見出し画像

境界線にて

ぬるま湯に浸り続けた1年だった。
推しに関する情報しか摂取していなかったし、SNSもオタクアカウント以外はログアウトして、地上波のテレビはほぼ見なかったし、ニュースはNHKのアプリを思い出したときに開いて気になった記事だけを読んだ。あんなにすきだった映画も、通年で2本しか観なかった。

それでも生活は滞りなく回り続けた。以前のように頻繁に外で飲み歩くことはなくなったけれど、近所に住む友人たちとは相変わらず仲がいいし、自粛ムードが薄れたときは何人かで集まって食事もした。音楽のイベントにも行った。
Twitterで仲良くなったオタク友達とはちょくちょく新大久保に行ったり鑑賞会を開いたりした。オタクと推しの話で盛り上がっているときが一番楽しい。ちなみに今応援している子たちは2020年の末に沼落ちしてギャーギャー騒いでいたグループではない。

諸事情で仕事が忙しくなり、こんな状況下でも出社する日々が続いた。残業が増えたせいで年収が大台に乗った。ほぼ毎日帰りにコンビニに寄って酒を買って、推しの出演するコンテンツを見ながらだらだら飲んで、寝て起きてまた会社に行く生活を繰り返していた。

「ふらにー」だったときのわたしが身を置いていた界隈の治安が悪くなりはじめたとき、少し疲れて一度離れたらもう戻れなくなってしまった。
ときどき思い出したようにnoteにアクセスして、わたしのすきな人たちがまだ何人か文章を書き続けているのをチラ見して、なんとなく安心してまたログアウトした。
非アクティブユーザーになってからも1年半前に書いた記事には未だ定期的にスキがついていて、インターネットって不思議なところだなと思った。

わたしのマインドはすっかり変わってしまっていて、前に書いていたような文章はきっともう当分書けないと思う。
恋愛に価値を見出していないし、結婚願望も薄れて、なんならずっと独身でもいい気がしてきた。
思想としてのフェミニズムやリベラリズムは自分の中で健在だけれど、それ関連のトピックを積極的にインプットしていると心が死ぬので情報を追うのをやめた。



しばらく会っていなかった大学時代の後輩と久しぶりに連絡を取ったのは、渋谷タワレコでデヴィッドボウイとのコラボカフェが開催されるらしい、というニュースを偶然目にしたからだった。
コロナが流行る前はよく一緒に映画に行ったり、飲みにでかけたりしていた趣味の合う子で、「これ行きたい」とリンクを送ったら「行きましょう」と秒速で返事がきて笑った。
ほんとうに仲のいい友人とは、1年以上会っていなくても、LINEのやりとりすらしていなくても、たった一瞬でかつての空気感を共有できるものだ。

丸1年映画から離れていたし、音楽もK-POPとK-HIPHOP以外はほとんど聴いていなかったので、はて話すことがあるだろうか、と若干心配していたけれど、杞憂に終わった。
駅で待ち合わせて、最近なにしてるとか仕事はどうとか近況報告をしながら入った一軒目のBGMがビートルズのリボルバーだったのだ。「一番すきなアルバムだ、最高だ! She Said She Saidが入ってるだけで優勝だ!」と早口で捲し立てるわたしに、後輩は「いやぜんぜんわかんないですね。わたしはマジカルミステリーツアーがすきです」とクールな口調でぶった斬る。
ビートルズのすきなアルバム論争なんてもう何度繰り返されたかわからない使い古しの話題なのに、懲りずに毎回盛り上がってしまうのが我々オタクという生き物なのだ。

後輩が「スパイダーマンの新作観てきたんですよ」と脈絡もなしに切り出した。界隈から離れていたわたしの耳にもその評判はふんわり届いていたので、「ほーんどうだった?」と訊いたら、「成仏できるので観てください」と言われて興味がわいた。
そろそろ映画生活に復帰したいな、と思っていたところだったし、全部ではないにせよ主要どころは抑えているシリーズの最新作なら気軽に観に行ける。ちょうどいいとっかかりだった。

後輩と会った翌日に前々作、その翌日には前作をおさらいして、次の週のサービスデーには約1年ぶりにTOHOシネマズ日比谷に足を運んでいた。
久々の映画体験はやっぱり最高で、すっかりモチベーションを取り戻したわたしは、重い腰を上げて推しアイドル以外の情報収集も再開することにした。
新しく作ったTwitterの閲覧用アカウントで、以前よく見ていた映画や音楽などのカルチャー関連と、ついでに経済系のニュースもフォローしたら、遮断していた外界に通ずる道が拓けたような感覚がした。

内側に籠っているのはすごく楽で、視野を意識的に狭めて自分の見たいもの、興味のあるものだけを消費する毎日は幸せだった。
でもそんな生活ばかり続けていたら、ふと周りを見たとき取り残されたような、置いてけぼりをくらったような気分になるのも事実だった。いわゆる浦島太郎状態というやつだ。

こんな中身のないnoteを書いたのも、一歩外に出てこちら側の世界と久しぶりに接触してみようかなと思ったからだった。
でも書くネタがほんとうになくて、推し尊いかわいい宇宙一愛してる、みたいな内容はちゃんと棲み分けて他所でやっているし、とりあえず来てみたはいいけどまた更新するかはぜんぜんわからない。

かつてわたしの文章を読んでくれていた方の期待に応えられるようなものはたぶん書けないし、戻ってきた意味あるのかな? それ以前に、これ読む人いるのかな?
まぁいいや。わたしのnoteだし。

あ、でもお茶さんとの交換日記を止めてしまってることだけが心残りだったので、次更新するとしたらそっちかもしれないです〜〜〜。予定は未定〜〜〜。


最後まで読んでいただき、ありがとうございます! ♡のリアクションはオールタイムベスト映画のご紹介です🎬