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【読書録】『DIE WITH ZERO』ビル・パーキンス

今日ご紹介する本は、『DIE WITH ZERO』(ダイヤモンド社による日本語版。2020年9月)。著者は、ビル・パーキンス(Bill Perkins)氏。児島修訳。副題は『Getting All You Can from Your Money and Your Life(邦題:人生が豊かになりすぎる究極のルール)』

著者は、米国生まれのコンサルティング会社CEO。ヘッジファンドのマネージャーや、ハリウッド映画プロデューサー、ポーカープレーヤーなどとして、様々な分野で活躍されている。本書は世界中でベストセラーになったが、著者にとっては、本書が初めての著書だということだ。

特に心に残ったくだりを引用してみたい(太字などの強調は原文ママ)。

人生で一番大切な仕事は「思い出づくり」

p44

人生の最後に残るのは思い出

p46

金を払って得られるのは、その経験だけではない。その経験が残りの人生でもたらす喜び、つまり記憶の配当も含まれているのだ。

p56

莫大な時間を費やして働いても、稼いだ金をすべて使わずに死んでしまえば、人生の貴重な時間を無駄に働いて過ごしたことになる。その時間を取り戻すすべはない。

p70-71

生きているうちに金を使い切ること、つまり「ゼロで死ぬ」を目指してほしい。

p74

年を取ると人は金を使わなくなる。

p87

人は死が迫っていないと、合理的な判断ができない。だから、今を最大限に楽しむことを我慢してまで、遠い未来のために必要以上の貯金をするようになる。だが、誰もが死と老化を避けられないことは紛れもない事実だ。だから、人生の残り時間を意識しよう

p108-109

子どもたちには、あなたが死ぬ「前」に財産を与えるべきだ

p115

たいていの場合、相続のタイミングが遅すぎて、相続人は値打ちのある金の使い方ができない。

p117

どれくらいの財産を、いつ与えるかを意図的に考え、自分が死ぬ前に与える。

p120

譲り受けた財産から価値や喜びを引き出す能力は、年齢とともに低下する。

p125

大切なのは、「金を稼ぐこと」と「大切な人との経験」をトレードオフの関係として定量的にとらえ、自分の時間を最適化することだ。

p132

死後に寄付するのは恐ろしく非効率である

p140

今しかできない経験(価値のあるものだけ)への支出と、将来のための貯蓄の適切なバランスを取る

p153-154

まだ健康で体力があるうちに、金を使った方がいい。

p164

金から価値を引き出す能力は、年齢とともに低下していく

p164

「金」「健康」「時間」のバランスが人生の満足度を高める

p173

あらゆる年代で、健康の改善は人生を改善する

p178

若い頃に健康に投資するほうが、人生全体の充実度は高まる。

p180

時間は金よりもはるかに希少で有限

p184

時間をつくるために金を払う人は、収入に関係なく、、、、、、、、人生の満足度を高めることがわかっている

p184

どんな経験でも、いつか自分にとって人生最後のタイミングがやってくる。

p190

私たちは、人生のある段階から次の段階へと前進し続ける。ある段階が終わることで小さな死を迎え、次の段階に移る。

p190-191

私たちが思っているほど先延ばしできない経験は多い。

p192

人は終わりを意識すると、その時間を最大限に活用しようとする意欲が高まる

p196

現在をスタート地点にして、予測される人生最後の日をゴール地点にする。それを、5年または10年の間隔で区切る。区間は、たとえば5年区切りなら「25~29歳」、10年区切りなら「30~39歳」といったものになる。(中略)これがやりたいことを入れる「タイムバケット」(時間のバケツ)となる。

p198

「死ぬまでにやりたいことリスト」に期間を設定すると見えてくるのは、物事にはそれを行うための相応しい時期がある、という事実だ。

p201

私たちは人生のある段階で、まだ経験から多くの楽しみを引き出せる体力があるうちに、純資産を取り崩していくべきなのだ。

p216

資産のピークは「金額」ではなく「時期」で決める

p222

人生を最適化するよう金を使う場合、大半の人は45〜60歳のあいだに資産がピークに達する。

p227-228

高齢になると、金を使う機会は自ずと減っていく。だから、老後のために過度に貯蓄するのではなく、金をもっと早い段階で有効に活用することを計画すべきなのだ。

p235

資産を取り崩すタイミングで、やりたいことを見直すことも推奨する。(中略)特にやりたいことを見直すのに相応しいタイミングが、資産がピークに近づいているときである。

p238

非対称リスク(失敗するリスクより成功によって得られるメリットのほうがはるかに大きい状況)に直面したときには、チャンスをつかむために大胆な行動を起こすことが合理的な判断になる。極端に言えば、デメリットが極めて小さく(あるいは、失うものが何もなく)、メリットが極めて大きい場合、大胆な行動を取らないほうがリスクとなるということだ。

p243-244

(リスクを取るなら)一般的にそれは人生の早い段階が良い。若い頃のほうが失敗のダメージは少なく、成功して得られるメリットは大きくなる。

p258

行動を取らないことへのリスクを過小評価すべきではない(中略)。大胆な行動を取らず、同じ場所に留まれば、安全に思えるだろう。だが、それによって何かを失っている可能性にも目を向けるべきだ。

p258

感想

ここまで読んでくださった方には、もうすでに本書のメッセージが十分伝わっているだろう。

この本のタイトル 『Die with Zero』は、直訳すると「ゼロで死ね。」という意味だ。何ともショッキングなタイトルだが、この本が畳みかけてくるメッセージは更にショッキングだ。

人生で最も大事なことは、思い出作り。人生でわたしたちができる経験には賞味期限があり、健康でリスクが取れる若いうちに有効にお金を使って豊かな経験をするのが良い。若いときにやった無謀な冒険は、その後も一生にわたって思い出に残り、老後も、茶飲み話などで振り返って楽しむことができるだろう。一生消えることのない豊かな「配当」だ。

老後になるとお金を使わなくなる。お金を必要とする旅行や趣味などの活動が体力的に難しくなり、そういう活動に興味を失っていくのだ。有限な時間を必要以上に労働に費やし、せっせと貯蓄に励んでも、所詮死に金になる。家族に残したり寄付したりするにあたっても、相手が有効にお金を使えるように、早めに与えるべき。

本書のメッセージには、腹落ちするところがとても多かった。

「年を取るとお金を使わなくなる」というのは、高齢の両親の歳の重ね方を見ていると、全くその通りだと思う。年々、どんどん外出の意欲が失われていき、好きだった旅行に誘っても、疲れるようで、以前のように興味を示さなくなってしまった。私の両親がお金を使うのは、生活費のほかは、せいぜい孫へのお小遣いくらいだろう。

また、「人生、いつ終わりが来るか分からない」ということを感じることも増えた。ここ数年で、私の友人知人が、若くして突然亡くなったり、重い病気が発覚するケースが増えた。きっと、もっとやりたいことが沢山あっただろう。さぞかし無念だっただろう。

一度きりの人生、後悔はしたくない。

この本で提唱する「バケットリスト」の作成、すなわち、「死ぬまでにやりたいことリスト」に期限を設け、終わりを意識しながらやりたいことに取り組む、というのは良い方法だと思った。

ただ、日本の読者としては、この本をそのまま鵜呑みにすることなく、気を付けるべきこともあると感じた。

まず、著者は米国生まれだが、右肩上がりの経済成長ストーリーが前提となっているように感じた。日本は少子高齢化社会、景気も悪いし通貨も弱い。もらえる年金額も少ないという人が多いだろう。こういう状況で、若くして貯蓄を取り崩すのは大変勇気が要ることだ。「ゼロで死ぬ」ためには、リスクを取ることが大事だというのはわかるが、資産取り崩しのピークやスピードは人それぞれ。急にバンバンお金を使いまくるのではなく、余裕を持たせた資金計画を練るのが良いだろう。

また、「タイムバケット」に、期限付きのやりたいことリストを作ったとしても、やりたいことはどんどん変わりうる。でも、一旦リストを作ってしまうと、几帳面な日本人は、そのタスクを完了することを義務的に捉え、かえって視野が狭まり、不幸せになったりしないだろうか。少なくとも私は自分にそういう傾向があると思っている。新たに興味があることが出てきたら、いつでもリストを修正して、挑戦していいのだ。「タイムバケット」を実践するにしても、過度に自分を縛らないようにすると良いと思う。

以上、少々注意すべき点はあると思うが、貯蓄好きの日本人にとって、貯めこまず、思い出に投資するという視点は重要だ。初老に入り、残りの人生が見えてきたアラフィフの私にとっては、どストライクな一冊だった。

皆さん、健康なうちに、お金を使ってやりたいことを楽しみ、豊かな思い出を作りましょう!

ご参考になれば幸いです!

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