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源氏物語・第一部をラブぬきで解説!構造をつかむとツボがわかる!

源氏物語を「恋愛小説」だと思っていませんか?実は政治ネタ、熱い友情、いろいろあるんです。ラブ要素を思いきって削除すると、ストーリーの骨格が見えてきます。すると『源氏』の凄さも解ります。

動画で見たい方は、こちら

この記事は、YouTube動画『源氏物語Su-分講座 第一部(出世編)』の内容を、画像と文章でまとめたものです。動画で見たい方はYouTubeを、テキスト版で読みたい方は当記事をどうぞ。

前置き:源氏物語、何が面白いのか解らない…

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源氏物語といえば、「光源氏と女性たちの恋の話」というイメージの方、多いと思います。また「…正直、この古典の何がすごいのか解らない」という声もよく頂きます。

それ、当然です。

源氏物語の原文、または現代語訳を読んで、即「面白い!」という方は、古典に相当慣れた人か、または平安が好みの方でしょう。それくらい、源氏物語は「つかみにくい」話なのです。

では、どうすれば解るのか。…実は、ラブ要素を抜いてみると、この本のエンタメ性が浮き彫りになるのです。という訳でこの記事では、恋愛ネタをカットしてご覧に入れます。

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お断り:第一部とは

この記事で扱うのは、源氏物語の「第一部」だけです。「第一部って何?」と思う方、「それ以外の箇所が知りたい」という方は、以下の記事をご覧ください。

本題:源氏物語・第一部、基本の構造

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源氏物語は全54巻ですが、その中で第一部、それもストーリーにかかわる巻だけ挙げてみました。この巻々を見わたすと、

第1巻「桐壺」で主役が誕生し、
12・13巻「須磨」「明石」でドン底に沈み、
そののち復活、33巻で大成功に至る、

という、大まかな流れが見えてきます。

もう少し細かく見てみよう:桐壺の巻

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主人公・光源氏が、天皇の息子として誕生します。当時の宮廷には、右大臣派(筆頭は「弘徽殿(こきでん)」と呼ばれる妃)と左大臣派という、2つの派閥がありました。で、この弘徽殿が諸事情ありまして、光源氏を目の敵にしているのです。彼女はのちに、光源氏の最大の政敵となります。

なので父帝は光源氏の将来を心配し、左大臣派にくっつけました。加えて「なまじ皇位継承権を持っているから危ないのだ」と、皇族から外してしまいます。これ、当時の人的には【挫折】なんですね。
「あんなに美しく才能も人柄も優れた皇子が、天皇になれない/皇族から落とされるなんて…」
と、世の不条理をしみじみ感じるような出来事です。

光源氏の人生はこのように、「のっけからつまづいた」訳です。

紅葉賀の巻:出世と友情

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臣下に落とされた光源氏ですが、持ち前の才覚でめきめき出世します。この「紅葉賀(もみじのが)」巻では、見事に舞って儀式を成功に導き、恩賞で高い位をもらいました。

その光源氏には、親友がいます。同じ左大臣派の頭中将(とうのちゅうじょう)です(この人の呼び名、どんどん変わっていくんですが、面倒なので「頭中将」で通します)。

光源氏と頭中将、ふたりの「イケメンにして高貴、しかも優秀」という貴公子は、いっしょに遊んだり出世を競ったりしながら成長していきます。

須磨の巻・明石の巻

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光源氏は、人生最大の危機に見舞われます。右大臣派側の天皇が即位したため、弘徽殿らが権力をほしいままにし、光源氏を葬り去ろうとしたのです。光源氏は都にもいられなくなり、須磨・明石でわび住まいします。

多くの人が「光源氏がたと見られては危険だ」と離れていく中、それでも留まってくれる人もいました。その筆頭が頭中将です。彼は弘徽殿らに睨まれるのも構わず、須磨まで見舞いに来てくれたのでした。

絵合の巻:親友との第1ラウンド

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いろいろありまして、結局、右大臣派は勝ち切ることができず失墜しました。代わって、都に返り咲いた光源氏が躍進します。

すると今度は、光源氏vs頭中将という政争が始まるのです。

「絵合(えあわせ)」巻では、宮中で絵のコンテストがひらかれます。文化力を競う勝負です。光源氏派と頭中将派、競り合いますが、この第1ラウンドは光源氏派が勝利しました。

第2ラウンド、しかし決着には至らない

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「少女(おとめ)」巻では、光源氏が決定的な勝ちを決めます。しかし頭中将、まだあきらめず、さらに争う姿勢を見せます。

決着、そして皆が幸せに

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頭中将との戦いに、ついに決着がつきました。光源氏は出世の頂点に立ち、頭中将はそのNo.2となります。しかも光源氏は、皇族の身分に復帰しました。

つまり、第1巻で失った身分を回復したのです。

光源氏も頭中将も、皆が幸せになり、ハッピーエンドとなりました。

まとめ:源氏物語・第一部は「ザ・エンタメ!!」

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源氏物語の第一部は、今日のマンガなどにも見られる「エンタメの王道」構造となっています。

出だしで挫折→最大の危機→最後の勝者に

という筋書きです。その途中には、恐ろしい敵やアツい友情、ラスボスは親友、などなど、エンタメを面白くする要素がたっぷり入っています。

千年前に、エンタメの根幹を創りあげた。

それが源氏物語の凄さであり、傑作と言われるゆえんです。

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ご高覧まことにありがとうございました。次回もよろしくお願いいたします。

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