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「使いやすい」Web会議システムの共通項

テレワークにより、WEB会議システムを使い出す企業が突発的に増えました。

以前からずっとWEB会議を使っていた会社ならば良いのですが、「とりあえず無料枠でZOOMを使った」とか「Office365のライセンスを持っていたからTeamsを使った」といったように、積極的に製品を選んだわけでなく間に合わせた企業は、今後もそれで良いのか、今が考えどきだと思います。

そこで、うちにはどのシステムが合っているのか、真剣に考えてみようとなったときの検討要素として、ライセンス料と同じくらい重要視して欲しいのが「使いやすさ」です。

WEB会議はただの道具なので、その先にある「仕事をするために円滑にコミュニケーションする」ことが阻害されるようなものであってはいけません。
つまり使うのにイラつく製品はダメです。
強制的に使わされる社員は苦痛です。一生懸命商品を選定した担当者にとっても、「高けー」と言われるより「使えねー」と言われるほうが、自分自身を言われているようで気分が落ちます。

言ったもの勝ちの「直感的な操作性」

私たちは「使いやすさ」を何に見いだすのでしょう。

かつて日本の高機能なガラケーが一世を風靡しているときには、日本の携帯開発者はこぞって「iPhoneは使いにくい」と思いました。

確かに、初期iPhoneはコピペができなかったりといった、そもそもどうかと思う仕様はありましたが、その他にも「物理キーが無いとテンキーが打ちにくい」とか「ワンセグ、FeliCaが無い」とか、確たる人気を得た今でも変わらない仕様についても当時はボロクソ言われていた記憶があります。

しかしiPhoneが目指したのは「人間の感覚にフィットし、操作して心地よいUI」だったようです。瞬く間に世界の共感を得たのはiPhoneのほうでした。

これに懲りてから、日本のメーカーも「直感的な操作性」をうたった製品を多く出すようになりました。
ですが、そもそもその言葉の定義もなければ、その言葉を使うことが許されるための客観的な指標は無いように思えます。

だからといって根拠なく宣伝文句に入れるわけにもいかないので、UI研究所などでは、被験者に取説を与えずに新製品を操作してもらって、それでも使うことができるかを検証をしているところもあります。
しかしながらそういった実験では、被験者の状況そのものが非日常であり、自分で好きで買ったものをずっと何日間もいじるわけでもないので、実のところその手法では、「ボタンが見易い」とか「ヒント表示がわかりやすい」とか、表層的な評価程度とどまるのではないかと思います。

とは言いながらそこまで手間暇かけて評価している製品ならまだマシです。単にiPhoneに操作感が似ているとか、ユニバーサルデザインアイコンを使っているとかで「過去経験したソフトの操作性に近い」というだけで「直感的」と言っているだけの製品もあります。

最低限おさえたい「使いやすさ」のポイント

では何を持って「使いやすさ」を評価したらよいか。

身も蓋もないことをいえば、実際に使う人が実際の使い方で何度も試用してみるしかありません。でも現実的にそれが難しいでしょうから、これも私の主観にはなってしまいますが、経験上クレームになりやすかった部分を踏まえて、あらゆる製品ジャンル及び利用シーン、利用デバイスにおいて共通して重要となるチェックポイントを3点挙げてみます。

使用頻度の高い操作の実行手順が少ないこと

当たり前のようで難しい点です。

よくあるのが、「階層性の統一」などと言って、あらゆるメニューを統一的な深さにするパターン。論理的にはそのほうが美しいのかもしれませんが、使う方としてはどうでもよかったりします。

「一発設定」「一発接続」は重要です。これは別記事で掘り下げたので最後にご紹介しますが、「メニューが見やすい」とか「ボタンが押しやすい」といった視覚的な要素も大事ではあるものの、結局「手順が多くて面倒」だったらそれらの価値もダダ下がりなのです。

状況がわかりやすいこと

これは基本ですね。つまり、会議が始まっているのかいないのか。自分が繋がっているのか、切れているのか。誰が参加していて誰ができていないのか。

更には「自分の音声がミュートされているか否か」に至っては、見間違えると大事件が発生してしまうこと請け合いです。

メーカーで蓄積したノウハウの大小が如実にわかる部分でもあり、「見やすい」デザインセンスも問われるところです。

右クリックやドラッグ操作がないこと

タッチパネルで使われる場合もありますし、タブレットやスマホとの操作感の統一性という意味でも、右クリックやドラッグ操作は不要なUIが望ましいです。

とかくWindowsユーザーは、右クリックすれば何か便利なメニューが表示されるとか、マウスカーソルをかざせばヒントが出るとか、ドラッグ&ドロップでアイテムが移動できるとか、思いがちです。

その思いを叶えてあげるのも、「経験からの予測通りに動く」という意味では良いUIとする立場もあります。
しかし、MACには右クリックはなかったわけですし、特定製品から得られる経験値を利用しているに過ぎません。ましてやスマホではホバーイベントは使えません。

ちょっと横道に逸れますが、「スマートフォン対応」は今や当たり前ですが、何をもって「対応」なのか?

製品カタログの中に、「PC」「スマートフォン」という列見出しがあって、機能が行に羅列され、「○:対応」「×:非対応」「△:一部対応」などと穴埋めされた表があります。この表はあまり意味がありません
「機能がある」のと「機能が使える」のとではイコールではないし、PCとスマホで操作感が全く違っては、機能があることすら気づきません。

とりあえずメーカーとしては、他社製品にカタログ上見劣りしないよう「○」になるように開発を頑張るでしょうけど、「パソコンとスマホで同じ感覚で使える」かどうかは、使って見ないとわからないのです。

ATMの操作や自動券売機のように、基本的にはシングルタップで全て操作できるのが良いというのが筆者の考えです。

しかし、いろいろな考え方がある中で、「あらゆる利用シーン、デバイス」において重要なポイントとしてこれを挙げた大きな理由が以下です。

タッチUIがメインストリームである現在においては、仮に自社でタッチパネルのモバイル端末などを使わないとしても、使っている製品自体がそれを意識したUIにアップデートされる可能性がおおいにある

その際にがらっと操作性が変わったのでは、学習しなおしとなります。特にWEB会議では、バージョンアップを拒否することができないケースがほとんどです。

それはWEB会議ソフトだけでなく、従来型の「テレビ会議専用機」であっても他人事ではありませんでした。自分が使っている製品の操作性に慣れていたとしても、いざ拠点が増えて1台追加しようしたらまったくUIが変わった製品しかもう買えなくなっている、ということがありました。

例として、あるメーカーのテレビ会議専用機でも、従来はテレビのもののようなボタンまみれのリモコンで一発操作していたものが、新製品ではスマホの操作性を思わせるようなアイコンを十字ボタンと決定キーで選択するUIに変わりました。

この変更は、従来モデルを使い慣れた人にとっては「使いにくい」ものです。一方で、新しく使い始める人、特にスマホ世代にとっては、親近感があり迷うことの少ない操作性であると言えるでしょう。

メーカーとしては新しい顧客を取り込んでいきたいわけなので、このようなUIの刷新の流れは今後も続くと思います。

一方で、画面をシンプルにしようとボタンが少なくなると、シングルクリック(タップ)を多用しないと目的の機能にたどり着かないということになりかねません。上で言った「実行手順が少ない」とトレードオフの関係にもなります。

とりあえず試用してみて、「このUI、古臭っ」と思うような製品は、たとえそれが操作上困らなかったとしても、やめたほうが良いです。

まとめ

本記事では、「使いやすさ」の共通項としてチェックしておきたいポイントを3点挙げました。

しかし、ほかにも良質なUIの要素はたくさんあり、使う人やシーンに依存して重視すべき点が変わってくるでしょう。

今後の記事ではそのあたりも加えて少し細部も説明したいと思います。

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