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【読書録】『稲盛和夫一日一言』稲盛和夫

今日ご紹介する本は、『稲盛和夫一日一言』(2021年、致知出版社)。今年(2022年)8月に亡くなられた名経営者である稲盛和夫氏の名言を、1日1つづつ読めるよう、366編収録している本だ。

稲盛和夫氏の経営者としての功績については、もはや説明不要だろう。京セラ、第二電電(現KDDI)の創業者。日本航空の会長に就任し、同社を再建させたことでも知られている。

稲盛氏の著書は、とても多い。私は、ずいぶん昔に、同氏の代表作『生き方』を読んで、感動したことを覚えている。同書は、2004年の刊行以来、150万部を突破したミリオンセラーとなっている。世界16か国で翻訳され、中国でも500万部を突破したそうだ。

そして、今日ご紹介する『稲盛和夫一日一言』は、そんな稲盛氏による366の名言が、1年366日に割り当てられている。新書サイズで、本自体もコンパクト。366編の1つ1つは、原則として新書半ページ分と短く、どれも1分もあれば読める。隙間時間に手に取り、気軽に稲盛氏の薫陶を受けることができる、なんともありがたい本だ。

以下、特に印象に残った箇所を、一部要約しつつここに記しておく。

1月1日~2日:人生の方程式
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
能力と熱意は、それぞれ0点から100点まである。自分の能力を鼻にかけ、努力を怠った人よりも、誰よりも情熱を燃やして動力した人のほうが、はるかに素晴らしい結果を残せる。
考え方とは、人間としての生きる姿勢であり、マイナス100点からプラス100点まである。世をすね、世を恨み、まともな生きざまを否定するような生き方をすれば、マイナスがかかり、人生や仕事の結果は、能力があればあるだけ、熱意が強ければ強いだけ、大きなマイナスとなってしまう。

2月9日:仕事の中に喜びを感じる
人間が本当に心からの喜びを得られる対象は、仕事の中にこそある。仕事をおろそかにして趣味や遊びの世界に喜びを見出そうとしても、一時的には楽しいかもしれないが、決して心から湧き上がるような喜びを味わうことはできないはずだ。真面目に一所懸命仕事に打ち込み、つらさや苦しさを超えて何かを成し遂げたときの達成感。それに代わる喜びはこの世にはない。

3月15日:「プラス方向」の考え方
仕事や人生を実り多きものにしてくれる正しい考え方
●常に前向きで、建設的であること
●みんなと一緒に仕事をしようと考える協調性を持っていること
●明るい思いを抱いていること。
●肯定的であること。
●善意に満ちていること。
●思いやりがあって、やさしいこと。
●真面目で、正直で、謙虚で、努力家であること。
●利己的ではなく、強欲ではないこと。
●「足るを知る」心を持っていること。
●感謝の心を持っていること。

4月24日:シンプルにとらえる
私たちはともすると、物事を複雑に考えてしまう傾向がある。しかし、物事の本質をとらえるためには、実は複雑な現象をシンプルにとらえなおすことが必要。事象は単純にすればするほど本来の姿、すなわち真理に近づいていく。

6月11日:試練は人生の分岐点
人間的成長には「試練」が不可欠だと考えている。「試練」に直面したときに、打ち負かされてしまうのか、妥協してしまうのか、それとも、「試練」に対峙し、苦難を克服しようと、さらに努力を重ねることができるのか。ここに人生の分岐点がある。

7月3日:人間としての「生き方」
一所懸命働くこと、感謝の心を忘れないこと、善き思い、正しい行いに努めること、素直な反省心でいつも自分を律すること、日々の暮らしのなかで心を磨き、人格を高め続けること。そのような当たり前のことを一所懸命行っていくことに、まさに生きる意義があるし、それ以外に、人間としての「生き方」はないように思う。

9月19日:人間性のよい人を雇う
どんなに賢い人を雇うにしても人間性のよい人を雇うこと。絶対に能力だけで採用してはならない。

10月22日:全き人格者となる
リーダーとは、まったき人格者でなければならない。集団を正しい方向に導くため、能力があり、仕事ができるだけでなく、自己研鑽に努め、心を高め、心を磨き、素晴らしい人格を持った人にならなければならない。

11月20日:許す心
心を高めることが現世の中で一番重要なものだとすれば、許せないものを許そうとすることは人間の感情において最も厳しい葛藤であり、最大の修行をさせられていると考えられる。しかし、これを乗り越えていくことが何よりも心を高めることにつながり、それによって魂が光輝くはずだ。

12月1~5日:経営12カ条
1.事業の目的、意義を明確にする
2.具体的な目標を立てる
3.強烈な願望を心に抱く
4.誰にも負けない努力をする
5.売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に抑える
6.値決めは経営
7.経営は強い意志で決まる
8.燃える闘魂
9.勇気をもって事に当たる
10.常に創造的な仕事をする
11.思いやりの心で誠実に
12.常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で

12月27日:人生の勲章
私たちは魂だけを持って来世に行く。財産も名誉も持っていけない。一人で旅立たなければならない。勲章は、より美しくなった魂、心の輝きだけなのである。

12月31日:終わりの価値を高める
人生は、宇宙のとてつもなく長い歴史からすれば、わずかな一閃いっせんにすぎないものかもしれない。しかしだからこそ、その一瞬に満たない生の始まりよりは終わりの価値を高めることに、われわれの生の意義も目的もあると考える。もっと言えば、そうであろうと努める過程そのものに人間の尊さがあり、生の本質があるのだと思う。

ここには到底全部書ききれないが、本書には、上記のほかにも、心に刺さる珠玉の言葉が沢山詰まっている。

稲盛氏の価値観は、私なりにまとめると「利他の心、感謝の心を持ち、人として正しいことをし、努力する。それによって、人格を高める」ということだと思う。

これは、日本人なら、学校の道徳の授業で習ったり、仏事の際の説教で聞くような、馴染みのある考え方だろう。しかし、これらは、「言うは易し」で、実際に行動に移すには、なかなかハードルが高い。

ところが、稲盛氏の、平易な言葉で丁寧に解きほぐすような、厳しくも優しい語り口にかかると、なぜか、じんわりと心に染み入り、すっと素直に受け止めることができるのだ。

私は最近、この本をベッドサイドに置いて、夜寝る前にパラパラとめくって目を通しているが、毎回、とてもポジティブな気分になり、明日も頑張ろうと思えるようになった。

ご参考になれば幸いです!

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