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7月23日(2011年) あの人の力で勝てた試合だと思う

 2011年7月23日(土)、浦和レッズは埼玉スタジアムにヴァンフォーレ甲府を迎えて、J1リーグ第6節を行い、2-0で勝利した。リーグ戦の後半開始にあたる18試合目だった。この日、スタジアムの北門付近に、17日に亡くなられた森孝慈さんへの献花台が設けられていた。

 森さんの告別式は、この前日22日に行われた。ご冥福を祈るほかに、いろいろ語りかけてしまったように思う。内容は全部覚えていないが、一つ記憶にあるのは、

「森さん、これからもレッズをよろしくお願いします」
「いや、そりゃあんたの仕事じゃろうが」

 そうだった。これからは何があっても森さんを頼ることができないのだ。あらためてそう思うと、寂しさと不安でいっぱいになった。

 甲府戦。この日のMDPではもちろん森さんの追悼特集を組んだ(=トップ写真)

 献花台には花などを持った人が間をおかずに訪れていた。久しぶりに見る人も多かった。森さんが会わせてくれたことになる。試合前は、ほとんどそこにいたかもしれない。

 試合はいきなり青ざめる展開だった。
 12分にGKの加藤順大が得点機会阻止で一発退場。ラインの裏に抜け出した相手をエリア外で止めようとして引っかけてしまった。
 GKには山岸範宏が入り、前線を1枚削って対応した。それほど劣勢にはならなかったが、点は取れず前半は0-0。無失点にホッとする気持ちが、点を取れない悔しさを上回ったのが自分でも情けなかった。

 何とか1点取れ! その願いは思わぬ形で叶った。52分、柏木陽介のパスに左から平川忠亮が走り込んだ。相手DFが一瞬早くクリアするが、平川も脚を出した。これが絶妙なシュートになった。ボールは測ったような軌道を描いてGKを越え、ゴールイン。「年イチ」と言われていたヒラのゴールが、この大事なときに飛び出した。

 そこからは耐える展開だった。数的有利を生かした甲府の攻撃を体を張って止めていた。ときおりカウンターで追加点を狙うが点差は広がらなかった。しかし73分、前寄りにポジションを取っていた相手GKを見て、柏木がミドルシュート。これが決まって2-0と甲府を突き放した。
 こうなれば、後は守るだけ。さらにギアを上げてきた甲府の反撃を抑えて、レッズが勝ちを収めた。

 レッズは17試合を終えて3勝9分け5敗の14位。負け数は多くなかったが引き分けが試合の半分以上を占めて勝ち点が伸びなかった。後半戦の始まりに勝ち点3を取れたことは大きかった。順位も12位に上げた。

 もう頼れない、と言いながら、試合中は森さんに「この試合勝たせてください」とずっと願っていた。甲府のシュートがバーをたたいたのが2回、バーすれすれを越えたのが1回あったと思うが、僕の目には甲府のシュートが来るたびに、グッとクロスバーを押し下げてくれる森さんが見えていた。
 ヒラと陽介のゴールのときには見えなかったから、あれは2人の実力だったのだろう。

 試合後、献花台はお供えでいっぱいになっていた。森さんの写真は、試合前より微笑んでいただろうか、それとも疲れていただろうか。

 森さん、おかげさまで今日は勝てました。これからは自分たちの力で勝っていきます。でも、ときどきはまたお願いします。

 最後にそう心の中でつぶやいた。

 さて、みなさんは2011年7月23日、何をして何を感じていましたか?

【あの日のわたしたち~浦和レッズ30年~】は、レッズサポーターのみなさんから投稿を募っています。浦和レッズ30年の歴史をいっしょに残していきましょう。詳しくはマガジン「あの日のわたしたち~浦和レッズ30年~」のトップページをご覧ください。


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