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競馬で俳句【1】バレンタインステークス

俳句に欠かせない、季語。
春であれば「風光る」「卒業」「桜」などが季語の一例として挙げられます。

実はこの季語、競馬のレース名に使われていることが多いのです。
そこで、競馬ライターであり俳人でもある筆者が、季語の使われているレース「季語レース」をご紹介します。

2020年2月15日、16日に行われる季語レースは、4レースです。

2月15日(土)
東京10R 雲雀ステークス

2月16日(日)
東京9R  初音ステークス
東京10R  バレンタインステークス
京都9R  こぶし賞

今回は、この中からバレンタインステークスを取り上げたいと思います。


■バレンタインステークスとは

舞台は東京競馬場。
ダート1400mで行われる4歳以上のオープン特別競走です。

2月のG1に向けて……というメンバーではないかもしれませんが、ダートレースをこれから盛り上げていこうという馬たちが集います。
きらりと光る逸材を見つける楽しみのあるレースです。

また、以前にもバレンタインステークスという名のレースがありましたが、そちらは芝のレース。
現在のバレンタインステークスの傾向を探るには、2017年からのデータしか存在しませんのでお気をつけください。


■季語:バレンタインの日

季語としては「バレンタインの日」が正式な使い方となります。
傍題の「バレンタインデー」を使うこともあります。

「バレンタインの日」とは、2月14日、270年頃殉教した聖バレンチノの記念日のことです。

ローマ皇帝クラウディウス二世は、戦争への士気が落ちるという理由で結婚を禁じます。
これを哀れに思ったバレンチノは、内密に若者たちを結婚させました。
しかし、それが皇帝に知られてしまい、ローマの宗教への改宗も拒否したため、撲殺されたと伝えられています。

この伝承より「愛の日」とされ、日本では特に女性から愛を告げる日となっています。
好きな人、親しい相手にチョコレートを贈るという行為は、すっかり一大イベントですよね。

例句として、以下の句を取り上げたいと思います。

金色の封蠟バレンタインの日  水田光雄
いつ渡そバレンタインのチョコレート  田畑美穂女

1句目の作者、水田光雄さんはわたしの俳句の先生でもあります。
ちなみに私はこんな句を詠みました。

立ち漕ぎの自転車バレンタインの日  笠原小百合


■バレンタインステークス過去の勝ち馬

現在の条件となってから過去3年分しかデータがありませんので、今回は以前行われていた芝のレースでの勝ち馬をご紹介したいと思います。

1995年の勝ち馬、オフサイドトラップ。
東京芝1800mという舞台で、1番人気に支持され見事1着となりました。

しかし、オフサイドトラップはここを勝利した後、屈腱炎を再発。療養に入ります。
復帰後はG2、G3で2着、3着はあるものの、なかなか勝ちきれないオフサイドトラップ。
それは、屈腱炎再発の恐れがあり、強い調教ができなかったためでした。
引退も視野に入れながらの難しい時期を過ごしましたが、ようやく光が見えてきます。
1998年7月、バレンタインステークスから3年5ヶ月後となった勝利の美酒は、蛯名騎手を背に迎えた七夕賞。
そこから8月の新潟記念も制し、重賞2連勝で、G1・天皇賞(秋)へと駒を進めます。

天皇賞(秋)の圧倒的1番人気はサイレンススズカ。
しかし、驚異の逃げを見せたサイレンススズカは第3コーナー過ぎで故障発生、競走中止となってしまいます。
立ち止まろうとするサイレンスズカ。
それを避けるため後続がばらつく中、オフサイドトラップは最内コースを通り、ひたすらにゴールを目指します。
そして、迫るステイゴールドの猛追を振り切り、見事、8歳にしてG1馬の仲間入りを果たしたのでした。

1998年天皇賞(秋)というと競走中止、予後不良となったサイレンススズカの悲劇をまず思い浮かべる方は多いかと思います。
しかし、3度の屈腱炎にも負けることなく、見事G1という大舞台で勝利を掴んだオフサイドトラップを称えることも忘れないで欲しいと、個人的には思うのです。

ちなみに、1998年はそのサイレンススズカがバレンタインステークスを制しています。
サイレンススズカの7連勝のはじまりは、バレンタインステークスだったのです。

同じバレンタインステークスの勝者である、オフサイドトラップとサイレンススズカ。
天皇賞(秋)で、2頭の明暗は分かれました。
改めて、競馬に潜む「ドラマ性」を痛感します。


■2020年バレンタインステークス注目馬

2020年のバレンタインステークス、私の注目馬はドリュウです。

前走1200→1400の距離延長は、吉と出るのではないでしょうか。
鞍上は先週重賞勝ちのミルコ・デムーロ騎手というところも注目です。
週末は少しグズついたお天気となりそうなので、それも好条件かと。
後方一気の脚が決まることを期待したいです。

また、ドリュウの馬主はミルファームです。
以前、ミルファーム代表の清水さまに取材させていただいたことがありまして、それ以来、個人的に応援している馬主さんでもあります。
ミルファームの魅力の詰まった取材記事も、よろしければご覧ください。

チャンスを掴む、その日のために~ミルファームの2歳馬情報2018~
ミルファームの2歳馬情報~チャンスを狙う野望とともに~



例句出典:俳句歳時記 角川第五版 春(角川ソフィア文庫)
参考データ:JRAホームページ

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