を受けた者の再委託を受けて、その損害保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行う者……で、その損害保険会社の役員又は使用人でないもの。」
※会社法第16条の保険代理商に該当する。

⑤保険外務員
生命保険会社の営業職員。
契約の申込みの勧誘をするだけで、契約締結権限は有しない。

(2)保険約款
①普通保険約款と特別約款(特約条項)がある。
②監督官庁による事前認可等が必要である(保険業法第4条第2項第3号)。

5.参考文献

山下ら「保険法[第4版]」(有斐閣アルマ)

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