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BE:FIRST が始まる

「まだ見ぬ君の力を貸して欲しい」


SKY-HIのそんな呼びかけに賛同して多くの才能が集結したボーイズグループオーディション、THE FIRST。青春群像劇とも称されたこのオーディションは、参加者の長所を褒め、個性を伸ばし、参加者同士が互いに教え合い、昨日の自分を更新し続けた。審査が進むにつれて洗練されていく彼らの様子、また、ただの脱落ではなく個々にとって大きな意味を持った旅立ちに、視聴者は毎週涙させられた。そんな新しい形のオーディションを勝ち抜いたメンバーが所属するグループ名は、常にトップを狙い常に首位を占めているという意味を込めて名付けられた「BE:FIRST」。8月13日、これから世界に名を轟かすボーイズグループのデビューメンバー7人が発表となった。


クリエイティブファースト、クオリティファースト、アーティシズムファースト。掲げられた目標は目標では終わらず、審査の段階からその言葉通り、他に類を見ない少年たちの挑戦を目にすることとなった。チームごとに曲も振付も自分たちで作り上げるクリエイティブ審査、プロの作った楽曲で戦う疑似プロ審査、そしてこのTHE FIRSTのテーマソングでもある「To The First」を歌い分けから振付まですべて自分たちで作り、SKY-HIと勝負するVSプロアーティスト審査。そこで繰り広げられるあまりのレベルの高さに、この人たちが現在芸能界にいないという事実に衝撃を感じた。「才能は、輝く場所と結びつかなければ誰にも知られず簡単に消えていく」そんなSKY-HIの言葉を心から理解した瞬間だった。と同時に、この溢れ出る才能を輝かせる場所を、自腹で1億円出資してまで作り出してくれたことに深く感謝したのである。


そんなSKY-HIが参加者に紡ぎ出すのは、優しくてあたたかくて、包み込んでくれるような言葉ばかりだ。他のオーディションとは一線を画したそのスタイルに、最初は戸惑う視聴者や芸能の方も多かったように思う。自分が思っていることを相手に伝えようとしたとき、100%正しいニュアンスで伝えることはとても難しい。だが、SKY-HIの届ける言葉は、優しいだけで心の奥まで響かない言葉とは違う。しっかりと相手に伝えたいことを分かりやすい言葉でそのとき相手に必要なことだけを発信しているのだ。過言ではなく、彼は言葉の魔術師だと思っている。


デビューメンバーが決定したわずかその3日後にはプレデビュー曲である「Shining One」のリリース、MVの公開など、とんでもない量の情報が私たちファン「BESTY」を襲った。供給過多で呼吸困難になりそうなぐらい。今からでもまだ間に合う、彼らを知らない人たちには是非デビュー後の輝かしい姿はもちろん、ゼッケンを胸につけ、デビューに向けてお互いを高め合ったあの日々から知ってほしいのである。これまで「過程なんかどうでもいい、結果がすべて」派だった私が、「結果だけではなく過程も大事」派に寝返るぐらい、彼らの道のりはあまりにも素敵で輝いていた。


ここでデビューメンバーを紹介させてほしい。


ダンスの世界大会でチームを何度も優勝に導いてきたSOTA。彼はこれまでの全てを捨てて、このボーイズオーディションに臨んだ。世界まで手にした人が、その分野以外のものに新しく挑戦するというのは、どれだけの覚悟が必要なことなのだろう。デビューメンバー発表の際、彼の名前が一番に呼ばれたのは、その実力だけが原因ではない。人は誰しも、力があれば驕り高ぶる生き物だと思っていたし、それはいくら隠したところで滲み出るものだと感じていた。だがこのオーディション中、一度も彼のそんな姿を目にしたことはなかった。むしろ誰よりも貪欲に、新しく挑戦するラップへ取り組んだり、他のメンバーにダンスを教えたり、感動的なコレオグラフを作ったりする姿に何度も心打たれた。彼の作るコレオグラフは、毎回覚悟して見ているつもりでも鳥肌が止まらない。「To The First」の振付は、これまでの審査の記憶が蘇るような、一曲のなかに数々のストーリーを組み込んだ構成になっており、初めて見たときは息ができなかった。それだけではなく振付や立ち位置や見せ場など、どれもが完璧としか言いようがなかった。

最終審査「クリエイティブ審査NEO」でSOTAがMANATO、(のちにBMSG所属アーティストとなる)SHOTAと制作した「No Cap Navy」という楽曲のなかに「今でも過去背負うDavryu」という歌詞がある。「これまでを捨てて」と彼は時々インタビューで言っていたがそうではなくて、過去の全てを背負った上でこのオーディションにも、そしてこれからの世界にも臨もうとしているのだと思った。「このグループを世界に連れていく」と彼が言うならば必ずそれは実現される目標であると思うし、その夢を最後まで見守らせてほしい。


唯一無二の歌声を持ち、SKY-HIに「その声が欲しい」と言わしめたSHUNTO。初めて聴いたとき、一目惚れならぬ一耳惚れをしてしまった私が言うのもなんだが、彼の魅力は声だけではない。ステージに上がった瞬間、彼をまとうオーラも、目の奥に宿る覚悟も、なにもかもがすべて変わったように見える。それはもうゾッとするくらい、彼が作り出す世界にしか目がいかなくなってしまうのだ。歌い回しひとつ取っても、絶対にそのフレーズを歌うのはSHUNTOでないといけないと思う。気を抜いていても、SHUNTOのパートだけは確実に聞き分けられる。指先の動かし方、身体の使い方、表情の魅せ方、どれもが曲の表情に合っていて、気づいたら目で追ってしまっている。私はこの合宿を通して、あまり彼が弱音を吐くシーンを目にしていないように思う。早朝にランニングをしたり、人より遅く残って練習をしたり、チームのメンバーを気遣ったり、ふわふわとしてどこか掴めないSHUNTOが色々なものを背負ってここに立っていること。いつも笑っているからといって、それが楽しいからだけではないこと。まだ私は彼の魅力を100%知ることができていないと思う。にも関わらずここまで惹きつけられるのは、彼のアーティシズム故だろうか。成長が止まらない彼の色んな表情を、これからも追っていきたいと思うのだ。


音楽留学経験もあり、高い音楽センスを放つMANATO。彼の作るメロディーラインは、特別な日につけたい香水ではなく、肌身離さず毎日持っておきたいお守りのように思える。彼がサラッと歌うそのフレーズは、何故か頭から離れない。MANATOが歌った後、「音楽が大好きな人の歌い方だ」とSKY-HIは言った。甘く聞き心地のよい声、高い技術力が詰まっているのにそれすらも感じさせない歌い回し。その一方で感情表現が課題だ、感情が爆発したMANATOが見たいと、審査途中何度も言われてきた。100点満点の歌声、パフォーマンス、それなのに何か足りないと思わせてしまうのは、爆発的な感情表現なのだと。どんな楽曲も乗りこなし、彼がたどり着いたプレデビュー曲「Shining One」。最終審査では、2チームに分かれてこのプレデビュー曲を披露した。ラスサビに入る前、「Can you feel it?」このフレーズを聞くだけであなたも絶対MANATOから目が離せなくなる。また、合宿中に放たれた、彼の溢れるワードセンスは少々非合法的でもあった。MVを見るだけでは分からない彼の魅力は、ありふれた日常に断片的に落ちているのだと思う。その断片を拾い集めたとき、またさらに彼のことを知りたくなるのだ。



最年少でありながら一際異彩を放つRYUHEI。私が彼の虜になったのは、2次審査で藤井 風の「もうええわ」を歌い始めた時だった。一音目から引き込まれてもう戻れなかった。三次審査で彼が言った「ダンスを心から愛している自信がある。こういう表現の仕方をするとこんなにも違って見えるんだというダンスの表現も歌に活用できるのかなと思っていて」という言葉は、それからの審査にも垣間見える。Rin音のsnow jamは、講評でSKY-HIも言っていたように、二次審査の歌唱を聞いて予想したRYUHEIの歌が一番映えるキーではないと思っていたが、全くの杞憂だった。彼はどんな歌も、どんなダンスも自分のものにしてしまう。身体の動きひとつひとつが、本当にダンスを愛していることが、フレーズの歌い方ひとつで、本当に歌を愛していることが、テレビ越しにでも伝わってしまうぐらい音楽と距離の近い14歳だ。パフォーマンスを終えた後、仲間との別れの時、彼がこぼすように発する言葉はいつも達観していて、そういう物の見方をしていたのかと驚かされる。クリエイティブ審査で作った「Good Days」に出てくる「僕のために歌うこのメロディ」や「浅く深い友と上へ」というフレーズがある。この世にある事実はたった1つしかなくとも、どんな心持ちで生きるかによって人生は大きく変わると思っている。眼鏡のレンズが曇ってしまったときに世界がうまく見えないように、自分の心のフィルターがクリアかつたくさんの感情に溢れていると、豊かに人生を送れる気がするのだ。RYUHEIだったからこそ書ける歌詞を見て、この人の描く世界をこれからもっと見てみたいと強く思った。


未経験を感じさせないハイトーンボイスの持ち主、JUNON。どこか掴めないキャラクターである彼は、「ああ見えて根性派」だと称されながらも、カメラに映るシーンはひたむきに努力するシーンよりもどこか突っ込みたくなったり癒されたりするような一コマが多く、パフォーマンス中とのギャップもまた大きな魅力である。また、ファンの間で有名なシーンがある。レコーディングの際、未経験にもかかわらず高い歌唱力を褒められたとき「未経験っていっても家で歌ったりはしてます」と言ったJUNONに対し、「それ未経験です」とすかさずRYUHEIが突っ込む場面だ。短期間で高度な歌と振りを身体に入れ、覚えるのみならず自分の色を足したうえで最高のパフォーマンスを本番で披露するというのは、歌やダンスのレッスンを元々している子でも苦戦する内容だと思う。実力者揃いのメンバーのなかで、未経験だと感じさせない堂々としたパフォーマンスをするJUNONは、カメラに映っていないシーンや自宅でどれほどの努力を積んだのだろう。元々上手かった歌が、歌手のなかでも群を抜くぐらい上手くなったこと。JUNONが歌うパートは何の不安もなく聞けること。この短い時間でここまでの進化を遂げた未経験の彼が、プロとなってどんな歌を世界に響かせるのか。それを聞ける日はきっとそう遠くない。


歌もラップもダンスも高いレベルで、俳優としても活躍しているRYOKI。クリエイティブ審査でRYOKIの属するTeam Bは、強い個性と高いクオリティを持つメンバーが集まるが故に、チームとしてのコミュニケーションを上手く取れずぶつかってしまうシーンが番組でも取りざたされた。人は良い悪いではなく合う合わないだと常々思っているが、誰かのたった一面やワンシーンだけを見て、この人はこういう人だ、と決めつけてしまうのは大変危険な行為だと思う。長い1か月の合宿のなかで、彼らしか知り得ない出来事や流れ、RYOKIの立場でしか分からない感情があって至った何分かの出来事だけで、人を判断したくない。垣間見える彼の押しつけがましくない優しさや今自分に何ができるのかを常に探して行動する姿勢。つい見入ってしまうようなビジュアルはもちろん、彼のさりげない行動までもが魅力的だ。

審査で脱落し、苦楽を共にした仲間が合宿所を去るとき、RYOKIは悲しむメンバーを抱きしめながらも自分は(カメラに映っている範囲では)涙を流さなかった。そんなRYOKIがデビューが決まった際に言った「15人の分まで」「会ったことがないこのオーディションを受けていた人の分まで」という言葉を聞いて、ここにいない誰かの分まで頑張るという覚悟が彼をそうさせたのかと感じた。どのフレーズを歌っても、RYOKI色に染めてしまう彼の唯一無二さはグループに絶対欠かせない。今までもこれからも、「RYOKIじゃないとだめだ」と思う場面はいくつも浮かぶ。なかでもクリエイティブ審査NEO“Club JRL”での、彼の発音の良さや声の性質が活きた最高のパフォーマンスは必見だ。



誰よりもグループを愛しているLEO。LEOのいるチームはいつも笑顔が絶えず、最後までチームとして最高の形でパフォーマンスをしているような気がする。例えばクリエイティブ審査の際、LEOが所属していたTeam Aは、ダンスも歌も実力者が多く、楽曲制作にもあまり手こずることなくスムーズに進んでいた。「上村礼王というブランドを見せにきました」。このセリフを幾度となく耳にすることになるのだが、その言葉に違わずいつも彼は今できる自分の最高値を本番で叩き出してくる。審査の途中で思ったように歌が伸びず、苦しんでいるときもあった。圧倒的な何かがないとこの個性揃いのメンバーの中で勝ち残るのは難しいだろうという、私だったらもう諦めてしまいそうな言葉をSKY-HIさんに言われるシーンもあった。それでも彼は乗り越えて、本番には輝きあふれる笑顔と優しい歌声で魅了してくれるのだ。ステージ上のLEOを見ていると、なんだかこちらまで笑顔になってしまうし、絶対大丈夫だと思ってしまう。デビュー後に、リーダーをやりたい人…という質問に真っ先に手を上げ、「号令係でいいから」と言っていたLEOだが、彼がいるグループなら絶対に何があっても軌道修正して今いる場所に戻ってきてくれる、そんな信頼が置ける人が存在する「BE:FIRST」は大丈夫だ。


デビューメンバーにはならなかったが、RAN、RUI、REIKOなど今後の成長が楽しみであり恐ろしくもあるトレーニーや、BMSGでアーティストとしてデビューしたSHOTAとの出会いもあった。(思い入れがありすぎて長くなるので割愛する)


メンバーそれぞれがナンバーワンという個性を持っている、とデビューメンバー発表時SKY-HIは言った。その言葉の通り、このオーディションで脱落したメンバーも、今回デビューした7人も、どこかで誰かのナンバーワンなのだ。一度聴いたら耳を離れない楽曲たちも、その楽曲に色を付けたメンバーたちも。


最後に。この音楽文を投稿できるサービスが、8月31日で終わることを知った。音楽を愛する人たちが、読み手として、また書き手としてつながれる場所だった。自分が好きだと感じたアーティストや音楽を、誰かの言葉や見方を通して改めて好きになれたり、気付けていなかった一面に気付かされたり、このサイトにそれはもうたくさんの音楽との出会いをもらったのである。私の音楽との出会いは聴覚からばかりではなく視覚から、も多かったような気がする。というのも、音楽を聴く前に歌詞を読んで好きだと思ったものを聞くようにしていたし、ジャケットが好きだからという理由だけでCDを買ったりもしたし、知らないアーティストでもこの音楽文の紹介を読んで興味を持てたものに触れるようにしていたからである。


こうやって自分にとっての当たり前だったものが終わっていくのは悲しい。今流行っているコロナウイルスだって3年前は想像もしていなかったし、音楽文を読んでいた大学時代にこのサービスが終わるなんて考えたこともなかった。逆に、ボーイズグループに全く興味のなかった私が「BE:FIRST」にここまでハマるだなんて思ってもいなかったので、この世のあらゆる出来事は往々にして突然終わりや始まりを迎えるものなのだ。


終わったことの代わりに希望を含んだ始まりが来るとしたら、この寂しさだってきっと無駄じゃないのだと思う。たまたまつけたテレビで知った「THE FIRST」との出会いが私の日常を変えたように、これを読んでいるあなたの人生にもある日突然音楽という名のギフトが贈られますように。願わくば、それが幸せを運んできますように。

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