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なぜか"そこにいる男"、山根視来

背番号列伝シリーズだけではやっていけないので、リーグ再開に向けて書き物シリーズも復活させないといけませんね。

noteの中で募集していたこちらの企画にのっかって、記事を書こうと思います。

すごい選手かあ…
ぼくの心のクラブでもあるベルマーレからも紹介しておきたかったけど、ベルマーレからステップアップして強豪クラブに身を置いた"すごい選手"が1人浮かんだので、紹介したいと思います。

その選手とは、湘南ベルマーレから川崎フロンターレに移籍した

山根視来(やまね・みき)


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です!


なぜ、山根視来を選んだかって?

その理由はただ一つ、2016年から山根がベルマーレに入って、その後に主力選手として活躍して、まさかフロンターレに引き抜かれるだなんてサポーターの誰もが思いつきもしなかったからです。

ここで、山根視来というフットボーラーの歩みについて触れていきましょう。

山根がベルマーレに入るきっかけを作ったのは、彼が桐蔭横浜大学4年生の時。
2015年の9月に行われた天皇杯の試合でベルマーレが桐蔭横浜大学と対戦した試合でした。

試合は4-3でベルマーレが勝利するのですが、この試合で一番目立っていたのが、桐蔭横浜大学の左サイドハーフに入っていた背番号7の山根視来でした。
左サイドから幾度となくドリブルで仕掛け、対面のベルマーレの右ウイングバックの白井康介、3バックの右に入ったキムジョンピルを翻弄。
自身もゴールを挙げた山根はこの後にベルマーレに練習参加して、翌年からの入団内定も決めてみせました。

こうして山根はベルマーレに加入することになったのですが、サポーターの関心は山根よりも、高校サッカーの名門の青森山田高校からベルマーレに加入した神谷優太(現柏レイソル)の方に多く向けられていました。
(神谷は青森山田高校で10番をつけていて、高校選手権にも出ていたので尚更だったかもしれません)

しかも、山根はチーム始動前の自主トレで負傷してしまって、プロ1年目のスタートから出遅れてしまう始末。
リーグカップ、天皇杯には2試合ずつ出場した山根でしたが、当時の左ウイングバックには不動の存在の菊池大介が君臨しており、他のサイドプレーヤーにも藤田征也、奈良輪雄太といった経験のある選手たちが在籍していたのもあって、リーグ戦の出場はゼロ。

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日々の練習では山田直輝、長谷川アーリアジャスールの技術とアイデアに衝撃を受けた、とインタビュー記事で語っていたこともありました。

リーグ戦では出場機会のなかった山根ですが、シーズン終了後には若手選手たちを中心に編成したメンバーで乗り込んだBTVカップ(ベトナムで行われたカップ戦)で、主力選手として活躍。
決勝戦では1-1の後半アディショナルタイムに決勝点を挙げて、チームの優勝に大きく貢献しました。

この次の年から、山根視来の代名詞でもある、"ヌルヌルドリブル"が思わぬ形で真価を発揮するようになります。

プロ2年目の2017シーズン、山根は当時のベルマーレの監督だった曺貴裁(チョウ・キジェ)から、サイドプレーヤーからセンターバックへのコンバートを勧められます。

そして、迎えたJ2リーグの開幕戦。
アウェイで水戸ホーリーホックと対戦したベルマーレイレブンの中に居た山根は、3バックの右で先発出場を果たし、リーグ戦デビューを飾ることになりました。

今だから言えるのですが、この時一緒に水戸まで行ったサポーター仲間さんに、前日の練習で山根が主力組に入ってましたよ、と言っても、とても信じてもらえなかったのを覚えています。
(この時は非公開練習ではありませんでした)

センターバックの位置にコンバートされた山根は、不慣れな位置で経験不足を露呈することはあっても、3バックの中央にそびえ立つアンドレ・バイア、2年ぶりにチームに戻ってきた正守護神の秋元陽太といった2人の実力者と守備陣を形成していくうちに、いつの間にかチームの主力選手に定着。

チョウさんに「自分(山根のこと)はドリブルを上手いと思ってるみたいだけど、おまえのドリブルは俺(チョウさん)から言わせれば並みだよ」とハッパをかけられた山根は、持ち味のヌルヌルドリブルの精度をグンと高めていきました。

また、短期間で守備が計算できるようになった山根は3バックの右だけでなく、4バックの中央を守る機会がやってきたりするなど、プレーヤーとしての幅も広がっていきました。
(4バックの中央にいるのに、流れの中で敵陣のゴールラインの近くでドリブルを仕掛けるセンターバックなんぞ、日本で山根視来くらいしかいないでしょう)

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さらに、終盤になってくると、最終ラインの位置から50メートルくらいの距離をひとりでドリブルで持ち運んでは相手選手をかわして、ミドルシュートまで持っていくという芸当もこなすようになった山根。
チームのJ1昇格とJ2優勝に大きく貢献した山根でしたが、飛躍を遂げたシーズンの最終戦ではハーフタイムを待たずして交代させられるほどプレーの精彩を欠いていた山根は、この屈辱をバネにさらにディフェンダーとして進歩することになるのです。

翌年の2018シーズンの始動直後の練習では、身体にかなりの負担がかかりそうなサーキットトレーニングを選手たちが行っていたのですが、山根は口々に何か言葉を発しながらトレーニングに勤しんでいました。

「城後!シモビッチ!!〇〇〇!!!」←〇〇〇の部分はちょっと忘れましたw

なんで他チームの選手の名前を言ってるんだ?と少し不思議な気分になりましたが、考えてみてからちょっとして「あっ!」と気がつきました。

昨年の対戦時に山根自身がマークについていながら、結果的に得点を許した選手たちの名前を発していたのです。

なんと負けん気が強く、そして真面目な選手なんだろう、と練習場の側で観ていてすこぶる感心したものです。

昨年と同様に3バックの右の位置で開幕戦から出場機会を与えられ、サポーターを良い意味で裏切る⁉︎ように、J1リーグの闘いにもすんなり適応していった山根は、ホームで行われたリーグ戦第7節の鹿島アントラーズ戦でとんでもない大仕事をやってのけます。

1-1で迎えた後半アディショナルタイム、ベルマーレの選手たちが敵陣へ攻め込みますが、ゴール前で鹿島の守備陣がボールを跳ね返し、ボールはペナルティーエリアの外へと出ます。

主審からの試合終了の笛が鳴るかな…と思った矢先、最終ラインから飛び出してきた山根がこのボールを回収すると、目の前に鹿島の選手2人の間を擦り抜けるボールを前方に蹴り込み、猛烈な勢いをもってペナルティーエリアの中へ侵入。
スタジアム内の視線がベルマーレの背番号13に集中します。

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キーパーと1対1になった山根は、迷いなく右足を振り切って、ゴールネットを豪快に揺らす勝ち越しゴールを挙げます。
そして、このゴールが試合のラストプレーとなり、山根の自身のJリーグ初ゴールが試合の決勝点となる大殊勲のプレーとなりました。

プロ初ゴールが"ブザービーター"と一概に呼ばれるラストワンプレーでのゴールとなった山根。

"何故そこに山根視来"と言いたくなるのも無理はありませんね。(これは個人の意見ですが汗)

劇的な形でプロ初ゴールを奪った山根は、その後も調子を崩すことなく試合に出続け、チームの中心選手の枠に収まることなく、湘南スタイルを体現するセンターバック像を確立するまでに成長。

最大の武器のヌルヌルドリブルだけでなく、前線や右サイドの選手を活かす縦パス、全力疾走で最終ラインに帰陣してからの身体を張ったシュートブロック、と言った具合に、いちフットボーラーとしての実力を格段に上げてきました。

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その結果、クラブ史上初のリーグカップ優勝、最終節までもつれたJ1残留争いにも大きく貢献し、ベルマーレがJ1リーグで試合をする上で欠かすことのできない選手に成り上がることになりました。

遠藤航(現・シュツットガルト)がベルマーレ在籍時に躍動していた3バックの右の位置で、まさか山根が遠藤航の後継者…にとどまらず、攻撃の貢献度だけなら前任者を凌ぐかもしれないパフォーマンスが出来る様になったのは、サポーターの誰もが予想出来なかったはずです。

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昨年も3バックの右が定位置となり、湘南スタイルを体現するセンターバックとして活躍した山根。
そんな山根の凄さが凝縮された試合があります。

5月17日の金曜日に行われたJ1リーグ第12節、浦和レッズとのアウェイゲームです。

試合前に右サイドの中心選手でもある岡本拓也がウォーミングアップ中に負傷、開始直前にポジションを変更するという緊急事態の最中、山根は試合を通して右ウイングバック、右サイドバック、3バックの右をこなす万能性を披露。

杉岡大暉の"幻のゴール"から始まった一連の流れが国内のサッカー界隈で大きな話題となりましたが(結果的に今季からVARが導入されるきっかけにもなっちゃったり)、色々と動きが有り過ぎた試合の終止符を打ったのが山根視来でした。

2-2で迎えた後半アディショナルタイム4分、浦和のファブリシオのシュートをキャッチした湘南GK秋元陽太は、右サイドいっぱいに開いていたFWの山﨑凌吾へロングフィードを送り、ボールを受けた山﨑は、センターサークル内に居た味方選手へとパスを送ります。

この時、何故か"そこ"に居たのが山根視来でした。
山﨑からのパスを受け取った山根はピッチ中央の位置からドリブルをスタート。
この時最前線に居た松田天馬がプルアウェイ(広がる動きで相手をかく乱させること)を行って左サイドにかけてスペースをつくり、右サイドからは途中出場の古林将太がロングスプリントをかけてゴール前へ侵入。

2人のサポートを受けた山根は最後の力を振り絞ったドリブルでペナルティーボックスへと入って、右足を振り抜きます!

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山根の渾身のシュートは、ブロックに入った阿部勇樹の身体にに当たりながらも、浦和のゴールネットを揺らし、Jリーグ史に残る"伝説の逆転劇"が創られることとなりました。

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ラストワンプレーでゴールを決める"ブザービーター"をやるだけでも凄いのに、2年連続でブザービーターをやってのける山根視来はもっと凄いということでしょうかね。

ちなみに、山根視来がやってのけた2年連続のブザービーター弾、2試合とも主審は山本雄大さんだったので、今後、山本雄大さんが笛を吹いた川崎フロンターレの試合で、試合終盤まで同点でかつ山根視来がピッチ上に居たら……
何かが起こるかもしれませんね。


リーグ戦の出場が無くて、アタッカーとして失格の烙印を押された選手が、センターバックに転向したら自身の最大の武器がより活かされる格好となり、3年間のJ1・J2リーグで100試合に出場して、チームに欠かせない存在に成長を遂げる…

気づいたら、「なぜそこにいるの?」、とヌルヌルっと駆け上がっていくのが、山根視来たいう選手の魅力でもあるのです。


そして、DFにコンバートしてから3年が経った山根の勢いはついにベルマーレの枠を飛び越えていくこととなり、今季からは2017・2018年のJ1リーグで連覇を成し遂げた川崎フロンターレに加入することになりました。

2018年のシーズン終了後に川崎を離れた超優良助っ人サイドバック、エウシーニョ(現清水エスパルス)が抜けた大きな穴を埋める選手探しに苦労している、川崎の右サイドバック問題を解決できそうな存在として迎え入れられた山根。

ベルマーレ時代のチャントも川崎に引き継がれることになった上に、リーグ戦・カップ戦でのパフォーマンスも良くて早くも川崎のサポーターさんたちに受け入れられてる感じがするのは、ベルマーレサポーターから見ても大変嬉しいことです。

夢心動力(夢は心のプロテイン)を地で突き進む山根視来の川崎でのプレーから、目が離せませんね!


なぜ目が離せないかって?


なぜかそこに山根視来が居るからです。

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