【読書録】『本音』小倉智昭/古市憲寿
今日ご紹介する本は、『本音』(小倉智昭/古市憲寿)(新潮新書、2024年2月20日発行)。
小倉智昭氏が、古市憲寿氏のインタビューに答える形式でまとめられた一冊。小倉氏は、フジテレビ系列の情報番組であった「とくダネ!」の司会を務めたタレント。古市氏は、社会学者、作家であり、メディアでの露出も多い。おふたりとも有名な方々なので、これ以上の説明は不要だろう。
本書の出版は、古市氏の発案によるものだったそうだ。「とくダネ!」出演者の食事会で、小倉氏が、癌を患って臨死体験を経て人生観が変わったという話をした。そこでそれを聞いた古市氏が、小倉氏の人生を残しておきたいと書籍化を思い立った。その結果、「小倉節全開」のこの本が生まれた。
以下、特に印象に残ったくだりについて引用してみる。
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老後の楽しみ、についてのくだり。
自分に自信のない人へのアドバイス。
雑談力や、間を持たせることについて。
テレビでバランスを取るコメントをしていたことに関して。
不祥事やスキャンダルがあれば一発アウト、という風潮についてのくだり。
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とても読みやすかった。古市氏のインタビューがお上手で、テンポ良く会話が進む。目の前にふたりが座っていて雑談をしている様子が想像でき、あっという間に読み終わった。
トピックは多岐にわたる。前半は、ご自身の闘病や身辺整理の話、マスコミの世界に入るまでのパーソナルなストーリーが中心となる。闘病の苦しみや老後への不安は、セレブも一般人も同じ。悩んだり迷ったり、感動したり、社会の風潮に疑問を持ったりする、ひとりの生身の人間だった。
後半では、マスコミの内情などを赤裸々に語る。司会を行っていた「とくダネ!」での出来事。ジャニーズ問題についての見解や、接点のあった有名人とのエピソードなどが、どんどん展開していく。
本書を読む前の私の小倉氏に対しての印象は、ストレートに忖度せず物を言う人、というものだったが、本書を読んで、その印象はますます強まった。しかし、そのためにたくさんのクレームや嫌がらせを受けたそうで、そのエピソードにはゾッとさせられるものもあった。他方で、同氏が擁護した相手からもらった感謝の手紙の内容には、大いに心打たれた。
曲がったことが嫌いで、過激な発言もいとわない。まっすぐな性格で、物言いが痛快で、お茶目。そして、思いやりがあって優しく、謙虚な面もある。ご自分に学がないと言ったり、勉強しなかったことを悔やんだりくだりもあるが、社会を見る目は鋭く、本質を突いていると思う。同氏のことはあまり知らなかったし、正直言ってあまり興味もなかったが、本書を読んで同氏を身近に感じ、好感が持てた。ぜひ、これからもお元気でお過ごしになってほしい。
小倉氏や古市氏のファンの方にはもとより、マスコミの「中の人」のリアルな気持ちに触れてみたい方にお薦めだ。
ご参考になれば幸いです!
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