源氏物語・第１部のあらすじ解説第３弾！

源氏物語の、最も源氏物語らしい部分と言えば第１部。そのあらすじを３回に分けて解説します。本日は締めくくりの第３弾、「薄雲」～「藤裏葉」巻です。光源氏と頭中将の政争は、光源氏優位で決着がつき、頭中将も含めて、みんなが幸せになって大団円です。

当記事は、YouTube動画「砂崎良の平安チャンネル源氏物語Su‐分講座」の内容を、スクショとテキストでまとめたものです。動画で見たい方は上のYouTubeを、文で読みたい方は当記事をどうぞ。

まず第１部の骨格を確認！

源氏物語の第１部は、

１巻「桐壺」：主人公・光源氏が誕生！
のっけから人生につまづく
12巻「須磨」・13巻「明石」：ドン底に沈む
その後がんばって盛り返す
33巻「藤裏葉」：大成功を収めハッピーエンド！

という骨格になっています。このストーリーに恋や友情、権力争いが絡みます。

それでは本題：「薄雲」巻とは

「薄雲」巻では、光源氏の運命の人・藤壺が亡くなります。そして藤壺の息子であり、時の天皇である冷泉帝が、

「自分の本当の父親は光源氏だ」

という秘密を知ります。…現代人なら大ショックを受けるところですが（むろん冷泉帝も、なりに動揺はするのですが）、この時代、親への孝行が美徳であったりしたせいで、現代人が思うような騒動は起きません。父子の情愛が尊ばれていたせいもあり、冷泉帝は光源氏をいっそう慕わしく思って、

（これからは父上にもっと尽くそう）

と考えます。出世レース最中の光源氏にとっては、【時の天皇】という、最高の味方を得た訳です。

また、この「薄雲」巻とその次の巻にかけて、光源氏の妻・紫に焦点が当たります。紫さん、少女時代がイキイキしていた割に、結婚後は一時期めだたなくなってしまうんですが（たぶん、玉の輿ゲット！めでたしめでたし…で書くことがなくなった^^;）、須磨・明石という光源氏の逆境時代に、メキメキと存在感を増してきます。

【光源氏の留守宅を守りぬく賢い妻】

に成長していくんですね。そしてこの「薄雲」巻では養女も迎え、名実共に良妻賢母となります。夫の浮気のムシも抑えられる出来すぎ妻です(笑)。

「少女」巻：権力闘争、いちおう決着

「少女（おとめ）」巻では、光源氏と頭中将の出世争い第２ラウンドが戦われます。そしてその結果は、…光源氏の養女が皇后に決定！　つまり、光源氏の勝利です。今の天皇の時代に政権を担うのは、頭中将でなく光源氏と決定しました。

しかし頭中将も、すなおに引っ込むタマじゃありません。

頭中将の反撃プラン。それは雲居雁（くもいのかり）ちゃんという娘でした。「今の天皇の皇后は決まってしまった、なら次代の后を狙おう」という計画です。

しかしここに、思わぬ伏兵が登場します。光源氏の長男・夕霧（ゆうぎり）です。雲居雁ちゃんとは幼馴染で、ピュアな初恋を育んでいたのです。

二人の仲を知った頭中将は激怒します。よりにもよって、皇后の座を競うレースで光源氏に負け、雪辱を期して雲居雁に目をつけた矢先です。しかも、その光源氏サイドの男により、娘にミソがついた形です。頭中将は怒りを抑えられず、二人を引き裂いてしまいました。

一方、勝利者となった光源氏の方は、六条院という理想の大邸宅を築いていました。そして愛妻・紫や、彼女が育てている姫君、姫君の生母・明石君、皇后となった養女など、家族全員で華やかに、かつ幸せに暮らします。

（雲居雁や六條院のエピソードは、やや感情的な頭中将と、余裕ある光源氏を対比させ、二人の器の違いを描いています）

話はちょっと脇道へ：玉鬘１０帖

「少女」巻と「梅枝（うめがえ）」巻の間には、物語内時間にして４年の空白があります。ここに差し込まれているのが、「玉鬘（たまかずら）１０帖」と俗に呼ばれる10巻です。新ヒロイン・玉鬘を登場させ、六条院のすばらしさ豪華さを描くサイドストーリーです。

「藤裏葉」巻：盛大なるハッピーエンド！

32巻「梅枝」では、光源氏が娘の嫁入り支度をする様子が描かれます。そして33巻「藤裏葉」。この巻は、もう、ひたすら大団円です。

まず頭中将が、娘・雲居雁と夕霧（光源氏の息子）の結婚を許します。つまり雲居雁ちゃんは、もはや后争いには参戦しません。これは、光源氏視点では娘のライバルが減ったことを意味します。実質的には頭中将の敗北宣言、光源氏の勝利がほぼ決定しました。

次に光源氏の娘が贅美をつくして、皇太子のもとへ嫁ぎます。結婚に際し、姫君の養母である紫と、身分低い生母・明石君が対面しました。同じ男性を夫とする女どうし、わだかまりもあった二人ですが、この出会いで和解します。姫の成婚と母たちの融和、二つそろってめでたしめでたしです。

極めつけに、光源氏がさらに出世します。なんと皇族に復帰できてしまったのです。思い出してください、1巻「桐壺」で、光源氏が皇籍から落とされたときに、この物語は動き始めました。いま、光源氏は地位回復をなしとげたのです。また栄華の集大成として、天皇と上皇、二人そろって六条院をお訪ねくださるという、最高に名誉なイベントもあります。

かくして。
光源氏は、天皇にはなれませんでしたが、代わりに天皇の密かな父となりました。
運命の女性・藤壺を妻にすることはできませんでしたが、代わりに藤壺の姪に当たる、紫というパーフェクト・レディと幸せな家庭を築けました。

このように、主人公・光源氏は苦難の果てに大成功し、「昨日の敵」だった頭中将もふくめて、皆が幸せになって第１部は終わります。

まとめ：第１部・完(笑)

源氏物語・第１部は、
・主人公はしょっぱなから皇位継承権も、運命の女性も失ってしまった
・もうダメかと思われる挫折も経験した
・しかし挫折が成功につながって、最後は大勝利、大団円となった
という、王道のエンタメ作品です。

…そして、ここで完結したかに見えた物語は、サイドストーリーの追加などののち、新たに「第２部」としてリスタートするのです。（まるで現代の少年ジャ〇プですね笑）。

ご高覧誠にありがとうございました。次回、第２部の解説記事をご期待ください！