見出し画像

分からないを楽しむ!哲学の古典をとりあえず読み進めるポイント

「哲学の古典面白いよ!みんな読もう!」と布教を続けていると、ありがたいことに興味が出てきたから読んでみようかなと思ってくれる人も出てきます。しかし、悲しいかな、馴染みがない人にとって古典を読むの骨の折れるもの。分からなすぎてなかなか続かないということもままあるでしょう。私は学部時代に同じ経験したので、気持ちがめちゃくちゃに分かる……!!!

古典読解においてはたしかに慣れや知識がものをいうところが多々あります。とはいえ、慣れる前に飽きたり挫折したりしてしまっては元も子もありません。経験を積んでいくためにも、最初は分からないなりに楽しく、カジュアルに古典を読んでいくことが大事だと思いますし、初心者でも古典を楽める方法もいくつかあると思います。

ということで今回は、古典を読むしんどさを少しでも解消すべく、哲学の古典を読むときのポイントをご紹介していきます!あくまで私の読書方法ですが、参考までにご覧ください。


①大まかな主題を掴む

知らない映画見に行く前に公式HPであらすじを読むように、まずはその本が何についてどんな風に話をするものなのかを簡単に情報収集しましょう。慣れれば著作の序文でわかるものですが、初っ端から「は?」ってなることもままあります。そんな時は入門書や訳者あとがきをパラっ……と開いて、「コレは社会の話をするやつなんだな…」「因果性の話が始まるんだな〜」くらいの知識を仕入れておくと良いでしょう。

(なお、ここに時間かけすぎるとへばってしまうので、ほんとにパラっ……くらいでいいです。ゲームの攻略たくさん読んでもボスに勝てないのと同じで、別に頑張って解説書読んだからといって内容が分かるようになるわけでもないです。必要になったらまた読めばいいのでサクッと次に進むのがおススメ。)

②分からないところは潔く飛ばす

古典を一度読んだだけで完全に理解することは不可能です。古典というものは、3周しないとグッドエンドにもたどり着けない超やりこみゲーなのです。なので、分からないところは潔く飛ばし、体力を温存しながら読み進めていきましょう。実際、後々の箇所で同じ内容がより簡単に説明されている場合もありますし(カントやヘーゲルにありがち)、別の箇所を読むことで初めて単語の意味が理解できるようになるとかザラです。1周目で回収できないイベントはフラグが立つまで飛ばしましょう。その際、後でまた戻ってこられるように付箋を貼ったり、「は?」「意味不明…」などと書き添えておくとなおよしです。

③気になるところから読む

古典は最初から読めば分かるというものではありません。哲学書というのは、言うなれば「哲学」という名の3000年続く長編シリーズマンガの途中の巻なので、どっから読もうと「途中」なことには変わりないのです。分からなさが変わらないなら、より楽しめる道を選ぶのが吉です。「序盤つまんねえな…」と思ったら、面白そうなタイトルの章までスキップしちゃいましょう。読み進めて慣れポイントを貯めるためにも、つまんない章はどんどん飛ばして楽しいとこをどんどん読もう! 飛ばしたところは、後々気になった時に戻って来ればよいのです。

④身近な例に置き換えながら読む

抽象的な議論にとりあえずついていくために大切なことは、書かれていることを自分の経験や知識に当てはめて「つまり、こんなかんじのこと?」と暫定的なイメージを持つことです。意味がよく分からない歌詞の曲も「○○のイメソンっぽいな…」と思えばなんとなくの意味を想像することができるようになって好きになれるように、差し当たりのイメージがあればノリで話についていけます。

ポイントは、古典を「理解する」ためではなく古典と「対話する」ためのものとしてイメージを使うことです。古典と私達の間には途方も無いギャップがあり、私達が思い浮かべることは著者が思い浮かべていたこととズレていることが大半です。ズレは辻褄の合わなさや言葉遣いへの違和感となって現れてきますが、そのズレに気づくためにも身近な例に当てはめてみて「もしかして、こういうことですか?」と古典に対して問いかけてみることが大切なのです。そうしたやりとりの中で、古典の中に私たちとは異なる何かを発見できれば万々歳。かつ、発見したものが面白そうだな〜思えたなら、2周目に進んだり、関連する本を読んだりするという新たなたのしみにつながります。例を挙げることは、差し当たり古典と話を合わせるためにも、ゆくゆく議論深めていくためにもマジで有効なので、疲れない程度にやってみてください。

⑤マジで分かんなかったら分かんないことを愚痴る

古典はイメージや解釈を通して対話が弾めば弾むほど面白くなるもの。逆にこっちからなんも言うことがない本はクソつまりません。あまりに意味不明でなんのコメントもでず、古典と話が弾まないという時の最終手段、それはキレることです。分からなさへの憤りを可能な限り言葉にして、具体的に愚痴りながら読み進めると、分からなさの「あるある」が見えてきて面白くなることがあります。レヴィナスは不穏な空中リプライみたいに名前を出さずに人の批判するよねとか、カント先生って最初の説明が1番分かりにくいから初見殺しだよねとか、キルケゴール 永遠と同じ話するなとか、ニーチェはなんでビックリマークの後にハイフンつけがちなの?とかね。私は学部時代、この方法で全てを乗り切りました。愚痴は問題提起のもとということわざもありますので(無い)、切羽詰まったら本気でキレましょう。複数人で集まって愚痴るとなお楽しいよ。

⑥書き込む

私は元々何にでも書き込みしながら読むタイプなので、大事そうなところに線を引くのはもちろん、主語や述語に記号をつけたり、指示語とその内容を線で結んだり、番号振ったり、話題の変わるところに印つけたり、話が脱線してるところや要らん悪口などはカッコにくくったり、色々整理しながら読んでいます。古典はぶっちゃけ暗号なので、読むというより解読するという姿勢で挑むと良いかもです。

まとめ:古典は死にゲー

古典は小説や新書の仲間ではありません。やりこみ要素満載の高難易度死にゲーです。プレイヤースキルが高くなればある程度はすいすい戦えるようになりますが、慣れていない人は潔く分からなさにぶち当たって死にながら「クソーーーーーー!!!!」「こんなん無理ーーー!!!!」と叫ぶ遊びを楽しんでみてはいかがでしょう。

もしあなたが古典をなんとなくでも楽しめているのなら、適度に手を抜いて読むようにすると良いでしょう。知らないアーティストのライブを楽しむような感覚で、分からないなりにノレるとこだけノッて、適度にコールアンドレスポンスしながら盛り上がり、面白かったな〜と思うところをもう一度読んでみればいいのではないかと思います。

とにかく、1周目で分かろうとしないこと。むしろ、分からないことを楽しむようにするのが1番です。古典に関しては、分かったことより、分からなかったことから得るものの方が多いと私は思います。古典を通して、私が分からないこと、私の思い至らないこと、私の中には無いことに出会うこと。それによって「私の考え」がどんなものかを知り、自己批判しながら思考を深めていくこと。それが分からないことを楽しむということであり、古典を読む醍醐味でもあります。「古典の楽しみ方とはそういうものだ」と思えば、もっと気楽に古典と付き合えるのではないでしょうか。

蛇足
ちなみに、私の美化創作読んでいる人は、キャラが喋っていると思って古典を読むのもオススメです☆ 意味わからない部分もキャラクター性として許せるし、むしろ推しキャラの供給ありがとうという気持ちになれる説あります。ソシャゲの辛い周回にも耐えるオタクパワーは古典に対してもかなりの忍耐を発揮するので有効活用していきましょう。私はオタクパワーで乗り越えようとした結果、いつのまにか漫画を描いていました。古典わかんね〜〜〜〜楽しい〜〜〜〜〜おいでよ古典沼!!!!!!完。


面白いと思ったらスキやサポートしてくださるととっても嬉しいです!!