ベルマーレのフォワードに必要なものって何だろうって、少し前の時代から考えてみる。(チョウさん時代2014年編)

ついにやってきました、湘南圧倒優勝のシーズン。

・2014シーズン(J2)
基本布陣:1-3-4-2-1(3トップ)


チョウキジェ監督2年目体制の前シーズンは、観る者に爽快感と痛快感を与える"湘南スタイル"で内容的には善戦したことが多かったものの、ここ一番での勝負弱さが随所で露呈して、1年でJ2リーグ降格の憂き目に遭ってしまう。


2012年からの2年間を主力として闘ってくれたMF高山薫、MFハングギョンが共にJ1の柏レイソルへ移籍、アルビレックス新潟から2年に渡り期限付き移籍で加入していたDF大野和成が所属元の新潟へ帰還して、各々が"個人残留"を果たす中、1年でのJ1復帰をより良い形で目指したチョウさんは、この1年を湘南スタイルの"深化"を強めていくシーズンと位置づけ、シーズン開幕前に"勝ち点80、得点80"という目標を掲げてシーズンインを迎えることになる。


迎えたリーグ開幕戦、立派にチョウさんベルマーレの"ドレス"となった、1-3-4-2-1システムでモンテディオ山形と対峙したベルマーレ。
2014年最初の公式戦の3トップはワントップにウェリントン、2シャドーに梶川諒太武富孝介が並び、ベルマーレ加入2年目となる3人が先発する運びとなる。

試合は前半20分に梶川のフリーキックからウェリントンがヘディングシュートを決めて先制するも、前半終了間際に梶川が2枚目の警告をもらって退場処分となってしまうが、後半にも山形に退場者が出たことも幸いして1-0の勝利を飾ったベルマーレ。


誰にも止められない快進撃はここから始まった。



開幕戦でモンテディオ山形に勝利したベルマーレは、ここから記録と記憶に残る"湘南無双"を見せることになる。

続く長崎、札幌、岐阜、松本、岡山に勝利して開幕6連勝を成し遂げると、第7節のフクダ電子アリーナで行われたジェフ千葉戦、この試合に勝てばクラブ新記録となる開幕7連勝となる試合で前半から千葉を圧倒。
前半のうちにウェリントンの2ゴールを含む4得点を挙げて試合を早々に決してみせたベルマーレは、後半にも2得点を追加してアウェイ千葉の地で6-0という相手の精神状態をも完膚なきまでに叩きのめすほどの強さと図太さを発揮。

試合前にチョウさんがロッカールームで選手たちに「記録と記憶に残る試合をするぞ!」と言って送り出したら本当にその通りになってしまった驚きと、ベルマーレの得点が決まるたびにジェフのサポーターさんたちが拍手を送っちゃってたほどのクオリティを他のJ2チームに見せつけたベルマーレの快進撃はさらに加速した。



ジェフ戦の次の大分トリニータ戦も4-0で勝利し、当時のJ2開幕連勝記録に並んだベルマーレは、その後もゴールデンウィークの連戦にも関わらず、横浜FC、京都、水戸、栃木、熊本、福岡の6チームからも勝利を挙げ、気がづけばJリーグの開幕連勝記録となる開幕14連勝という、とてつもない連勝街道を渡り歩いていた。

次節の愛媛FC戦に勝利すれば開幕15連勝、Jリーグの開幕連勝新記録となる快挙を達成できる
ところまでになった。


しかし、アウェイで行われた愛媛FC戦、前半早々にカウンターを仕掛ける際にイージーなミスを犯したベルマーレは、そのまま愛媛のショートカウンターを喰らい、"愛媛のえなりくん"こと河原和寿に先制点を許す。

1点を追いかけるベルマーレではあったが、前半途中にシャドーの位置で攻守に欠かせない存在となっていた大槻周平が脚を負傷してピッチを後にし(その後全治半年の怪我と判明)、交代で入った梶川諒太も開幕戦の退場以降精彩を欠いていたことも影響してか、試合に入りきれなくて周囲と呼吸が合わないという悪循環に陥っていた。

結局90分に渡って攻守にチグハグ感が否めなかったベルマーレは、気力のエンジン全開フルスロットルで闘い続ける愛媛FCの選手たちが頑なに守るブロックを崩すことが出来ずに0-1の敗戦を喫し、開幕からの連勝は14でストップしてしまう。


愛媛FCに敗れてJリーグの開幕連勝記録更新とはならなかったが、東京V、富山、讃岐、磐田、北九州、群馬にも勝利して、前半戦を終了して20勝1敗、勝ち点60というとんでもない数字を叩き出し、クラブが用意していた勝利給分のお金がリーグ戦の半分で早くも底をつきそうになったというう都市伝説が蔓延ったほど、ベルマーレのサッカーは"深化無双"していた。


この年に背番号9を背負った在籍2年目のセンターフォワードのウェリントンが地上戦・空中戦問わず圧倒的な強さを発揮して得点を量産していたのが、そもそもの圧倒的躍進の要因のひとつだった。

左サイドからは左利きの三竿雄斗、右サイドからは開幕直後にアルビレックス新潟加入した右利きの藤田征也、の2人が送る正確かつ良質なピンポイントクロスがウェリントンの頭に吸い寄せられるように届いてくることによって、ストロングヘッダーのウェリントンが得点しやすい環境が整備されていた。

また、ウェリントンと共によく前線の位置で起用されていた、(負傷するまで)大槻周平、武富孝介、岡田翔平といった面々がフィジカルの強さをそれぞれ持っていたことに加えて、大槻なら献身性の高さと身体の強さ武富ならボールテクニックの上手さと豊富なアイデア岡田なら速さを活かしたラインブレイクの巧さニアサイドに飛び込める勇気、といった具合に、選手個人が自身の特徴をどうチーム戦術に組み込むかちゃんと考えてプレー出来ていることが多かったのも、躍進の要因として挙げられた。

特に大槻周平は肉体的にも体力的にもウェリントンの負担を減らす"シャドーポストワーカー"として、ウェリントンの周辺で上手く身体を張り続けたり、シームレスに走り続けたり、真面目に愚直にフォアザチームを体現するフォワードとして、その存在を確立していた。


それでなくてもこの年のチームは、開幕6試合を消化した時点でゴールキーパー以外の全てのポジションの選手が得点を記録するという、「一体どこのポジションの選手のフィニッシュを抑えればいいんだ!みんながこぞって得点を狙いに行くから的が絞れない(泣)」と相手チームが嘆いていたかどうかは、定かではない(笑)

相手に迷いを生じさせる、自分たちからカオス(混沌)な状況を作り出して結果的に相手をカオスな状態に陥れる、対戦相手を混沌の波に溺れさせるサッカーでJ2リーグを席巻した。

後半戦に突入してからは、勝ちきる試合は前半戦に比べると減ってしまった。
それに関しては以下の要因が挙げられる。

・キャプテンの永木亮太が負傷の為に2ヶ月ほど戦線離脱して、ほんのすこーし湘南スタイルの強度が薄れたこと

・大槻周平の長期離脱で上背のあるフォワードがウェリントンくらいしか居なかったこと

・コンディション作りの難しい夏場に突入して身体的にも精神的にも疲弊が増したこと

・「強すぎる湘南に勝てないにしても、必死の抵抗だけは怠らない!」と前半戦以上に鼻息荒くベルマーレに向かってくるチームが増えたこと


それでも、負けない、勝ち点は落とさない、闘い方を貫いたベルマーレ。
夏の暑さに負けず走り回り、ウェリントンの影から速くスルスルっと得点を量産したのは、サガン鳥栖から期限付き移籍中の岡田翔平だった。

大槻離脱後は主に右シャドーでの起用が多く、破壊力抜群のポストプレーで攻撃に縦の深さをもたらせるウェリントンの背後からゴール前に侵入。

中盤から繰り出されるラストパスにはタイミングよく抜け出してボールを引き出し、サイドからのクロスには身体を投げ出すくらいの勢いで飛び込んでゴールを決められる、"線を点で合わせられる"、シャドーストライカーの役割を存分に果たしてくれた。

9月23日のアウェイの京都サンガ戦で2-2の引き分け(1-2のビハインドから島村毅渾身のタイガーショットが炸裂して同点に)て、9試合を残してのJ1昇格を果たす。

さらに、10月11日に行われたアウェイに東京ヴェルディ戦では0-0の引き分けに終わるも、前年の11月にJ2降格が決まった場所でもある味の素スタジアムにてJ2優勝も決めた。
(9試合を残してのJ1昇格は史上最速、6試合を残してのJ2優勝決定はJ2史上最速タイ)

J2優勝を決めた後の2試合はウェリントン不在も影響してシーズン初の連敗を喫してしまうが、リーグ戦残りの4試合で4連勝。
"とにかく強すぎるベルマーレ"の状態を保ったまま、2014シーズンを終えることとなった。

リーグ戦42試合で31勝8分け3敗


勝ち点は驚異の101。


86得点25失点。得失点差+61。
(1試合平均2.4得点、0.6失点)


2位の松本山雅FCとの勝ち点差は18。
(単純に考えると6勝分!!!)

J2全チームから勝利を挙げる


当時のベルマーレがどれだけのインパクトを残したか、説得力抜群の数字と内容ですね(笑)

チームの得点ランキングはというと、1位は20得点を記録したウェリントン。(リーグ得点ランキングでも2位の数字)

そこに14得点の岡田翔平が続き、9得点の武富孝介、8得点の菊池大介、7得点の遠藤航、6得点の永木亮太という顔触れが並んだ。

その年のチョウさんのキャッチフレーズの如く、"深化無双"して2014年のJ2リーグを席巻して、記憶にも記録にも残るシーズンを過ごしたベルマーレ。

2年ぶりのJ1の舞台で湘南スタイルの価値を
"証明"することは出来たのか。

振り返りはさらに続く…



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