ベルマーレのフォワードに必要なものって何だろうって、少し前の時代から考えてみる。(チョウさん時代2013年編)

いよいよチョウ・キジェ体制に突入した、かなり自己満足感の強い連載記事(笑)

就任1年目でJ1昇格を成し遂げたチョウさんベルマーレ。
2010シーズン以来のJ1リーグの闘いや如何に。

・2013シーズン(J1)
基本布陣:1-3-4-2-1(3トップ)


トップチームの指導が未経験ながら、自らが手塩にかけて育て上げた教え子たちをチームの中核として据えて置き、自分たちの激しい勢いを相手チームにぶつけていって一気に仕留める"緑と青のビッグウェーブ"攻撃が年間を通して機能し、3年ぶりのJ1リーグに挑むベルマーレ。


前線の顔ぶれはというと、キリノ・菊池大介・中村祐也・岩上祐三・馬場賢治・古橋達弥・大槻周平ら前年のJ1昇格に貢献してくれた選手たちがそのままに、東京ヴェルディから技術豊かなパサーでありリンクマンでもある梶川諒太、前年のJ2リーグでロアッソ熊本で14得点を挙げていた武富孝介、現役ボリビア代表(当時)で中盤もこなすことが出来るエジバウド・ロハスの3人が移籍加入。

日産スタジアムで行われた横浜F・マリノスとの開幕戦、ベルマーレのスタメンの前線はワントップにキリノ、2シャドーに梶川諒太とエジバウドを配置する形でスタート。
試合は前半40分にマリノスの中村俊輔に直接フリーキックを決められて先制されるも、その直後にキリノが地を這う弾道のミドルシュートを決めてすぐさま同点に持ち込む。


キリノの衝撃はこれだけではなかった。
後半16分、中盤でボール奪取を行ったハングギョンからキリノへとボールが繋がり、キリノが右サイドを疾走して単独カウンターを発動。
迫力感満載でありながら中澤佑二をブッちぎるスプリントを見せたキリノは右サイドから中へ切れ込み、キーパー榎本哲也との1対1の場面も落ち着いて対応。この日自身2得点目となる見事な逆転ゴールを決めて見せる。


さらに攻めるベルマーレは途中出場の武富孝介が右サイドの古林将太のクロスに頭で合わせて3点目…のはずが、オフサイドと判定されてノーゴール。
前半から躍動感溢れるプレーをし続けたベルマーレであったが、選手の個の質とチームの地力に勝るマリノスの圧力を食い止められず、最終的に2-4というスコアで逆転負けを許した。


この年の前半戦、J1昇格を成し遂げた前年のように縦に縦に前進し続ける"湘南スタイル"イズム満載の見ていて痛烈で爽快感のあるサッカーを展開出来てはいたものの、最終ラインの中心的存在であり攻守の要でもある遠藤航の故障が長引いたこと、要所要所でJ1のレベルの高さに簡単に捻られてしまうという場面が目立ったことも影響し、リーグ戦の半分17試合を終わった時点でわずか3勝しか挙げられずにいた。


前線の事情はというと、新加入の梶川、武富の2人はすんなりチームに溶け込んで出場機会を増やしていったものの、エジバウドは適応に苦しみなかなか出場機会を与えられずにいた。
菊池大介、馬場賢治の生え抜き組もJ1リーグのレベルに跳ね返されることが多く、ベテラン古橋達弥はアキレス腱断裂という大怪我を負って半年以上の離脱を余儀なくされ、開幕から好調はキープ出来ていたキリノでさえも、なかなか得点の数字が伸びない日々が続いた。


タイのムアントン・ユナイテッドから期限付き移籍していたエジバウドが5月早々にタイへと帰ってしまい、フォワードの外国籍枠が1つ空いベルマーレは、J1リーグの中断期間となっていた6月にブラジル人フォワードのウェリントンを獲得する。


186センチ、89キロ、という数字だけ見ても屈強そうなフィジカルを持ち、ゴールを決めたら側転からのバク宙を披露できるほどの身体能力の高さも兼ね備える"ベルマーレの理想のセンターフォワード第2号"として、チームに欠かせない存在となっていくのはもう少し経ってからのお話。

前述のウェリントンと、1月に加入していたDFのクォンハンジンと入れ替わる形で7月上旬にベルマーレ加入が発表されたGKのアレックス・サンターナの2人は、その年の選手登録の時期の関係で7月末まで出場できなかったのだが、2人のJリーグデビューでもあり、リーグ戦折り返しの後半戦初戦となったアウェイの川崎フロンターレ戦で、その補強が効果テキメンだったことが証明される。

ウェリントン、サンターナの新外国人2人を早速スタメン起用したベルマーレ。
ワントップの位置に入ったウェリントンは持ち前の高さと強さ、献身性に優れたところを発揮して、1ヶ月以上の期間を適応にうまく費やしたところを首脳陣・サポーターに見せつける。

また、相手ディフェンダーを背負ってポストプレーをすることを全く厭わないウェリントンが最前線にいることで、前にスペースがあればあるほど持ち前の迫力あるスピード突破が生きるキリノがイキイキしやすくなる、という思わぬ副産物も産まれた。

試合は前半ATに時のJリーグ得点王、大久保嘉人に決められて1点ビハインドとなるも、後半10分にコーナーキックから遠藤航が頭で合わせて同点、その10分後には左サイドをドリブル突破したキリノのクロスを、ゴール前に走り込んでいた左アウトサイドの高山薫が胸で押し込んで、ベルマーレが逆転する。

とは言っても、試合を通してインパクトを残していたのは、ウェリントンよりも、川崎フロンターレの選手たちが放ってくる精度も技術もパワーも備わったシュートを、超人的な反射神経と軽やかな身のこなし、大久保嘉人のPK時に見せた"サンターナの舞"でPK失敗を誘発したアレックス・サンターナだったんだけどねえ(笑)

(試合が終わった瞬間、座り込んでお祈りを捧げるサンターナに遠藤航・大野和成・島村毅・高山薫が一目散に駆け寄ってサンターナをねぎらってたのがとても印象的でした)


助っ人らしい助っ人が2人もベルマーレにやってきてくれたので、Jリーグの環境に慣れてくれれば残留争いを抜けることも可能…と思っていたベルマーレサポーターの希望は、突如やってきた石油の圧力に大きく覆われてしまう。

2013年8月10日、アウェイの清水エスパルス戦のメンバー発表前に(現地に居た人たちからしたら開門前に)、クラブから突然、キリノがUAEのアルシャアブへ移籍するというリリースが出されたのだ。

しかも、その日に日本を離れるから、スタンドに駆けつけたサポーターにお別れの挨拶してから空港に向かうという、「これは夢か?現実か?」的な緊急事態がベルマーレを襲った。
(ちなみに清水戦は1-3で敗戦。アウェイの清水戦は色々とありすぎ(笑)なお、後半に交代出場してから2分後にレッドカードをもらった岩上祐三がこの5日後に松本山雅FCに移籍するオチまでついた)

清水戦から3日後、チームは新たな攻撃の軸になりそうな存在として、FC東京で燻っていた天才レフティー大竹洋平を期限付き移籍で獲得する。

その大竹は加入して4日後に行われたホームのジュビロ磐田戦で早々とベルマーレデビューを果たす。

アレックスサンターナがペナルティーエリア外でボールを手で触って一発退場していた苦しい展開ではあったが、途中出場した大竹はそれまでの鬱憤を晴らすように伸び伸びとプレー。

独特のリズムから繰り出される魔法のようなフェイントとラストパス
巧みなボールキープを織り交ぜたドリブルは、2000年代後半にベルマーレ界隈を沸かせたアジエルの姿を彷彿とさせるものだった。

キリノの移籍で空いた外国籍枠に滑り込んだのは、韓国の水原三星から加入したマケドニア/セルビア(二重国籍)人フォワードのステボ
189センチ、84キロ、の重量感溢れるボックスストライカーに背番号9を託した。


人数は揃えて終盤戦に備えたベルマーレではあったが、後半戦も前半戦の時と同様に良い闘いは出来ても、要所で相手を仕留め損なったり、自分たちの勝負弱さが垣間見えたりして、勝ち試合が引き分けになったり、引き分けに持ち込める試合が負け試合になったり、というここ一番のところで踏ん張れない、実力が出しきれない歯痒さが象徴的だった。


さらに、11月序盤には大竹洋平が練習試合中に膝の靭帯を断裂する大怪我を負い、遠藤航も残り4試合目となった鹿島アントラーズ戦で脚を負傷。
またしても大事な時期に差し掛かったところでキープレーヤーがいなくなる不安に見舞われたベルマーレ。


11月23日、第32節のFC東京戦に1-2で敗れて2試合を残してのJ2降格が決まってしまったベルマーレ。
結局残りの6試合で6連敗。結果だけ見ると散々なものだが、全て1点差負けという、"いいところまではいくんだけど勝つ為の何かが足りない"、のがしっかり当てはまる終盤戦となった。

チームの得点ランキングも4得点の永木亮太、高山薫、3得点のウェリントン、遠藤航、武富孝介、大野和成という結果に終始。
リーグ戦34試合で34得点、と得点力不足が明らかなシーズンとなってしまった。

終盤戦のベルマーレの試合(なんの試合かは忘れた)の担当解説者が試合後に「見ていてこんなに面白いチームがなぜJ2に落ちてしまうんですかねえ?」とこぼしてしまうほど、魅力的なサッカーを展開したベルマーレではあったけど、勝つ為の何か、が足りなくて降格してしまったベルマーレ。

『J1の試合で勝てるようにするには?』

それを高いレベルで追求した結果…
深化したベルマーレがとんでもない結果を出すことになるのです。笑

次回へ続く…










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